479 厄介事の予感
神子というのは厄介だ。特別な存在だともてはやされる家もあるが、それは、その厄介さを知らないからだろうと首領達は言う。
「確かに、神子を繋がりとして、家に益をもたらすことはあるが……神が相手だからなあ。それも良し悪しが……」
「どこでしたかしら。子孫繁栄が約束されたと喜んでいた家が、直系にしか子どもができないものだったと分かったとか聞きましたわ」
「うげ。それ、次男の嫁とか揉めるじゃん」
「え? じゃあ、分家は?」
「全滅しそうですわね……」
「最悪……」
直系ではない者達の子を全て取り上げてしまったようだ。
「なら、そこは本家しか残らんと」
「本家だけは何があっても大丈夫ということですから、安心といえば安心なのでしょうか?」
「いやいや。それはもう、呪われた一族だから」
「やっぱり神様相手とか無理〜」
人の思い通りにはいかないのが神との関係だ。神の力を利用しようと考えるのが間違っている。しかし、神子は神が決めるものだ。嫌でも関係ができてしまうというのが厄介なところだった。
「それで? 白木さんだっけ? 狐さんの繋がりはどこにあったの?」
今回の本題だ。蓮次郎が問いかけた先にいるのは、桂花だ。
「調べましたところ、母親の方の家系でしたわ」
「私のところの古宮家に繋がっていたわ」
そう答えたのは、浮岸睦美だった。
「古宮家は狐の?」
「ええ」
「なら野良じゃねえってことだな」
「野良って……」
達喜の言葉に、睦美は肩を落とすが、否定はしない。
浮岸家は動物と言葉を交わし、心を通わせることのできる能力者の家だ。その分家は、それぞれの動物に特化したものになって枝分かれしているらしい。
その中で、狐との関係を深くする家が、槇の母親の実家に繋がる古宮家だった。
「古宮家は、お狐信仰とは別よ。けど、姫様や魔女様が言っていたのは、お狐様だったみたいだから調べたの。そうしたら……何代か前に、お狐様を使役しようとしたバカがいたらしいわ」
浮岸家の分家達が祀るのは、それぞれの動物を統べる守護神のようなもの。だから、お狐様とは違う。しかし、これを混同した者がいたという。
「報告が上がっておらんが?」
「片はつけたということで、内々で処理したようだわ」
「そういうのが一番困りますわ」
「……申し訳ありません」
「睦美はんのせいではないけどなあ。まあ、徹底しようや」
「はい」
「他もな」
「ああ」
「分かっている」
今よりも連盟としてまとまっていなかった時代だろう。一族によって自分たちの領分を守り、何かあっても、都合の悪い事は他の家に漏らさないようにしていた。隠されていたことは多い。
「それで? 完全に切れてるのは確認できたの?」
「それが……扱え切れないと分かり、消滅するまでと……封じたそうなのです」
「……一番悪いのが来たなあ」
「御神体がまだあるってこと? それ、そのせいじゃないの? あの女の子が神隠しに合ったの」
「私もそう思ってます……」
「「「「「……」」」」」
間違いなく影響がありそうなのだ。それだけ、お狐様の影響力は強い。
「古宮家は当然、その封印のこと知ってるね?」
「はい……」
「おい。睦美。お前、古宮の当主にそれ直で確認したのか?」
「え? はい。封印場所は後日確認してくると……」
「やべえ気がしてきた。隠蔽グセ付いてる奴じゃねえの? 消しにかからん? 無理にお狐様をどうにかすると返るぞ」
「っ……まさか……」
「高坊。急いで瑶姫に連絡や!」
「すぐに」
聞き役に徹していた高耶も、嫌な予感を感じていたのだ。
すぐさま美沙のいる瑶迦の所へと向かった。
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