432 把握されている
休日明けの月曜日。
高耶は常と変わらず大学へ来ていた。
「よ〜っス! 高耶〜っ。なんか土曜日は大変だったんだって?」
「……聞いたのか」
午前の講義が終わり、昼休みと次の一コマに講義がないため、のんびりと学食に向かっていた高耶は、別の講義を受けていた俊哉に中庭で捕まった。
「今日、また統二んとこの学校行くことになってるだろ? 今朝メールあった時に教えてもらった」
「統二か……」
俊哉は自称高耶のマネージャーらしく、周りもそう認識しているため、俊哉が『今日、高耶の予定はあるのか』と知り合いに確認すると、大抵教えてもらえるようになっていた。
蓮次郎や統二などは、自主的に俊哉へメールするようだ。逆に、俊哉の方にも高耶の大学での空き時間などを尋ねてくるらしい。
高耶はあまりメールなどが多くなると煩わしく思うため、有り難いと言えば有り難い。急を要するものでなければ、俊哉を通してもらうのは助かっているので文句も言えない。
「四限目終わったら速攻移動だろ?」
「ああ……今回は優希も連れてな」
「使える扉あんの?」
「徒歩三分のとこにあった」
「へえ。それも土曜日に?」
「……よく分かったな……」
「まあな〜」
土地神騒動の折に、近くに扉がある事を確認していたのだ。連盟の者達がそこを使って移動して来ていた。
その場所付近での仕事でなければ、近くに扉があることを知ることはない。本来、普段使いするものではないのだ。とはいえ、高耶は好きに扉を繋げるので、普段から時間短縮のために使うことは多い。
「すげえメンバーだったって聞いたぜ。忍者妖精とか」
「なんだその忍者妖精って……いや、間違ってないな……」
もうあれは、あらたな種族かもしれない。そして、感染する。
「その凄さに影響を受けて、高耶んとこで忍術道場開いてくれって言われたって」
「……あれ、本気なのか……?」
「勇一さんとこに、問い合わせ殺到してるってさ。いつ高耶に相談すればいいか聞いてくれって言われたんだけど。どうするよ」
「……本気なのか……」
勇一とも連絡を取っているという事より、忍術道場の話の方が衝撃だった。
「統二んとこは、今日と木の夕方と金曜の午後だろ? 明日は優希ちゃん達のピアノ教室で、その後にバイトじゃん? 水曜は蓮次郎のおっさんが統二のとこの学校の土地神の状態を確認して、会合だって言ってた。だから、空くとすれば、今週は木の午前しかないってのは伝えておいたけど」
「……そうだな……」
しっかりと全部把握されていることに、高耶は少し引いた。
「お、ならそこでってことで連絡しといて良いか?」
「ああ……本気なんだな……大丈夫だ……秘伝家に行く」
「了解〜」
「……」
これはこれで良いのだろうかと思いながらも、高耶は頷いておいた。
四限目の講義が終わり、すぐに今回も当然のようについてきた俊哉と共に先に家に帰っていた優希と合流し、統二の学校へと向かった。
そこで、また俊哉の方にメールが入ったようだ。
「お。蓮次郎のおっさんからだ。今日、高耶が学校に行くなら、状態の確認も一応よろしくってさ」
「……なんでお前の方に入るんだろうな……」
「強制じゃないからじゃね?」
「なるほど……」
一応とか、できたらという程度の問題なのだろうと結論付けられた。
「なあに? お兄ちゃん、またおしごと?」
「いや……ついでにだってさ。大丈夫だ。今日は仕事はしない」
「うん。ならいいよ」
お姫様の機嫌を取るのも大事だ。そう考えると、俊哉を通してでよかったのかもしれない。
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