蔓延する恐怖
5、狂気の蕩心
『なぁ、●●っ!助けてくれっ!なぁ!!!』
一人の少年が俺に向かって叫ぶ。
『おいっ!助けてくれっ!』少年は叫ぶが俺の体は動かない。
『ッ!う、うわぁぁぁあ』少年は俺の視界から消え去る。俺が立っているのは崖、少年が消えて行ったのは崖の下だった。
「はぁ、はぁ」
俺は汗だくになりながら目覚める。
「あれは昔の記憶なの…か?」起きてばかりの脳が回転するまで少し時間がかかった。少しして、俺の前にホログラムが出現する。
<デスゲーム5日目 生存者5人 朝になりましたので体の傷を再生します>
体の切り傷等が回復していく。
「後、五人、俺は生き残るッ!」俺は立ち上がり、少しづつ歩み始める。俺はベルトポーチから地図を取り出し広げる。
「今はこの森だから、後少しで中心部か…」俺は地図に目を落としながら行く道を決める。
「さて、行くか」俺が動こうとした時、空から黒い物体が降ってくるそして、その物体から赤い飛沫が俺の頬を染めていく。黒い物体…そう、それは昨日、俺が頭を撃ち抜いたノワールの死体だった。
「ッ!誰だ!?」
「これ、殺したのキミ?はぁ、彼が一番強いと思ってたから拍子抜けだよ。キミ強いんだね」テレンと同じくらいの背格好の少年が上から飛んで俺の前に立つ。
「あはっ!僕はフォリー、さぁ!殺ろうか!!!」
フォリー「僕は彼ほど間抜けじゃない」俺は前に走りだす。俺とフォリーと名乗った少年とだと体格が勝っているので近接戦に持ち込もうとする。フォリー「ふふっ、あははっ!ボクに近付けると思ってるの?」
フォリー「蔓、殴打する蔓」俺の横から蔓が伸び俺を打ち付ける。バチンッ!と音を立て俺を吹き飛ばす
「ごはっ」俺は血を吐きながら地面を転がる。
「お、お…前の…能力は…植物を操る能力だッ!」
フォリー「おや?生きているのかい?大体のやつは容姿だけで近接戦に持ち込もうとする、そしてさっきの技で死ぬんだけどなぁ。キミは運がいいねぇ!あははっ!」俺は動けないフリをして自分の血に触れる。そして小声で能力を発動する。「…圧縮」自分の血を圧縮し玉状にし手に握る。
フォリー「キミの推理はあってる、でも一部間違ってるんだよ、僕の能力はね?確かに植物を操れる、だが少しだけ虫も操れるんだよ、僕は虫を操る事で情報を集めてた、キミの能力は強化だろ?」
「…」
フォリー「おや?図星かい?あはっ、さぁっ死ねッ!」
フォリー「蔓、大地を抉る蔓剣!!!」森の木々がざわめき木々の枝が一つに纏まり空から俺、目掛けて振り下ろされる。
「解放、血の暴走I」さっき、圧縮した血の玉を解放する。弾け飛ぶ俺の血と木々の枝が視界を悪くする。
フォリー「な、何!?」
「かなり体が楽になったぞ」
フォリー「クソッ」フォリーは身体を180度回転させ、逃げ始める。
「逃がすか!」俺はフォリーに照準を当てトリガーを引く。
「圧縮、殲滅の銃弾ッ」放たれた銃弾が音速並みの速度を、出しフォリーの左脇腹を抉り取っていく。
フォリー「がはっ」フォリーから苦痛の音が漏れだす。
フォリー「お前ぇぇえ!殺すっ、殺すゥ!!!」フォリー「蔓、葉接の軽鎧…」フォリーの身体に葉が纏まわり付き傷の血を止めつつ鎧の様に形成されていく。
フォリー「僕を怒らせた奴は久しぶりだナァ」フォリー「あははっ!死ねよ?」高いテンションから急に冷めた目で俺を見る。フォリー「蔓、大地を抉る蔓剣」
フォリー「蔓、大地を削る刃葉」刃状に飛んでくる葉と逃げ道を無くす為の枝で出来た剣が降り注ぐ。俺を刺し殺さんと殺到する。そして、枝の剣が俺の手に当たると同時に「圧縮ッ!」枝の剣が圧縮されるかは賭けだったがうまく圧縮できる。圧縮すると同時に耐久力が無くなった枝が弾ける。葉の刃を防ぎ切れずに頬や腕、足に生傷を刻んでいく。
フォリー「キミ、うっとおしいなぁ、そろそろ死ねよ?なぁ!!!」
フォリー「僕の最強の技で死ね、あはっあははっ!」
フォリー「蔓、幻想の世界樹」軽鎧が破裂し、大きな花を咲かせる。
フォリー「さぁ、蟲よ、来い」森が鼓動する様にその声に答える。荒れた風、狂う木々、全てを穿つ蟲が森を飲み込む。荒れる風は身体を切り裂き、狂う木々は踊る様に根や枝を乱舞する。全てを穿つ蟲が大地や岩石を穿っていく。
フォリー「あははっ!ははっ!死んだのか?跡形も無くゥゥゥ!!!」フォリーは血溜まりを見て、笑う…嗤う。
荒れ狂う森の中に閉じ込められ焦ってしまう。「成功するか、解らないけど、やるしかねぇ!!!」
「耐えろよ、俺の身体ッ!」
「圧縮強化ッ!」圧縮の能力を自身にかける。自らの身体に圧縮を施していく。圧縮されていく身体が軋んでいく。「あがっ、うあ゛あ゛あ゛」あまりの痛みに虚空に喘ぐ様な声が漏れる。成功したのかは解らないが痛みが引いてく。
同時刻…暗い部屋の中一人の男が声を上げる。
