419 難題かと思ったら……
先ずはいつでも結界で閉じ込められるように構え、巻かれている怨嗟を剥がしていく。
キィキャァァァアアア!!
明らかに振動を感じるくらいの高さと大きさの悲鳴が上がる。
この最初の音を聞いた時点で反射的にマズいと思い、高耶は学校の校舎とを結界で囲む。それも水の結界だ。次いで、神も覆った。
「うぅっ、この声は堪えるっ……っ」
誰もが耳を押さえて身を縮める。
「はああ……高耶坊……助かったわ。さすがに校舎が危なかったわ……」
「はははっ。窓ガラスバリバリする所だったなあっ」
達喜は驚き過ぎて笑えるようだ。
「今の外まで……は……大丈夫だな」
「そこは大丈夫だよ……この結界、不可視と遮音、かなり強めだからね。ドタバタやるのを想定してる。さすがに、あの声は……やばいかと思ったけどねえ……寧ろ、結界作ってる子達が倒れて綻びないかが心配……確認を」
「はい!」
まだ始まったばかりだというのに、もう結界の心配をするハメになったと、蓮次郎は苦々しそうにピチピチしている土地神を見た。
「あんなの反則」
「伊調らは大丈夫かや?」
「大丈夫じゃありませんな……半数が倒れました」
「なに!?」
「音を拾うために、特に耳を澄ませていましたからね……私も今ほぼ聞こえていません」
「……」
耳から血を流している者はいなさそうだが、耳の良い神楽部隊や音一族にはキツかったらしい。伊調達は読唇術でなんとか会話しているに過ぎない。
高耶は神職の者達を守っているキルティスに声をかける。
「キっ、おばあちゃん、救護用に結界を一つお願いします。その中に瑠璃と玻璃を出しますので」
「良いわよー。外の音も響かないようにするわ。アレはきついもの」
キルティスが救護所として結界を張る。その中に、高耶は瑠璃と波瑠を顕現させた。
召喚する時に事情が伝わるため、直ぐに治療を始められる。
「伊調さん。耳がおかしい人たちをあそこに」
「ありがとうございます」
あの声が怖くて、作業は中断。しかし、ずっとそのままになるわけにもいかない。
そこで、これまで黙って見ていたイスティアが見解を口にする。
「あの声を浴びるのは良くなさそうだ。恐らく、一度では耳が痛むくらいだが、何度か聞くと状態異常をきたす。術が上手く扱えなくなるぞ」
「なんやて……」
「どうするの、それ……」
時間をかけていられないのは分かった。
「あの一枚剥ぐのでこれとか……絶望的じゃね? 俺、こんなの夢で見てねえけど」
「序盤過ぎるんだろ? 夢咲が夢で見てないなら、そう難しいこと必要ないんじゃねえか? 高耶。あの水ので剥がし取れねえ?」
「……やってみます。【清晶】」
《洗濯みたいでいい?》
高耶もそのイメージだったのだが、イスティアが笑顔で首を横に振る。
「ドラム型の洗濯機みたいなのをもう少し強めじゃないと無理だ」
《分かった……》
そして、まさかの洗浄作業が始まった。
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