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秘伝賜ります  作者: 紫南
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437 もはや別人です

家に帰り、優希の事を瑶迦に相談すれば、詳しく調べてくれることになった。


「優希さんに加護を与え、憑いている神がどのような方なのかを確認する必要がありますわ。寿園の話からすると、獣神様とのことですけれど」

「土地神ではないのですね……」

「そうですわね……中で眠られているようですし。恐らく、一族を守る守護神ですわね。獣神だからこそ、思念を受け取りやすいのかもしれませんわ」

「声ではなくということですね」

「ええ」


優希の中で眠っている守護神は、人型ではないからこそ、虫の形をしている神の思念を受け取りやすかったのかもしれないとのことだ。


「大丈夫ですわ。お目覚めになるのはもう少し先ですもの。それまでに対策を立てれば良いのです。護身術も形になって来ているようですし、術も教えてみてはどうかしら」

「優希に……ですか?」

「ええ。素質はありますわ。霊力も中々のものです。ムクちゃんも強くなっていますし、それに引っ張られるように、色々と優希ちゃんもできますわよ?」

「え……」

「ムクちゃんとはしっかりと繋がっていますもの。おそらく、優希ちゃんは弓の才能がありましてよ? 破魔の力を扱えるようになれば、どの家も欲しがる術師になりますわ」

「……」


確かに、ムクとの繋がりが強くなっているのは気付いていた。そして、ムクが串を投げると聞いて、投擲系の技術が優希も上げやすいだろうと予想していた。


あの歳でと思えば、将来かなり有望だ。


「わたくしの方で、優希ちゃんに弓を教えても構いません?」

「え、あ……お願いします」

「ふふっ。弓の弟子を取るのは何百年ぶりでしょう。嬉しいわ〜。優希ちゃんのことはしばらく任せてちょうだい」

「はい……」


言い方は悪いが、丸投げできて高耶は少しホッとした。


「高耶さんは、まだまだ抱えているものがありますし、そちらに集中してくださいな」

「ありがとうございます……」


そうして、いつも通り忙しく過ごし、木曜日。秘伝家に来ていた。


「お帰りなさいませ! 御当主っ」

「「「「「お帰りなさいませ!!」」」」」

「おう……っ」


朝も早い時間だ。書庫に来るために繋げた扉から入れば、勇一が待っており、そのまま本家の広い一室に案内された高耶は、大勢の一族の者達に出迎えられた。


会議用の長いテーブルがあり、一番奥に通され、用意された場所に座ると、立って待っていた者達が一礼してから座る。


「……」


この変わりようはなんだりと思っていれば、充雪がやって来た。


《高耶。こいつらの躾、粗方終わったからよ。安心しろ》

「……なるほど……まあ、話が出来そうで良かったよ……」


勇一は高耶の斜め後ろに控えるように座っているし、席に着いた者達は神妙な様子だ。話は出来そうだった。


「今日は、連盟の方で要請のあった忍術道場について話す為に集まってもらった……ということでいいんだな?」

「はい!」


勇一に確認すると、もちろんですと言うようにはっきりとした返事が返ってきた。


「では先ず、どのような忍術を可能とするのかを決めたい」

《おっ。それなら、妖精を呼んでおいたぜ。おーい。一人ずつ頼む》

《はっ!》


移動の仕方や、技を見せてくれた。


「では、これを可能とする稽古の方法について考えていく。そこで、まず一つ提案がある」


ここで全員の真剣な視線が高耶に集まった。以前では考えられなかったことだ。普通に別人しかいないだろうと高耶は思っている。


「……あ〜……忍術については、道場で出来る稽古というのが難しいと思う。地形なども利用した外でのものが相応しいだろう。そこでだ。連盟と合同で買い取った山がある」

「「「「「おおっ」」」」」


分かりやすく目が輝いた者は多かった。


「充雪が理想的だと言う滝もある」

《おおっ! そうだ!》


それは、連盟専用となった旅館から続く土地だ。


「そこの土地神様からの要望で、土地を少し変形させて欲しいというものがあった。それを行いながら、忍術を会得する為に特化した稽古場を作るのはどうだろうか」

「っ、そのような場所がっ」

「良い考えかとっ」


満場一致で賛成のようだ。


「土地の変形については、イスティアとキルティスが監督してくれる」

「おおっ。難しいことは分かりませんので、有り難いっ」

「土地神様のご要望に沿うようにというのは……難しそうでしたしねえ……」


脳筋だと自覚のある者達はほっとしていた。


「一つ。その土地には、土地神様が封じを施している場所がありますので、そこだけは確認し、入らないよう気を付けてください」

「「「「「はい!」」」」」

「では、稽古内容について詰めていきましょう」


そうして、今までの一族のわだかまりが嘘のように会議はスムーズに進んだ。


清掃部隊にも協力してもらい、翌日からあの山の滝を中心とした部分で忍術指南用の稽古場を作ることになった。キルティスとイスティアの監督の下、出来上がったのは五日後。


学園祭も終わった頃だった。


こうして、秘伝家に忍術部門が出来上がった。これにより、実質、隠れ里のようなものができるのだが、それは少し先のお話。




読んでくださりありがとうございます◎

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