403 四神
桂花は先ずはと自分の式神を召喚する。美しい赤い鳥がその肩にとまった。
「おおっ……」
「あのような鳥は見たことがない……」
「赤い……美しい赤だ……」
「あれが朱雀……」
若い者達の方が、やはり受け入れやすいのか、どこか憧れを抱くような、そんなキラキラとした目を向けていた。
「……信じられん……」
「本当に……突然現れた……」
「式神……」
もう受け入れるしかないのかと、少し苦しそうにするのが年配の者達だ。さすがに、実際に見えているものを否定はできない。
『ご存知だと思います。これは朱雀。普段は視る力がなければ視えません。この場には、他にも式がおりますが、視えますでしょうか』
「みっ……視えない……」
「他にも?」
『首領の机の上に……では、視えるようにいたしましょう』
「「「「「っ!!」」」」」
そう言った次の瞬間、大きな白い虎が机の上から飛び降り、幻想上のものだと思える龍が天井付近をゆっくりと海遊するかのように動いている。大きさは、土地神である水龍と比べれば、とても小さいものだ。
更に桂花が出した赤い鳥よりも大きい赤い鳥が舞い、亀のようなものがのそりと動いていた。
「うわあっ、これが四神!」
「絵の通りだ……っ」
「まさか、本当に……」
「動いてる……」
『現代では、四神全てを式とする者は少なくなりました。首領であろうとも、相性や契約する力が足りなくなっております』
「え、四神揃えるのが当たり前ではないってことか……」
『その通りです。ただ、これは我々も最近知り得たことですが、契約において、こちらが選り好みしすぎていたことが原因の一つでもあるようです』
「選り好み……?」
寧ろそんなことが可能なのかと不思議そうに、未だ部屋の中を動き回る四神達を見つめる。
『式神とは、大陸の方では、精霊と呼ばれております。四大元素だけではなく、他にも様々な場所、様々なものに宿る精霊達。それを、我々は式としてイメージした体を与え、存在を認めることで、契約としています』
存在を認められるというのが、大きな精霊達への対価だ。逆に言えば、それができなければ契約できない。
『ここで、無理に違う属性の精霊に、私のイメージはこれだから、と押し付けても上手くいかないのが当然のこと。正しく、その存在を認められないということに他ならず、そうして、最初から躓く術者が多くなっています』
その存在を感じただけで、その精霊が何を司っているのかが分からなければ、契約に至ることはない。
「それは、逆に思いがけず契約できてしまう者もいたりしますか?」
『ええ。それなりに力があり、精霊の存在を感じ取れるならば、自然と契約してしまう者もいます。一般のご家庭で育った方が、たまたま視え、そして、周りから理解されない寂しさから、仮に契約してしまう者はおります』
「仮に?」
『はい。厳密に、式との契約をするならば、それなりの形式が必要です。よって、仮です』
そうした者達の式は、その主人さえ良ければ良い。
『悪霊のようなものが憑いているのと変わらない状態になっていく事例もあります。我々も、少し前までは、そのように契約されたものとは知らず、悪魔付きの類いか、付喪神の類いのものだと思っておりました。姿が様々ですので』
少し前まで、まさか一般の者達が仮とはいえ、式神と契約しているのだとは思われなかったのだ。
「四神ではないと? そういえば、人のような姿のものはいないのですか?」
『それについては……高耶さん』
「……はい」
高耶はまず、珀豪達六人を喚び出した。
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