影の暗殺者
4、鮮血の戦場
ハミングを倒す…いや殺して数時間たった。俺はようやく動き出す事が出来る様になった。
「…今日は瓦礫の近くで寝よう。」俺はゆっくりと歩み始め、ようやくの思いで崩れ去った建物にたどり着く。
「ハハハ…これで俺も殺人者だ…」俺は自分自身を守るための<言い訳>をつける。
「仕方がなった、自分自身を守る為だ…」俺はもう考える事をやめ、殺される前に殺す。と決めたのだった。
「ん、んんっ、朝か…」眩しい光が俺の目を覚ます。俺はゆっくり体を起こす、すると俺の目の前にホログラムの画面が出てくる。
<デスゲーム4日目、生存者12人、朝になりましたので体の傷を再生します。>すると俺の体が光に包まれ体の傷が消え失せる。
「そろそろ俺も此処から動くか」俺はベルトポーチに入るだけの水と食料を詰め込む。
「やっぱり行くなら中央かな?」俺は中央を目指し歩き続ける。昼過ぎに脳内の確認や、能力の練習をする。
「やっぱりこの能力かなり強いのか?」圧縮した石を投げ、岩に当てて見ると岩に穴があく。圧縮された重み等が穴をあけた理由だろう。再び圧縮した石を岩に投げる。「解放」圧縮から解放した石は石礫となり岩に無数の穴をあける。
「よし、こんなモノでいいだろう」俺は能力の進化を目指して毎日能力の練習をする。
「そういや、銃貰ったけど…使って無いな…」俺はふと貰った銃の事を思い出す。
「弾倉は6残ってるけどこれしかないから不用意に使えないぞ、ここぞと言う時に取っておくか」俺はそう思った。
「さて、そろそろ動くか」体をゆったりと動かし中央を目指す。数時間歩いただろうか、日は少しずつ傾き始めて来ている。
「な、なんだこれは?」森の中で少し広い所に赤い液体と人だったものが大量に散らばっている。吐き気が込み上げてくる。
「フハハッ!またこの地に獲物がくるとは、これは神に感謝せねば!」俺の前に忍装束を着た男が居た。
「拙者の名はノワール、影を操る能力者でござる」
「なんで、能力を教えるんだ?」
ノワール「拙者は緊張感がある戦いが好きでござる、だから能力を言ったのでごさる。勿論そこに倒れてるモノ達にも能力の事は言ってるでござる」
「俺は言わないからな?」
ノワール「勿論良いでござる」
ノワール「戦い方は人それぞれでござる、では、行くでござるよ!」
「俺は戦いたく無いんだが…」
ノワール「動かなければ楽に殺すが?」ノワールから殺気が漏れ出す。
「俺は死にたく無いんだ、だから戦いたく…」
ノワール「お喋りは仕舞いでござる」
「ッ!」夕日に照らされた木々の影が胎動し始める。
ノワール「陰影、深淵の影波」胎動し始めた影が一つの波状になり俺目掛けて飛んでくる。俺は紙一重で右に避ける。
「戦わないと言う選択は無いのか!?」
ノワール「無い、だから拙者は戦ってるでござる」
「くっ、やるしかねぇっ!!!」叫ぶと共に走りだす。「うおっ」ノワールの影が伸び、鋭さを帯びる。
ノワール「陰影、槍影」黒い物体が槍の様になり襲いかかる、俺はギリギリでかわしていく。
「圧縮、岩石ノ跳弾」圧縮した、石が槍に飛んでいく、槍と石がぶつかりあい炸裂する。ズドンと弾けた石が飛び散る。視界が悪くなり直ぐにその場から離れる
ノワール「逃がさないでござる、陰影、影ノ弾丸」影が丸形になり飛び交う、俺の脇腹を擦る。
「ぐっ」傷口から血が滲む。
ノワール「ふははっ、これ以上痛いのが嫌なら動かない事でござる!」日が暮れそうな森に響く。「…死んでたまるかッ!うおぉぉぉぉっ!!!」俺はノワールのは別の方向に走り出す。ノワール「逃げる気でござるか?逃がさないでござるよッ!」(逃げないよ…でも俺の条件は揃った)俺は急にノワールが居る方向を向く。ブレーキをかけた足が地面を削り砂ぼこりを立たせながらノワールと向き合う。
