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秘伝賜ります  作者: 紫南
425/448

425 一応は対応できています

多くの術者達は、式を呼び出し総攻撃を開始する。彼らが狙うのは、穢れた生き物。ワニかトカゲのようなものとゴリラっぽいもの。それからニワトリっぽいものだ。


どうしてもはっきりとソレとは言えないのは、混ざってしまっているから。


「お〜、こうしてみると、数は少ないが、式は中々に力があるものが多いな」

「力の系統がとってもシンプルね。だからじゃないかしら。昔、一度見たのって、もっとガチガチの融通利かなさそうなのばかりだったわよ?」


イスティアとキルティスはいざと言う時の控えだ。離れて全体を見ている。


《ゆうずうがきかない?》


果泉はそんな二人に挟まれて、結界の中に居る。


「そうよ〜。今の時代は、大陸の方との関係もあって、焔泉ちゃんの所くらいかしらねえ。陰陽五行を式まで意識してるのは」

「ああ。式の属性もほぼ大陸の方のだな。その方が力も乗りやすいし、イメージも持ちやすいからなあ」

「五行も良いのだけれどね。力が落ちてる今だと使い勝手が悪いわ。でも、高位の術者は、力の変換も出来るから、五行がなくなってる訳でもないみたいだけど」


二人の言葉に、今はまだ後方支援をしながら待機している伊調達神楽部隊の面々がふむふむと頷く。


「力として権限させるのならば、そうですねえ。それこそ、四神さえ揃えられなくなっておりますから。術はともかく、式として陰陽五行を意識しているのは少ないでしょうなあ」


術を使う時には意識するが、式にそれを求めないというのが、現代のスタンス。相性もあるものなので、無理はしない。


《何がちがうの?》

「ふふっ。高耶ちゃんを見てみて。火、水、土、風、これに特殊な果泉ちゃんのような木の樹精。これが一般的なセットよね」

《うん! 天姉さまと、清晶お兄ちゃん、綺翔お姉ちゃんと、珀兄に、わたし!》

「そうね。でも陰陽五行だと木、火、土、金、水」

《んと……わたしと、天姉さまと、綺翔お姉ちゃんと綺翔お姉ちゃん? それと清晶お兄ちゃん……拍兄がいない……》

「ふふふっ。そうね。それも、水は青龍ではなく玄武、風ではなく金で白虎、青龍は木となるわ」

《え……なんか……むずかしい……》

「イメージ持ちにくいのよね〜」


果泉は混乱したようにしきりに首を傾げていた。


「そのイメージし難いってのが、呼び出す式の力にも影響するもんだから、西洋の属性のイメージを利用するようになったんだ」

「土の黄龍なんて、私たちでも契約できたのは二人くらいしか見てないわ」

「イメージって大事みたいだからなあ」


強く願うとしても、確かないものでなければ届かない。本人が理解していない曖昧なものでは、受け取る方も困ってしまう。それが原因だ。


「まあ、そのお陰か闇とか光、空間と時間なんて言う、特殊なのとも契約出来るようにもなったってわけだ」

《黒姉や常盤お兄ちゃんのこと? なら良かったよね!》

「そうねっ。他にも、氷とか雷とかあるみたいよ?」

《っ! またお姉ちゃんやお兄ちゃんがふえるかもしれないの!?

「高耶ならありそうだよな〜」

「そうねえ〜」


あり得そうだと伊調達まで頷いていた。そして、これに大興奮するのが果泉だ。


《うわぁぁっ、たのしみっ! こんどたのんでみる!》

「あら。お姉ちゃんとお兄ちゃんが欲しいって?」

《うん!》

「小さい子のお願いのあるあるだな〜」

「そうねえ。高耶ちゃんが困った顔しそうだわ」

「違えねえっ」

「ふふふっ」


そこだけ、やたらとほのぼのした空間になっていた。


しかし、その外はまあ煩い。


「そこだー!!」

「いいぞー!! やったれー!!」

「こっちフォロー!!」

「あぶねっ! 避けろ避けろ!!」

「いやー! 汚い! 浄化! 浄化!」

「シュッシュッしろ! 臭いがまだ鼻に付いてんだよ!」

「ちょっ、普通の消臭剤をなんで持ってるの!」

「聖水系のは勿体無い!」

「だからって、消臭剤で効くわけあるか!!」

「……」


まだ追い詰められてはいないのだろう。余裕がありそうだ。多分、深夜テンションが入りかけてもいる。


「突撃ぃぃぃぃっ!!」

「やべ! じい様!! 突っ込みすぎ!!」

「ふぬぅぅぅっ! 人を食ったとは許すまじ!!」

「分かってる! 分かってるからっ! そこのばば様止めて!! その神剣家宝でしょ!!」

「うぉぉぉぉっ!! 斬る!! 斬る!!」

「うげっ! ちょっ、あの馬鹿息子! 妖刀持ち出しやがった!!」

「……」


まあ、一部がとても面白いことにもなっていた。


「これだけ大きな仕事は、久しぶりだしなあ……」

「はしゃぎ過ぎだろ……」


達喜や虎徹はもはや、呆れた様子でそれらを見守っていた。下手に手を出すと巻き込まれそうなのだ。後方支援の仕方も考えなくてはならない。


「お。高耶。そろそろ土地神様が動くぞ」

「そのようですね……あちら側に回ります」

「おう。こっち側、ちょい騒がしいからな……」


対応する場所を別で確保する必要がある。とはいえ、問題の三体は任せられそうなので、安心して対応できそうだ。


高耶のこれからの仕事は、穢れを剥ぎ落とした神が、どれだけ正気を保っているかによって難度が変わる。






読んでくださりありがとうございます◎

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