終わりなき罪と枷
6、限界を超えた者
『…●●!おいっ!起きろ!おいっ!』
俺の頭の中に木霊する。
「…」
俺は反応も出来ずに感覚的には寝転がっているに近いだろうか。
『●●!起きろ!あいつらに復讐するんだろ!?』
俺に声をかけていた者の声がより一層強くなる。
「ふ…くしゅう?誰に?」
『忘れたのか?お前の復讐相手は…』
俺に話していた者が目の前に現れたかと思うと、氷が溶ける様に消えてゆく。
「…」
ドクン、ドクン、心臓の鼓動が鼓膜に音を刻み付けていく。ドクンドクンと鼓動は段々と早くなる。
「はっ…うっあっ」
俺は汗だくで目覚める、不快感が襲ってくる。
「なんなんだ?」
少し考えているとホログラムが出てくる。
<デスゲーム6日目 生存者2人 朝になりましたので体の傷を再生します>
圧縮によりズタズタになった内臓が再生していき、痛みが徐々に消えていく。
「取り敢えず、中央へ…あれ?」
いつもなら消えているはずのホログラムが残っている<最終決戦なので特別闘技場に移動してもらいます>文章を読み終わると同時に身体が光に包まれていく。
(やっぱりここはどこなんだ!?身体が再生したり、あり得ない能力があったり本当になんなんだ!?)
身体が引きずられる様な感覚と共に少しの浮遊感がする。
およそ30秒後に石造りの円形闘技場に召喚される。
「お前が最後の生き残りか?」
見た目は40代前後だろうか、少し白髪混じりの黒髪と顎髭がある男、あの記憶の中にいた俺を殴っていた男。
「…お前は誰だ?」
「あ゛?それこそお前はだれだよ?」
「俺は…俺は…復讐者だ、お前を殺す復讐者だ」「は?俺とお前は初対面だろうが、まぁいい俺はリミット、お前を殺して脱出する者だ」
リミットと名乗った男と話終えるとホログラムでクラウンマスクをつけた男がでてくる。男『やぁ、遂に最終決戦だね!今から5秒後に戦いを始める、勝った方には次に進む権利を掴みとれる。是非頑張って殺し合ってくれ。』
リミット「こいつを殺せばここから出してくれるんだな?」
男『そうとってくれても構わない。テレン、後は頼んだ、テレンはこの最終決戦の審判をして貰う、さて、殺し合ってくれ!!!そして俺を愉しませてくれ!!!』
「…」
リミット「あぁ、お前を愉しませてやるよ」リミットは男に嘲けながら言う。
テレン「5」
テレン「4」
テレン「3」
テレン「2」
テレン「1」
テレン「0ッ!」
テレンが0と叫んだ瞬間右に走りだす。リミットは俺とは逆の方向に走っている。
リミット「足枷、行き過ぎた加速」
リミットが先程とは異なる圧倒的な速さを出して俺の背後を取る、そして俺の背中めがけて蹴りをいれてくる。
「…うぐっ」
背中を蹴られた衝撃で前に転がっていく。石に体が擦れて擦り傷を作っていく。
「圧縮強化ッ!」
能力が進化した事により、身体に圧縮強化を掛けていく。
「うっおぉぉぉぉ!!!」
俺は闘技場の地面を殴り付ける、ドゴッと音を立て闘技場にクレーターができる。そして、その石に圧縮をかけていく。
「解放、岩石の地槍」
圧縮によって槍の様になった石を投げ、そして解放。自身に圧縮強化を掛け、圧縮解放にブーストがかかり、また解放された勢いで更に加速する。リミットはバックジャンプし、右に避ける。石の槍はリミットの頬を掠めて飛んでいった。
リミット「はっ、危ねぇじゃねぇか」
「お前こそ、背後からの奇襲なんて痛いじゃないか」
リミットと皮肉の言い合いをする。
リミット「お前はこのゲームが始まった時、武器を貰っただろ?」
「それがどうした?」
リミット「俺も武器を貰ってるんだよ、さぁ、俺の剣にひれ伏せよ?」
「断る、死ぬのはお前だ」
リミット「この剣はなぁかなり良い物でな?俺の能力と合わせると…」
リミット「手枷、終わり無き剣刃」赤銅色の剣が陽の光でギラリと光る。
リミット「とっとと死ねや」