ノワール「ッ!?」ノワールは驚きを隠せずにいた。そんなノワールを無視し、ベルトポーチから黒色の物体を取り出す。セーフティを解除する。ノワールは追ってきたので俺とノワールは直線、その状態でこれを撃つ。
「ッ!」黒色の物体…銃は火薬の光と共に炸裂する。
「圧縮ッ!」出た瞬間の銃弾を圧縮する。銃弾は圧縮された事で針の様になり威力、銃弾の飛ぶ距離を何百倍にも高めていた。時は夕暮れ、それも日はもう半分くらい沈んでいる。これはほとんど見えない!バンッ!と音を立て飛んで行った銃弾は案の定ノワールの頭部に当たり、その周辺に血では無く、黒い液体の様な物が飛び散る。
ノワール「いやはや、危なかったでござる。実は元々、拙者は戦っていないでござる。お主の能力を見るためにな、見たところ強化の能力、ならば近接で早く行動出来ないようにするだけでござる。陰影、暗器ノ剣穿」ノワールが森の奥から姿を現す。そしてノワールの右腕から剣の様な物が生える。ノワールはそのまま突進してくる。
「う、うおぉぉ」俺は振り下ろされる影の剣をギリギリでかわしていく。
ノワール「ほう、拙者の剣を避けるか…ならばこれでどうでござるか?」ノワールの左腕からもうひとつの剣が生えてくる。
「ッ!ガハッ!」俺の体に生傷が刻まれていく。だが、俺もやられてばかりじゃ居られない、ノワールの腕を見切って剣の向きが俺に向く前に腕を弾く。
ノワール「いいでござるね~陰影、影縫いの牢」影が円上に広がりノワールの周りのみ、オレンジ色の光が差す。
ノワール「さぁ、最期の死闘といくでござるよ!」俺はその影の檻を走り回る、逃げる様に。ノワール「ここは拙者が解除するか死なない限りここからは出られ無いでござるよ!!!」ノワールはそう言うとグッと距離を詰める、先程と同じように俺を殺しに殺到する、が俺は見切り腕を弾く、これを繰り返し、一回一回の打ち合いでベルトポーチから銃弾や少しの水を圧縮し、影の檻に置く、それは唐突に起こった。
「ぐっ」脳内に凄い量の数字と文字の羅列が並べられていく。それは数秒の事だった。そして、自分にしか、見えないホログラムが出現する
<Capability evolution>
その言葉と能力の進化の詳細が現れる。
『圧縮、解放の能力1S達成、強化事項、自身の見える範囲で生き物、自身より大きいもの以外なら圧縮、解放できる、しかし目に見えないものには何も出来ない、また自分の手に触れていないといけない』それを見た俺は笑う…いや嗤った、勝ちを確信した笑みに。
ノワール「な、何故、笑ってるでござるか!」先程まで逃げ回っていた者とは思えない程に嗤っていた。ノワールは後ずさる。
「やっとだ、やっとそこに立ってくれた」
ノワール「?」ノワールは解らないとばかりにこちらを見る。
「気づかないか?お前の立ってる所に何があるか…」ノワールの立っている場所には俺が逃げ回って落とした銃弾や水があった、そしてノワールの檻はノワールの上のみ空いている。そしてそこに光を反射する物をおいたらどうなるだろうか?簡単だ光が反射する。
ノワール「!?」
「さぁ、終わりにしよう」俺は右側に手を伸ばす反射した光が右手に当たる。ノワールは後ろに飛ぶがもう遅い。
「圧縮!!!そしてッ解放、光ノ散弾ッ!!!」圧縮された夕日が一挙に解放され緋色の光を辺りにぶちまける。当然、影はなくなり檻も、ノワールの剣も消え去る。そして残ったのは先に目を閉じて動ける俺と銃声、そして、すまないと言う声だけだった。
<You killed N o i r!!!>
辺りが静寂と暗さを取り戻したが俺は一息着けずにいた、人を殺した罪悪感が襲う。
「なんでこんなことしなければいけないんだ!クソッ!」俺は怒りを込め地面を殴り続ける、そして血の滴る拳を握り締めるが直ぐに脱力し、座り込む。少しして、俺の意識は虚空に消えた…
残り5人…