06:青葉光梨のスキンシップ(内部時間2035年7/20〜21)
俺は、B級最下位のダンジョンから家に帰った後、晩ごはんを食べた後、死ぬ気で課題に取り組んで寝た。そして翌日、それは高校への通学路で起きた。突然後ろから衝撃がかかり、それは腹辺りに腕を回してきた・・・
「!?」(ん? なんだ!? 何故か背中から温かさと柔らかさを感じる・・・)
「ふふっ、おはよ、誠くん。・・・どう? 目、覚めた?」
犯人は、光梨だった。というより・・・
「おはよう光梨。それと、覚めたは覚めたが・・・その、当たってるぞ?」
「大丈夫だよ? 当ててるんだもん。」
「それを大丈夫とは言わない。・・・それに、ここだと俺が恥ずいんだよ。」
そう、ここは通学路で、加えて多くの人がこの道を通る。なので、こんなところで公開処刑されるのはかなり恥ずかしい。だが、この言い分だと『別に人気がなければ大丈夫』と言っているのと同義になると分かったのは、光梨のこの発言だった。
「・・・じゃ、じゃあ、人気がなければいいの?」
「ん? ・・・あ。」
この光梨の発言に俺は大混乱に陥ったが、なんとかして必死に脳内で思考する。
(ま、まずい・・・。これ以上噂が広がるのはまずい・・・! どうにかして逃げないと。・・・だが、光梨は俺を逃がすか? 逃げた後、光梨はどうなる? 俺はどうする? あぁ考えがまとまらない・・・!! どうすれば・・・)
俺は必死に考えた。だが、どんなにシュミレートしても、光梨が泣くか、怒るか、死ぬかだった。そして思いついた。今更ながら説明すると、ステータスは屋外でも20%まで開放できる。そして、俺は空気抵抗軽減を追撃ノ剣で再現した。勿論、気づかれないように『透明化』を使用したが。そして・・・
「歯、食いしばれよ。」
「え? ちょっと誠くん? いきなりどうし・・・きゃああああ!?」
俺は、学校へ向けて猛ダッシュした。それは速度ステータスの20%、数値にして1億7636万。馬鹿げている。ちなみに、速度ステータスの数値は、空気抵抗を無くした時の時速(m)になる。
そして学校までは約3km、つまり1秒未満で学校に着く。やったね(?)。
「調整きつかったな。もっと遅くするか。次は10%で・・・」
「はぁ、はぁ・・・。スピード出しすぎ、誠くんこわい・・・」
チラッと光梨を見ると、怯えていた。・・・なんか申し訳なくなってきた。最初は光梨が抱きついてきたのに。そして頬を膨らませた少し(?)可愛い光梨に話しかける。
「・・・光梨?」
「・・・なに?」
案の定、光梨は(可愛く)怒っていた。明らかに不機嫌だったので、とりあえず謝った。
「あの、いきなり走ってごめん。」
「・・・大丈夫だよ。て言うか、対策してたんでしょ? 私が風圧で吹き飛ばされないように。」
「・・・」
俺は目を逸らした。はっきり言って図星だった。あのスピードは、常人が耐えられる限界を越えている。対策として、透明化させた盾を『死神武装』で生み出し、自分の約50cm前に浮遊させていたが、1歩踏み出して耐久値が約2%減った。それ位のスピードなのである。
そうやって目を逸らすと、図星だと気付かれた。
「あれ? あれれ? 図星かなぁ? そうでしょう?」
「・・・また後で追及してください!!」
「え? ちょっと待ってよ!」
俺は他の生徒の好奇の目線と、この場所にいる光梨から逃れる為に、全速力で逃げた。
・・・
時間が変わりお昼時、俺の心を揺らす事件が起きた。俺は、大急ぎで友達の涼介の下に向かった。
「おい涼介!!」
「誠!? どうし・・・」
「どうしたじゃねぇ!! 光梨が拐われたって聞いたぞ、何があった!!」
「おい、落ち着けよ。冷静になれ。」
「この状況で落ち着いていられるか!! 小学校からの大切な友人が拐われて、お前はつらくないのか?」
俺は気が気じゃなかった。只でさえ仲がいい友人なのに、自分に好意を向けている人が拐われた。この事実に、俺は精神的に荒れていた。
(もう、身近な誰かが死ぬのを見たくない・・・、聞きたくない・・・! あの時の様にしたくない・・・! だから・・・)
「俺が光梨を、殺させない! 光梨の為に、俺が俺でいられる為に!」
『やっと男前になりましたね・・・誠』
「ぁ・・・婆、さん?」
すると、急に視界が変わった。そこには盗賊らしき10名と、
「光梨!」
「誠、くん?」
鎖で両腕と両足を固定された、あられもない姿の光梨がいた。
ここで誠が自覚し、謎の祖母登場