プロローグ 其ノ壱
初めまして〜。
マルドリと申します〜。
プロローグは3話続きます(1話で終わらせるつもりがズルズルと伸びてしまった·····)
この世は鶏さえいれば食べ物に困らないと思うんだ。肉、皮、内蔵、卵、軟骨、骨から取れる出汁に至るまで全てが美味しく、毎日、朝昼晩鶏でも絶対に飽きないと、断言することができる。
そんなことを考え、フ○ミチキを頬張りながら歩いている俺は、可愛らしいぽっちゃり系(大嘘)である高校生3年生、小野田 一だ。
え?歩きながらなんて行儀が悪いって?
いやいや、毎日食べても飽きないフ○ミチキがある事が悪い。
青の時間が短い割に赤の時間が長いことで、地元では有名な信号で、足止めを食らってしまい、少し気が滅入りながらも、2個目のフ○ミチキの袋を開け始める。
フ○ミチキを食べながら信号が変わるのを待っていると、後ろから誰かの足音が聞こえてきた。
なるべく自然な感じを意識しながら、後ろを振り向くと、マスクをつけた制服姿の女の子が歩いてくるのが見えた。
そのまま、俺から少し離れた場所に並んだため、同じ信号待ちであることがわかった。
どこかで見たことあるような気がしなくもないが、違う高校の制服を着ていたため、気のせいだろうと前に視線を前にもどし、残っているフ○ミチキを食べ始めた。
「あれ?小野田くん?」
自分と同じ苗字を呼ばれ、反射的に声がした方を向くと、先程後ろから歩いてきた他校の女子高生と目が合った。
「やっぱり小野田くんだ!」
そう言って、マスクを外しながらこちらへと歩き寄ってきた。
マスクを外した顔を改めて正面から見ると、中学の2年と3年の2年間、同じクラスであった『天野 莉奈』だと分かった。
「おぉー、天野か」
「何その反応! 実際会うのは久しぶりなのに酷くない?」
「いや〜すまん。でも、ほんと久々だな!」
天野も言っているが、実際に会うのは久々だ。 ちょくちょくLINNEで、推しのがどうとか、共通のゲームの話題で話していた。
てか、久々に会った同級生に、歩きフ〇ミチキしてるの見られたじゃん……はっず。
「1年生の時皆でご飯食べて以来だから·····2年ぶりだね?」
「そ、そうだな、もう2年も経ってるんだな」
天野の言う通り、高校入学してすぐ、中学3年生の時の担任も含めて全員で焼肉を食べに行った。
「天野は高校卒業したあととかどうするんだ?」
「私は中学の時と一緒で、一応推薦もらってるからそれでいっちゃおっかなーって思ってる」
この天野は、中学の時も好成績を残すほどの選手で、4年に1度行われる世界大会の強化選手に選ばれるほどだ。
そのあとも信号が変わることを待ちながら、お互いの学校の話であったり、生徒会長だった井川に恋人が出来たとか、石塚先生が死んでしまったとか、そんなことを話をしていたその時·····。
「「「キャァァァァァ!!」」」
後ろから突然、人の悲鳴が聞こえてきた。
反射的に声がした方へ振り向くと、血に濡れた包丁を振り回しながら男がこちらへと向かってくる。
「おら!死ねぇ!!」
すると突然、男は立ち止まり周りを見渡すと、こちらへ目を向けた。そして、ニヤリと不気味に笑うと、こちらへと走ってきた。
包丁の切っ先は天野に向いていた。
咄嗟に隣を見ると、天野は現実味のないフィクションのような光景に、驚いたような、怯えたような表情でその場で固まっているだけであった。
「天野!」
俺は、恐怖で動くことのできないない天野のことを突き飛ばした。
ドスッ
突き飛ばされたような衝撃と、脇腹に焼けるような熱を感じた。
「クソっ! 邪魔すんなよっ!」
そう叫びながら走り去っていく男の背中を見ながら、俺はその場に崩れ落ちた。
「小野田くんっ!?」
天野は、悲鳴のような声で俺の名前を呼びながら、側へ駆け寄ってきた。
周りにいた人たちも俺を囲むように集まってくる。その人達の隙間から周りの様子が見えたが、同じように人が集まっているところがいくつかあった。
多分俺と同じように、さっきの男に刺されたりして、傷つけられた人がいるのだろう。
「小野田くん!」
「あ、あぁ····天野·····怪我はない、か····?」
「う、うん! 大丈夫! それよりも小野田くんの方が·····!」
「いや···腹刺された位で、死なないから········、え? 血出すぎじゃない? え、こんな·····出ていい、の?」
めちゃくちゃ痛いが····もう一度言う、めちゃくちゃ痛いが、腹刺された位で死ぬはずがないと、俺の厚い脂肪があれば助かると、たかをくくっていたのだが、腹を見た時、予想以上に血が流れ出していてさすがに焦りを感じた。
「出ていいわけないでしょ!もうそろそろで救急車来るから!」
天野が何か言っているが、何故か耳に水が入った時のようなこもったみたいで聞き取りづらい。
だんだんと目の前がボヤけ始め、脇腹の痛みが感じられなくなっていき、徹夜したあとのように抗えない眠気のようなものが襲ってきた。
「え、 小野田くん!? しっかりして! 寝ちゃダメだよ!!」
涙で濡れた天野の顔を見ながら、俺の意識はなくなって行った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
5畳ほどの畳張りの部屋の中、昭和レトロなテレビで、先程の様子をお茶を飲みながら見てる2つの影があった。
「今のが君の死んだ瞬間」
影のうち1つは言わずもがな、我らが主人公である可愛らしいぽっちゃり系(大嘘)のはじめくんである。
「いやー、人ってあっけなく死ぬもんですね」
お茶菓子として出されたせんべいをぼりぼりとかじりながら、はじめはもう1つの影へと言葉を返す。
「そうだね〜。やっぱり人って不便だよな〜」
そう言ってテレビを見ていたもう1つの影·····、白い袈裟のような服を着た、金髪蒼眼で小学生くらいの美少年がお茶をずずっと飲んだ。
「それじゃあ、死んだ瞬間も確認してもらった事だし。……転生について説明しようか········」
読んでいただきありがとうございました。
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