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06-02 屋敷周りの見張り

やがて屋敷はその細部が確認できるくらいまで近くまで来た。まったく手入れをされていないのか、昔は白だったと思われる建物の外壁は汚れくすんでいた。

二階建てになっていて、茶色い瓦でできている屋根は所々欠けているのが見えた。ケルシーは近づけば近づくほど、その異様さに喉が詰まるような息苦しさを感じた。ここにグレイスを連れてこなくてよかったと改めて思った。


「この屋敷…、いわくつきって言いますが、何があったんです?」

アマンダはマジマジと屋敷を眺めていたところ、クラークに尋ねてみた。彼女はケルシーと違い、とても生き生きをしている目で屋敷を見ていた。

「…かの結界魔術師プレムタックが昔住んでいてね。もう六十年前になる話だ」

とクラークは歩きながら説明を始めた。

彼は、昔あった事件を話していった。屋敷で晩餐会が開かれて、そこで多くの貴族がジョゼ・プレムタックの結界により閉じ込められたことを。だいたいの内容は、ケルシーが昨日ニールがしてくれたお話と同じだった。


話を聞きながらも、三人が屋敷に近づくたびに、先ほど感じていた爽やかな雰囲気は薄れつつあった。丘のてっぺんは日の当たりがよくなるはずなのだが、目の錯覚なのか、重苦しい雰囲気があたりに漂っていた。それは、屋敷の周りに群れている枯れ木が要因なのか。または、不吉の象徴とされるカラスがその木を上から、彼らを迎えるかのように鳴いているからなのか。いずれにせよ、ケルシーの心持ちは良くなかった。


「貴族達は保険として、プレムタックとは別の結界魔術師を呼び寄せていた。ブラウンという名でね。プレムタックと並ぶほど有名なのだが、知っているかな?」

クラークは教師が自分の生徒にするかのように、軽く質問を二人にぶつけてみた。ケルシーとアマンダは首を横に振った。

三人は道の脇にあった看板を通り過ぎる。そこにはと赤い文字で大きく何か書かれてあったが、なんとなく「立入禁止」という意味が含まれているのがなんとなくわかる。その不気味さからケルシーの鳥肌が立った。


「ブラウンは晩餐会に参加せずに外から様子を見守った。プレムタックの結界が出来上がるのが分かると、彼はそれを最初は解こうとしてみたが、できなかった。相手の恐ろしい魔術を恐れて、いっそ戦おうとしないで、一家まるごと別の結界をもって封印したというわけだ」

すると、クラークは急に足を止めて、右脇にそびえ立つ一本の大きな枯れ木に向かって指をさした。二人のシスターは何だろうと思い、指を追って目を向けてみた。

「あそこのふもと。四角い石みたいのがあるだろう?」

クラークが言う通り、枯れ木の根が這う部分に、ポツリと四角い淡い灰色の石が顔を出しているのが見えた。


「ブラウンの結界の要となるのが、あの石なんだ。あれとは別に三個、屋敷の周りに打ち付けられている。今はもう機能していないがけどね」

クラークはそう言って、屋敷を中心にして円を描くようにして、指を回した。

「結界が機能していた間は、この石が光っていた。この光が消えているかどうか、定期的にここをチェックしていたのだ。でも、今は光らなくなっている。ブラウンの結界が消えている証拠なんだ」

ケルシーは遠くからその結界石を眺めてみた。光っている間はどんな感じなのだろうと想像してみた。

「一方、ジョゼ・プレムタックの結界はまだ残っているかどうか、確かではない。結界石は恐らく屋敷の中に置かれているからね」とクラークは説明した。

そして、それを確かめるわけには屋敷の中に踏み入ることができないことも話した。ケルシーは、結構面倒くさい事態なのだなと認識した。

アマンダは重苦しい雰囲気にまったく影響されていないのか、クラークの話を、目をキラキラしながら聞いていた。ケルシーは俯き、今はいないグレイスのことを想っていた。


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