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秘伝賜ります  作者: 紫南
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顔合わせの日がやって来た。


出席する宮司達は、会場となるホテルに泊まれるようになっており、慌てて駆け込んでくる者はいない。


高耶達幻幽会の方も、エルラントの持つホテルということで、扉を繋げさせてもらい、集合時間ギリギリまで資料をまとめたり準備を進めていた。


それらの準備は、秘伝の使用人達や、雑用は任せてくれと仕事に取り掛かる清掃部隊の者達に任せ、高耶と蓮次郎、焔泉で宮司側の今回の代表となる宝泉孝己と最後の打ち合わせをしていた。


「それで、宝泉さんとしては、式神達を見たいと?」

「はい。お恥ずかしながら、懐疑的な者はまだ居まして……」


本当に申し訳なさそうに俯く彼に、蓮次郎も焔泉も顔を見合わせてから頷いた。


「構いませんよ。我々の式神ならば、只人にも視えるように出来ます」


これもやはり術者の力量による。首領や当主ならば、それが出来て当たり前。とはいえ、昔ほどそこまで力がある者は中々出なくなっているという現状もある。


「こやつは、視えん者の前に式をやり、突然視えるようにして飛び掛からせるという遊びをすることもある。いつもやらはっとる事や。問題あらしまへんわ」

「……いつも……はっ、いえ、よろしくお願いします」

「勿論ですよ」


ちょっと不安そうな顔になっているのには、蓮次郎も焔泉もあえて見なかったことにしたようだ。そんな中、気の毒そうに宝泉孝己を見ていた高耶に、蓮次郎が顔を向けて提案する。


「あ、高耶君の所は全員出してくれる?」

「そうやねえ。高坊の所のは全員、それもエリーゼちゃんやちっこい子らや天使もな」

「……本当に全員ですか……」

「「うん」」

「……」


これは絶対だと有無を言わせぬ様子だった。


「ああ、それと……充雪殿」


焔泉が少し上を向いて声を掛ける。その視線に釣られて同じ方を見た宝泉孝己に、充雪が姿を見せた。どうも、充雪の力も増しているようで、高耶が場を調整しなくてもこうして好きな時に誰にでも視えるようにできるようになったらしい。


当然だが、宝泉孝己は飛び上がりそうになるほど驚いた。距離は取っていたとはいえ、宙に浮いている人がいたら、流石に驚くだろう。


「っ!?」

《おう。驚かせてすまんな。充雪と言う。一応、神の末席に連なるものだ。元は人間だがな》

「っ、は、初めまして……元人間……? 神……?」

《一応な。ああ、神気は高耶の方が強いからな》


そう言いながら、高耶の後ろに移動する。


《こいつと居ると、ただの霊くらいにしか感じんのだ。まあ、そうだな……守護霊だとでも思っておいてくれや》

「守護霊……なるほど……承知しました」


その方が、彼にもしっくり来たらしい。神や霊だとダメで、守護霊なら納得するというのもおかしな話だが、そういうものかと高耶達も納得した。


《それでだ。ここ、今日は従業員もほぼ人じゃねえけど、それも教えてやったらどうだ?》

「……え……」

「なんや。やっぱりか。感覚がおかしなったんかと思おたわ」

「もしかして、瑶姫様の所の方達?」

《だな。まあ、ここの頭が頭だ。おかしかねえよな》


このホテルの代表が、表に出ないとはいえ、瑶迦とも仲の良いエルラントだ。式達の研修の場にしている可能性は考えられた。


「人で働いてる子達も、術者の子?」

《ん? 清掃部隊の奴らが言ってたぞ? ここに就職とかバイトに入るのは、連盟からの紹介状が要るって》

「そういえば、リストにあったかも?」

「最近見てへんでなあ。その辺のは、桂花に任せとるでなあ」


首領の一人である時刃(ときわ)桂花(けいか)が、そういった人事系の所をまとめている。焔泉や蓮次郎は気にしていなかった。


彼らの家が経営するホテルや旅館もあり、それらは会合に使われたりするし、視えるようになってしまった一般家庭の者達の就職先の一つでもある。今回のホテルもその一つとして登録はされていたというわけだ。


「あの……従業員が人ではないというのは……」


宝泉孝己は、聞き間違いかと必死に否定しようとしていたのだが、聞き流す事もできず、確認することにした。


これに蓮次郎が大したことではないように答える。


「このホテル自体に、特定の子達を害なく視えやすくする術がかかっているんですよ。普通に人に視えるかもしれないですが、大半が居場所を無くした座敷童子みたいな子達で」

「座敷童子……あ、あの……害なくというのは……」


聞き逃さなかった。


「ああ。座敷童子というのは、その姿を視せると、霊感を高めてしまうんです。だから、その影響が出ないようになっているというわけですね」

「はあ……そのようなことが……」

「ええ。ですが、逆にあなた方にはそのままでも良かったかもしれませんねえ」

「……あっ、霊力……?」

「そうです。うん。ちょっと術式を弄れるか確認しようか」

「せやな。会場だけでも」

「それが良い」

「……」


ちょっと悪どい顔になっている蓮次郎と焔泉。分からなくもない。この際、霊感を座敷童子達にしっかり上げてもらうのはいいかもしれない。


もちろん、それによるその後の対策が必要なのだが、今はそれは口にしないでおいた。


強制的に霊感強化訓練のようなものになるが、これも彼らの望むことだと割り切るしかない。









読んでくださりありがとうございます◎

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