リミットの先程発動した能力の効果が残っているのだろう、リミットが走り出した瞬間、風が起こる、ビュッとゆう音と共に俺の左を走り抜ける。リミットが走りだす少し前に「圧縮強化ッ」再び自身に圧縮強化を掛けていた事もありすれ違いざまに剣で斬られたがダメージは無かった。
リミット「あ?なんでお前生きてんだ?今までならこれですぐに死んだんだがな?」
「圧縮、大気の空砲」
空気を圧縮し、デコピンの要領で空気の塊をリミットに撃つ。リミットに空気の弾丸は見えていない、
リミット「ごはっ」
空気の弾丸はリミットの腹に当たりリミットの身体を吹き飛ばす。
「そして、解放、大気の暴走ッ!」
風の刃がリミットを刻むと思われた瞬間、リミットは剣で空気の刃を打ち消した。
リミット「なんだ、この衝撃、お前の能力か?さっきから意味がわかんねぇ」
「お前こそ、なんで空気だと解った?」
リミット「勘だ」
「…」
リミット「まだだ、俺の能力は今、<S3、最終進化を迎えた>」
「な…!?」
リミット「続けるか?お前が、死ぬまで!!!」リミット「終わりなき枷!!!」
リミットの身体から鎖が何本もでてくる。その鎖をリミットは自身の剣で断ち切る。バキインッと音を立て壊れていく。
リミット「これで、俺を縛るモノはなくなった、ふ、ふははっ」
リミットは先程の<足枷、行き過ぎた加速>を余裕で越える速さで俺を肉薄する。
「うっぉおおおおお!」
リミットの攻撃に対して防戦一方でリミットの剣の軌道はほぼ見えていないが出来るだけ防御をする。リミットの攻撃はある程度、圧縮強化で防ぐ事が出来るが、そろそろ限界が近づいてきていた。リミットは痺れを切らし剣と一緒に蹴りを織り混ぜてくる。
リミット「オラッァ」
「ぐっ…」
蹴られた痛みを歯を食い縛る事によって意識を繋ぎ止める。リミットの蹴りによってかなりの距離が開く。
リミット「防戦一方でよく、俺に復讐するとかほざけたなぁ!!!」
「お前…をこ、殺す、コロシテヤル!!!」
「圧縮強化、血の暴走ll」強化によって成される血液の暴走、身体能力の強化。
リミット「な、なんだ」いきなり血を吐いた俺を怪しがって見ている。
「解放、血走<堅>」血液が鎧の様に形成されていく。
「うっおおおおおおおおァ!!!!」
咆哮と共に走り出す。
リミット「うおっ!」
いきなり走りだし、今さっきまで防戦一方だった奴に攻撃されて驚き、動きが少し鈍る、それだけで十分だった。
「圧縮強化、刈り取りの脚鎌」強化され血液の鎧を纏った脚がリミットの右側頭部を捉える。リミットは一瞬何が起こったか理解できず、吹き飛んでいく。
リミット「何が…起こった…ぐっ」
リミットは理解できないという顔をした後、口内が切れたのだろうか、血を吐き出す。
リミット「…終わりなき罪」
リミットが何かを呟いた後、リミットに鎖が巻き付いていく。それはリミットが断ち切った、鎖の様だが何故またそんな事をと考えていると、リミットに巻き付いた鎖と同じモノが俺に巻き付く。
「な、なんだ」
鎖が巻き付くと同時に俺の纏っていた血液の鎧が消えていく。そして、鎖が消えると俺はリミットの方を無意識に見る。
リミット「この技はナァ…今まで使った能力を無効化する技…そして、この鎖に捕らわれた者は能力が使えない!何故そんな事をしたかって?今この状況を見てみろ、俺は剣を持っているがお前は何も持っていない、見たところお前は10代後半か20代前半、俺に力じゃ勝てない。この技を解除さるには俺が死ぬか、任意で解除するかだ!」「…確かに゛力じゃ勝てない゛かも知れないな。」
リミット「最終決戦と行こうか!」
リミットは勝ちを確信したのか笑いながら突っ込んでくる。俺はリミットに見られて無いくらいにうっすらと笑みを浮かべる。確かに俺は武器を使わずに体術と能力に頼って戦っていた、だがそれは銃弾が残り少ないからだ、ノワールとの戦いで2発、同じくフォリーとの戦いで2発使っており残りの銃弾は2発、これで決めるっ!俺はリミットに復讐するんだッ!
