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秘伝賜ります  作者: 紫南
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046 なんとか決まりました

2018. 10. 28

仔犬達の可愛さに悩殺された泉一郎達に、高耶は笑みを浮かべて畳み掛ける。


「神使専用のブリーダーが、今人手不足なんです。大丈夫ですよ。基本食事も必要ありません。ただ、なるべくこの土地を歩き回ってもらわなくてはならないので、散歩だけは面倒かもしれませんが、神職に関わったことのある家が絶対条件なので、こちらを頼らせていただきました」


笑顔で営業は完璧だ。


「……そ、それは光栄なことですが……本当に神使様を育てるなど、務まるでしょうか……」


泉一郎が不安げに、それでも仔犬達から目を離せずに問いかける。


「問題ありません。もっとも必要なのは、愛情です。可愛いでしょう?」

「う、うむ……その、触っても?」

「構いませんよ。寧ろ撫でてやってください」

「そ、そうか……お、や、柔らかい……」

《クゥ、クゥ》

《クゥン》


撫でられて仔犬達は嬉しそうだ。


「正真正銘の神使ですから、何か力を吸われるとかもありませんし、普通に可愛がっていただければいいですよ。何か時々食べたがるかもしれませんが、全て力に変えるので排泄もしません。楽ですよ」

「まぁ、そうなの? すごいわ、神さまって」

「無駄がないんですよ。どうですか? 頼んでも良いでしょうか」


最終確認を取る。花代も降りて来て、仔犬達を撫でているので、もう落ちたも同然だ。


「名誉なことです。お預かりいたします」


泉一郎が立ち上がり、高耶に頭を下げた。


「ありがとうございます。ちゃんと育ったら、自分達で山神の元へ戻ると言うと思います。それまで早くて十年。長くて五十年もあれば」

「言うの?」


花代が仔犬達を膝に抱え上げながら尋ねてくる。


「ええ。そのうち人化することも出来ると思います。喋りますよ。なので、沢山話しかけてやってください。そこは子どもと変わりませんね」

「不思議ねぇ」


花代は天然なのだろうか。それとも大物か。すんなり色々と受け入れてくれる。


「私もたまに見に来ます。困った事があったらいつでも言ってください。電話は取れないかもしれないのでメールしてくださればいいですし」

「分かったわ。あ、でも名前はどうしましょう」

「付けてやってください。神に与えられた真名はありますが、それは口には出せないので呼び名としての名はこちらで付けていただければ」

「任せて!」


早速どうしようかと仔犬達の顔を見ながら考え出す花代。これなら大丈夫そうだ。


「では、お願いします」


改めて泉一郎に頼めば、嬉しそうに誇らしそうに答えてくれた。


「任されました」


この後、お茶をいただき、週末の祭りの時にはまた来ると告げて家に戻ったのだ。


ただ、最後まで麻衣子は口を開かず、じっと高耶を見つめているのが気になった。


◆◆◆◆◆


帰ったのは夕方の五時前。


優希がリビングで珀豪に抱き付いてテレビを見ていた。


「あ、おにぃちゃん、おかえり!」

「ただいま。優希、これからカナちゃんとミユちゃんの家に行こうか」

「どうして?」

「お土産を渡さないとな。貰っただろ?」

「うん!」


高耶は帰りにお土産を買ってきた。とはいえ、女の子が欲しがるものが分からなくて、無難にクッキーの詰め合わせだ。一緒に小さなハンカチが入っている。


「なら行こう……と、その前に《綺翔》」


犬の姿になった珀豪を見て、思い出したように綺翔を呼び出す。


大きな金の獅子は、優希から少し離れた場所に現れた。けれど、その輝く毛並みや大きさに比べて優しそうな目を見て、優希は怯えるよりも興味深々だ。


「おっきい……きれい……」

「綺翔だ。綺翔、小さくなってくれるか?」

《諾……》


すると、一呼吸後には白金色の美人猫になる。


「うわぁっ! かわいい!」


すぐに優希が飛びついていく。普通の猫ならば逃げるだろうが、綺翔は根が優しく大人しい。実は小さい子も好きだ。されるがままになっている。


「メもきんいろ!」

「優希、これからは送り迎えを珀豪じゃなく、この綺翔にしてもらってくれ。犬と猫では、周りの警戒度が違うから」

「え~、ハクちゃんダメなの?」


とても残念そうだ。どちらかを取れと言われて迷っているような、そんな究極の選択をする顔だ。


これに、弱った様子で珀豪が答えてくれる。


《我では、他の子ども達や大人達が怖がる。故に、ここで優希の帰りを待つ。宿題も見るぞ》

「むぅ……」


不満げだが、もう一押しだろう。


「優希は、珀豪が他の人たちに追っかけられて、追い払われるのをどう思う?」

「イヤだ。ハクちゃんわるいことしないもん」

「ああ。けど、犬がその辺フラフラしてたらやるだろう?」

「うん……コワイもん……」

「それと一緒だ。珀豪がそういう犬だと思われる。嫌だろう?」


こればかりは仕方がない。どれだけ賢い犬であっても、一匹だけで歩いていたら排除の対象になる。しかし、猫ならば話は違う。


「う~ん。ハクちゃんがきらわれるのはイヤ。わかった。おうちでまっててねっ。ショウちゃん、これからおねがいします!」

《ショ……諾》


頷いた綺翔と珀豪に抱きついて、優希はご満悦だった。


読んでくださりありがとうございます◎


次回、火曜30日です。

よろしくお願いします◎

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