男「素晴らしい!彼は素晴らしい!!まさか、能力の進化を限界を越えるとはッ!!!」コツコツと音を鳴らし歩いてくる音が聞こえる。
「どうなさったんですか?」女性の声が響く。
男「いやぁ素晴らしい事が起こってね」女性「素晴らしい事?」
男「あぁ、彼を見たまえ、自分自身に能力を使ったぞ」
女性「それが何か?」
男「彼の能力は圧縮、解放、そして、スロットは3。昨日に1段階進化した、そして今!彼は逆境に立たされ己の限界を越えたッ!さぁ、彼の復讐が今から始まるんだよッ!」
女性「復讐は計画された事でしょう?」
男「いや、これは彼が掴み取った運命なんだよ、さて今はどうなってるかな?」
勝ちを確信したフォリーが幻想の世界樹を解除する。
フォリー「あははっ!あははっ!死んだっ!死んだ!」フォリーが狂う様に嗤う。その嗤っているフォリーの耳に「解放、限界の枷」の言葉が響くフォリーが身構えるが遅い、足払いをされ転倒するフォリー。
「さぁ、殺ろうか」俺はフォリーが言ったセリフをそのまま使う。この言葉にフォリーは絶句するが少したって問いかけてくる。
フォリー「何故、何故生きている!?死んだはずだっ!!!」
「答える義理はないな」フォリーはこの言葉を聞き<何か>が壊れた様に咆哮する。
フォリー「ウォォォァァアッ!!!」
俺がフォリーに殺されそうになる直前、自らに<圧縮強化>を施した、それは激痛を伴ったが同時に脳に物凄い量の情報が、文字の羅列が入ってくる。情報は進化、文字は…
確認する暇もなく能力が進化を遂げる、そして響く。
<Capability evolution>
『圧縮、解放の能力2S達成、強化事項、自身の見える範囲で生き物以外なら圧縮、解放できる、また自身に圧縮をする事により、身体を圧縮する事によっての防御(破られる場合がある)、解放する事によって爆発的に攻撃能力、移動能力を上昇させ、自身の圧縮解放にブーストがかかる。そして、ブーストがかかった技は通常時の1.5倍の威力になる。』
強化された内容が脳に入る。そして、一言。
「圧縮強化ッ!」
圧縮による防御は凄まじくフォリーの攻撃を受け止める。フォリーは怒り狂い滅茶苦茶な攻撃ばかりしてくるが、圧縮の防御を破る事が出来ない。例え<幻想の世界樹>でも、フォリーは再び<幻想の世界樹>を発動させるが防御を破れないので意味がない。
「フォリー、諦めろお前に勝ち目は無い。そして、俺も<今>最強の技でお前を殺すッ!」
フォリー「ヴガァァバァ」フォリーが何かを言うが関係ない。
「圧縮、大気の空砲」
手をデコピンするように構える。
「解放、大気の暴走」中指を弾くと同時に風の弾丸がうち放たれフォリーに翔んでいくが気が狂い叫び散らしているフォリーに避ける術はない。解放、字の如く風の弾丸がフォリーに当たると同時に破裂、風の刃となりてフォリーを刻むそして、フォリーの血液が地を汚す。動けないフォリーに近付いていく。
フォリー「ゴファ」胸を抉られまだ息をしているフォリーに俺は言う。
「良かったな、最期にお前は<花>を咲かせた、後は楽になれよ。」ズドン!俺は銃の引き金を引いた。銃弾はフォリーの頭に直撃し、脳髄と血を撒き散らす。
「最期の華は汚ねぇなぁ…」
<You killed Folly!!!>
能力が進化すると同時に流れ込んできた感情、それは憎しみだった、ハミング、ノワール、フォリーだけじゃなく、まだ見たことのない奴等への。
「もう、俺は迷わない、全員殺す!コロシテヤル…」
俺はすぐに正気に戻る。
「あの記憶は何なんだ…ともかく何があろうと殺人は許されるはずがないっ…」
俺の遠い記憶が少し蘇ったそれは自分が苛められている記憶だった。ハミングの様な女に刃物で怪我をさせられたり、ノワールの様な男に技の練習だ、と言われた腕を折られたり、フォリーの様な少年に大切にしていたモノを壊されたり汚されたり、後は見覚えのない男に殴り飛ばされる。そんな記憶だった。ハミング、ノワール、フォリーは今と違い自分と同年代の様な姿をしていた。そして、今俺が殺したフォリーは記憶と全く同じ姿をしていた。
フォリーを殺した俺の前にこの<デスゲーム>を開始した男がホログラムで現れる。
男「やぁ、君なら生き残ると思ったよ。」
「黙れ、俺の記憶にある彼らは何っ!?」
男「あれは君の過去の記憶、君は彼らに憎悪を抱いていたそして、別々の時代から彼らを此処に集めた、勿論君も…」
「な、何を言っているんだ…」
男「今は解らなくてもいい、その内解る。」
男「さて、残り二人だ、精々、俺を楽しませてくれよ?」
いい終えるとホログラムが消え男の姿は嘘の様に消えた。
「何なんだ、本当にこのデスゲームには何か隠された事実があるのか…?」
俺は天を仰ぎこのデスゲームの事について考えるが、考え終わるのはすぐのことだった。
残り2人
読みにくい感じがあると思うのですいません。
蔓
蕩心
蔓延