リミット「死ねぇぇえ!!!」
赤銅色の剣が俺を切り刻まんと迫るが慌てずに、腰から銃弾を抜きリミットの剣を握っている腕を撃ち抜く。銃声がリミットに届く前にリミットの腕を貫き、剣がリミットの血と共に手から零れ落ちる。カランと音を立て落ちた剣を俺は蹴り飛ばす。
リミット「くそが!!!」
痛みより、俺を殺す気持ちの方が勝った様で剣を蹴り飛ばし、体勢が不安定の俺の横腹に蹴りを入れる。
リミット「仕方ない、終わりなき罪を解除する…か」
リミット「罪はなくなり、枷は解き放たれた、鎖枷、罪の解放」
再び俺とリミットが鎖に巻き付かれ、巻き付かれたかと思うとボロボロと砕けていった。
リミット「この能力が解除された時にのみ使える、最後にして最強の手段、お前に見せてやろう。」
リミット「抑えきれない力を解き放ち、暴れ狂う者の枷を破壊しろ、」
リミット「解枷、全生物の破天荒ッ」
リミット「お前を終わりなき罪に沈めてやるッ!!!」
リミットが技を発動させた瞬間、爆発した様な音と共に剣をとるために走り出す。今から追いかけてもリミットの方が先に剣を取ると判断し、自らの身体に圧縮強化を施す。
「圧縮強化、大気の軽鎧」圧縮する事により、身体を強化しつつ、空気で身を保護する、フォリーの葉接の軽鎧を参考にしているが彼の軽鎧の何十倍もの堅さを誇っている。
リミット「腕枷、諸刃の剣」剣が強化され、リミットは剣を少し闘技場の地面に当てる、すると、地面に切り傷が入る。
リミット「これで殺すか」リミットは虚空を見上げ独りごちる。
「圧縮、殲滅の銃弾ッ!」音速を越える速さの銃弾がリミットの頭部目掛けて飛んでいく。
(リミットは気付いて居ない、俺の勝ちだ!)
リミット「遅ぇ」
パキンと言う音が響き、火薬の匂いが辺りの空気を汚す。
「な…」
リミットは見えていないはずの銃弾を斬ったのだ。
リミット「遅い、何もかもが遅い、お前も時間も!!!」
最後の銃弾を使い果たした俺は微かに震えている、本能が言っているのだろう、こいつには勝てないと。
リミット「おっと?諦めたか?じゃあ、とっとと死ねッ!」
半狂乱となったリミットが一瞬にして俺の前にくる。
「最後に、最後にお前は何人殺した…」
リミット「6人だ、いやお前を殺して7人になるなぁ」
リミットは笑みを隠し切れずに笑いだす。
リミット「死ね」
リミットはその手に持った剣で俺の首を撥ね飛ばした。
リミット「ふっふははっ死んだ!また死んだ!俺の手を煩わせた奴がまた死んだ!!!ふはっはは!!」
リミットは笑っていた。リミットは勝利の余韻を余さずに浸っていた。
リミット「オイ、審判これで決着だろう?」
テレン「…そうですね」
死体からは血液が吹き出し、目は死んでいる。生物の死がビリビリと伝わっていた。
テレン「勝者、リミッ…」
リミット「どうした?早く言えよ」
「解放、幻想の一夢ッ!!!」
誰かの声が闘技場に響き渡る。するとリミットとテレンの前にあった゛俺の゛死体が消える。
リミット「な、何故生きている!確かに俺はこの手でお前を殺したはずだっ!!!」
「そうだな、俺は死んだ、たがお前が殺したのは俺の分身、俺の技、幻想の一夢の分身を殺したに過ぎない!!!」
「う、ぉぉおおおおおおっ!!!!」
「爆ぜ散れ!!!圧縮、大気の空砲!解放、嵐の慟哭ッ!
