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03-04 トリプルS

「平気、平気」とバンスは何の根拠もない保証を推してくる。「もし、あいつらがなんかちょっかい出そうというのなら、アタシがそれを許さないから!」

「マザージャコビン、まだですかー」

後ろの方から他のシスターの催促が聞こえた。振り向くと、入り口の方に他の客が中に入ろうとして、シスターの団体に足止めをくらっていて、文句が飛んできているのが聞こえる。

ジャコビンは瞼を閉じて、眉間をつまんだ。

「……やむを得ません。これほどの大人数、他で食べる訳にいきません。教会にはすでにここで食事をとることを伝えてありますし…」

ジャコビンはあきらめて、ここで一食取ることを決意した。


そんな判断をジャコビンが下している間に、入り口の方からニールの声が聞こえてきた。「はい、ごめんよ」「失礼」とニールとダグラスが人込みを掻き分けるようにして、シスター達の前までとやってきた。ニールの顔を見るなり、バンス夫人は歓声を上げた。

「あらやだ!ニール。あんた、帰ってきたのかい」

「ただいま、ミセス・バンス。狼を何匹か狩った。外で台車の上に寝かせているから、見てやってくんねえか。」

「あらそう。じゃあ、後でギルドの者に連絡しとくよ。それより、あんた、お母さんに会ってあげな。彼女ったら、あなたのことを心配していたのだから…」

「へっ。あいつがそんな心配をするタマじゃないだろうに。ミセス・バンス、食事なのだが…」


護衛のニールとダグラスは一緒にシスター達の食事と同席することになっているらしい。酒場の連中がやっかみを出そうとするのに備えて、ここでも護衛を務めるという手筈だとのことだ。ジャコビン、マーサ、ニールにダグラスと大人組が話し合っている間、他のシスター達は各々と席の方へと移動し始めていた。

「ニール、ダグラス。あんた達男にはエールを振る舞っておくわ。マザージャコビン、あなたはお酒を飲まれますかな?」バンス夫人はそう明るく聞いてきた。ジャコビンは片手で両目を覆った。

「…いいえ」

「でしょうねー!」

アハハと豪快に笑うバンス夫人。隣に控えていたマーサも二人を交互に見ながら、呼応するように愛想笑いをした。ジャコビンは笑わなかった。


そんなやり取りを横からグレイスがぼんやりと眺めていると、一人の少年が奥から飛び出てきて、ニールの方へと駆け寄ってきたのが見えた。少年はグレイス達の年齢と同じくらい、十代半ばくらいだった。黒髪であり、鼻が少し高く見える。剣を腰ぶら下げており、戦士見習いであるのが推測できる。

「兄貴!帰ってきてくれたのか!」

少年は歓喜に満ちた表情でニールを出迎えた。

「おお、久しぶりだ、ナイプ。随分と変わっちまったな」と彼は言い、ナイプの頭をくちゃくちゃと撫でた。

「いや、よせよ兄貴。もうそんな年じゃないって」とナイプは恥じらうように答える。すると、彼は多くのシスター達が席についているのが目に入り、目を丸くした。

「なんだこれ。葬式でもやるのか」

「町への来訪者だよ。ここに住むようになるのだから、仲良くやっていけよ」

「ほら、ナイプ。あんた、酒の準備を頼んでおいたでしょ。後でニールといくらで話ができるから、それをまず終わらせなさい」とバンス夫人がナイプの背中を押す。彼は少し毒づきながらも素直に応じることにして、ニールに「また後で」軽く述べた後、仕事をするためにその場から去っていった。

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