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秘伝賜ります  作者: 紫南
409/448

409 もはや否定する力もなく

エルラント達の紹介を受け、年齢やどのような存在かを知った神職の者たちは、信じられないと、ここで断じることができなくなっていた。


「これまでのことを知ってしまっては……」

「ええ……信じないわけにはいきませんよね……」

「魔女様とは……」

「土地神様……神が……神とは……」


胸中は穏やかではない。大混乱中でもある。


「魔術師と吸血鬼ですか……いえ、嘘だとは思っていません。その存在を知らずに生きてきたというのが……悔しいと申しますか……」

「言いたいことは分かります……こう……人よりも世界を知っているつもりで、まだまだ世界の半分も知らなかったのではないかと……」

「ああ、それはありますね。それと、信じていたはずなのに、本当は信じていなかったのだと……自覚させられました」

「そうですねえ……神はおられるのだと……そう口にしていただけだったのだと、思い知らされたようで……」


反省もあるようだ。


「ふふふっ。世界とは、思っている以上に大きなものですわ」

「そうねえ。私もまだまだ、知らない事あるものね」

「だなあ。明らかにならないものが、未だにあるってのは、楽しいもんだぜ」

「全てを知るというのは、神でも難しいかもしれませんね」


そんな話をエルラント達がすれば、なるほどと頷き、盛んに質問が飛び交う。彼らはとても話し上手だ。そして、彼らより年上のものはいない。キルティス達からすれば、初老もとうに過ぎた者達も、子どものようなものだった。


頑固な者達にも、まだまだ若いわねと笑い、諭していくのが上手かった。


「さあ、桂花さん。次は天使と悪魔だったわよね? 高耶さん。お願いね」

「あ、はい……」


そうして、天使の瑠璃(るり)、悪魔の玻璃(はり)、天使と悪魔の子として瑪瑙(めのう)を紹介した。


「う、美しいっ……」

「……はあ……人に対して美しいなどと……本当に思えるものなのですね……」

「ああ、確かに……これは美しいと言わざるを得ない……」

「翼が……なんとも神秘的だ……純白というのは……輝くのですね……」


瑠璃の美しさに、目が潰れそうになっていた。そした、玻璃が挨拶すれば、その声に魅了される。それが魅了の力だと説明も入った。


「うっ、魅了……魅了とは……はあ……分かっていてもこれは……」

「魅了という状態を実際に経験できるとは……いやあ、貴重な体験ですっ」


言葉として知っていても、実際それを体験することなどほぼないだろう。強制的に惹きつけられるその不思議な感覚に、ちょっと恍惚としている者もいるようだ。


「あんな可愛い子になら、なんでもしたくなりますねっ!」

「あの樹精の果泉ちゃんとはまた違った可愛らしさだっ」


瑪瑙にもしっかり魅了されたらしい。早々にまた首領達の方で、抱っこ争奪戦が始まっていた。


そして、最後に、妖精を喚ぶことになったのだが、その前に瑤迦達にも教えていなかったと気付く事態になった。


「高耶さん? どうして言わなかったのです?」

「……知っているものと……」


これに、イスティアも呆れた声を出す。


「いや、知らねえよ。妖精なんて、俺らでも見た事ねえぞ? エル、お前は?」

「ないですねえ。だが……もしや、精霊に擬態したりしていないかな」


イスティアやキルティス達よりは、世界を歩き回っているエルラントに話を振れば、そんな問いかけが高耶に向けられる。


「あ、してるかもしれません……」

「やはり……」


エルラントは、その存在を知っていたかもしれないようだ。


「え? 擬態するの? あ、なら、あれかしら……」

「ん? なんだ。覚えあんの?」


イスティアは、何か心当たりのあるらしいキルティスに目を向ける。


「なんか違和感のある子に会ったことがあるのよ。樹精って、性質的にあまりアクティブな子が居ないの。だから、攻撃的な子はいないでしょう? 無視する子はいるけど」

「ああ、確かに。怒り方を知らない子が多いな」

「それはあるね。それで、契約者の感情に左右され過ぎて、問題が起きる事もあるくらいだ」

「そうですわねえ。どちらかといえば、お淑やかな子が多いですものね」


瑤迦の屋敷では、樹精達もかなりいる。度々訪れるようになったエルラント達も、そうした実感はしやすかった。


「で? 擬態した奴がいるって話だったか」

「そうそうっ。やたらと話かけてくる子がいたのよ。けど、契約する? って聞いたら、やめとくって消えちゃったの」

「消えた……ってのも奇妙だな。なるほど。そんじゃあ、高耶。お披露目しろや」

「……はい」


真剣な顔になったイスティアが綺麗な顔を凄んで見せる。これに逆らえるはずはなかった。







読んでくださりありがとうございます◎

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