!!」
銃弾が尽きた銃に空気を圧縮して空気の弾丸を詰め込む、そして、引き金を引く、殲滅の銃弾とは違い風の力を利用して、光に近い速度が出る。その加速は嵐の如く破壊の力も持っている。勝利の余韻に浸っていたリミットは動く事が出来ずに、腹に風穴を開ける。噴水の様に出てくる血と溢れ落ちる臓器。
リミット「俺は…お前を殺し、ゴフッ」
「最初に言っただろう?俺はお前を殺す復讐者だと」
「リミット、安らかに死ね」
リミットの持っていた剣を拾い、圧縮をかける。「圧縮、鋼刃の終、解放、散る血桜」
真一文字に凪ぎ払った剣はリミットの首に血線を入れリミットを絶命させる。リミットの血飛沫が俺の顔を汚す。
<You killed L i m i t !!!>
テレンは動かなくなったリミットを確認し、すかさず叫ぶ。
テレン「勝者、復讐者ッ!」
テレンが言い終わると共にホログラムが出現する。
男『素晴らしい戦いをありがとう!君は本当に素晴らしい!大気中の水分と光を圧縮し、自らの分身を作るとは!本当に素晴らしい!すぐに傷を回復してやろうっ!』
「こ、ここから出してくれるのか?」
震え混じりの声を出す。
男『君は選ばれた、復讐を果たし、憎き相手を殺す、これほど愉しい事は無いだろうね!!!』「黙れ!俺はここから出れるのか、と聞いている!!!」
男『君は確かに復讐を果たした、だが君に<復讐者>は合わなかった様だ』
「何の事だ?」
唐突に頭がズキンと痛みだし、色々な記憶、封じられていたモノが一斉に解放される。
「あっうああっ!」
頭の痛みは増していくばかりで覚えの無い事、俺の様な見た目をした者が楽しんでいる、悲しんでいる等の姿が脳裏に焼き付く。嗚咽混じりの声は大きさを増していく。
男『やれ、テレン』
テレン「はい」
テレンはゆっくりと俺に近づき俺の腹に蹴りを入れる。
「うっ…」
意識が薄れていく。男『やはり、君に復讐者は重すぎた様だ、次は普通にしてやる。』
理解できなかった言葉が脳に木霊する、そして、俺は意識を失った。
リバイブサーガI <完>
あとがき
注意、読まなくていいです。
どーも、作者です。さて、リバイブサーガIが今回で完結した訳なんですが、どう見ても次に続く様にしか見えませんよね。主人公が敵の仲間に蹴られて失神、そして完、ベタ過ぎましたかね?個人的にはこれでいいやと言う感じだったので採用しました!伏線とか一応入れたつもりなんですが、あまり役に立たなかったと思うのでもう少し伏線を増やしてもいいかな?と思う今日この頃(作者が伏線回収下手なだけ)、夏になって灼熱の日々が続いていると思いますが、皆様夏の暑さに負けず過ごして下さい。ちなみにエアコンつけずに過ごしていますw
この下らない小説を読んでくれた読者様にささやかな幸福が訪れます様に!!