04:久しぶりの登校(内部時間2035年7/20)
「久しぶりだなぁ・・・。この道を歩くのだって1ヶ月半ぶりだし。」
俺は今、通学路を歩いていた。学校まで残り半分に差し掛かったところで、後ろから誰かに背中を叩かれた。だが、幸いにも(?)ステータスを使っていなかったので、相手が痛がることはなかったが。そして相手は、俺の1番の友達だった。
「おはよう、誠。」
「ああ、おはよう涼介。・・・面と向かって話すのも久しぶりだな。」
「そうだな。」
その後、涼介との他愛のない会話を楽しみ学校に着いた。そして校門を通ると、俺の見慣れた女子がこっちに走ってきた。だが、何故か涼介の顔色が悪い。走ってきた女子の名前は青葉光梨。俺のクラスメイトである。ちなみに俺のクラスは2−4で、中退前と同じクラスだった。
「? どうした涼介、顔色が悪いぞ?」
「どうもこうもねーよ。俺はアイツに・・・!?」
そこで涼介の言葉が途切れる。俺も突然の出来事で困惑する。なんと、付き合ってもいない光梨に抱きつかれたのだ。そして、何故か光梨が泣き出した・・・
「??? あの〜光梨? 光梨さん? ちょっと離れて・・・」
「嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だ! 誠くんが突然いなくなって、私がどんだけ寂しかったと思ってるの!? ・・・私から感情を、気持ちを奪わないで!!」
それは光梨の、悲痛の叫びだった。そしてここで、母さんの言葉を思い出す。
『あなたがいないと寂しいと思う友達が、誠にはいないんですか?』
全くもってその通りだった。そう思いながら光梨を抱きしめる。ものすごく恥ずかしいが、「俺がやっているのは贖罪だ。」と自分に言い聞かせて、羞恥心を相殺する。
「ごめんね。ごめんね光梨。でも、やりたいことがあったんだ。」
そんなことを言うと、光梨が拗ねたように頬を膨らませた。だが・・・
「・・・お熱いところすまないが、そろそろ行かないか?」
「あ、すまねぇ涼介。光梨、離れてくれ。」
俺は慌てて涼介に返事をし、光梨を揺すって離そうとする。だが・・・
「えぇ〜、や〜だぁ〜。もっと一緒にいるぅ〜。」
「え? ちょ、ちょっと・・・動けないんだけど。」
「このまま私の虜になってもいいんだよ?」
更に力を入れて抱きついてくる。ここまで来るともう、「アソコが当たってるよ」とは言えなくなってくる。
・・・て言うか授業が、授業が待っている(?)。
とりあえず、光梨を優しく振りほどく。そして涼介と一緒に教室へ向かった。
・・・
(・・・伝えられなかった。誠くんに、『あなたが好きですっ。』って、言えなかった。)
今、私こと青葉光梨は嘆いていた。
私には現在進行系で好きな人がいる。その相手は紅葉誠くんで、彼は1度この学校を辞めている。あの時も、私は言えなかった。言うのが、怖かった。今まで積み重ねたものが崩れてしまったら・・・そう思うと、怖くて怖くて仕方がなかった。・・・でも、今度こそは大丈夫と思っていても、すごく怖かった。
「・・・どうしよう? 奪われたくないのに、言い出せないよぉ・・・。」
そして私は、覚悟を決めようと考え始めた。初恋の人を奪われないように・・・
・・・
「ん? 今なんか、すごく焦れったい気配を感じ取ったんだが、この気配の感じ方とその対象・・・。考え過ぎか?」
(俺は感知系スキルなんて持っていない。考えられる可能性は、そういう事を考えている内に自然と出て、その相手が俺だったのか。)
気配には色々な特性がある。その内の1つに、『考えている事が常に気配に出る』というものがあり、更にそれが一定の人物だった場合、ごく低確率で伝わる事もある。そして誠は、それが発生した場所を調べる事にした。すると・・・
(・・・最悪だ、光梨が出したのか。もっとやばい事になるぞ。)
それは、今一番知りたくない情報だった。そして、どうしようか考えていると・・・
「おーい、誠? 大丈夫か?」
「・・・ん? あぁ悪い。考え事してた。」
「勘弁してくれよな。まぁいい。良いこと教えてやるよ。」
「良いことって何?」
そう言うと、涼介はニヤっとした。そしてその笑みに、誠は冷や汗をかいていた。その理由は、嫌な予感がしたからであった。
「ついこの前、お前の席で光梨が寝てたんだよ。」
「はぁ!?」
「落ち着け、まだ終わりじゃねー。問題は、光梨が寝てた時にヨダレ垂らしてて、寝言でこうも言ってたな。『誠くん、私は誠くんのことがだ・・・』」
「わーわーわー!!」
「うわぁ!?」
後ろから大声がして、びっくりしながら後ろを振り向くと、光梨がいた。顔を真っ赤にしながら。
「ん? どうしたんだ? ・・・んじゃあ続きを・・・」
「涼介くん?」
「・・・分かってるって、お約束だろ?」
「分かればいいのよ。」
そう言って俺の右隣の席に座ってきた。・・・?
「何でこっち居んの?」
「・・・この席だからに、決まってるじゃん。」
その後の授業は集中できなかった。そして今日は午前の授業で終了らしく、そそくさと家に直行して解放者の服装に着替え、B級最下位のダンジョンに向かった。