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秘伝賜ります  作者: 紫南
395/450

395 面会

高耶に薫との面会許可が出たのは、神職関係者との顔合わせを兼ねた懇親会が開かれる二日前だった。


「話が出来そうなんですか?」


伝えにきたのは、蓮次郎だ。ここではまだ、資料整理が行われている。


「多少はね。どうも、口数が多い方じゃないみたいだし。ここ二日くらいは、常に安部家の者が付き添って聞き取りしてる」

「喋っているんですか」

「うん。鬼のことも大分出てきたかな。あと、今日は榊が会ってるよ」

「源龍さんと……」

「ようやくね」


彼らは、本来ならば双子の兄妹としてあったはずだ。しかし、本家の乗っ取りを考えたらしい叔父によって引き裂かれた。


「……そういえば、源龍さんの……叔父はどうなったのですか?」

「ああ。あの人も牢に入ってるよ。だって、主家の、当主夫婦を実際に殺しているからね。安部家の方で今は預かってる。同じ所には入れておけないからね」

「そうですね……え? 安部家の……?」


引っ掛かったのはそこ。高耶は目を丸くした。安部家の牢は特別だと聞いたことがあったからだ。


「うん。安部家の。地獄が見えるっていうあの牢ね」

「……本当なんですか……?」


これに答えたのは、充雪だった。


《本当だぜ? それも、かなりの下層な。彷徨ってるとこじゃなくて、仕分けされた後のとこ》

「仕分けって言うな……」

「仕分けっ、ぷふっ」


裁きの後、罰が与えられている場所らしい。


《その上、悲鳴が微かにずっと聞こえる》

「……囁かれる方がいいな……」

「やだよね〜。それも断末魔的な悲鳴でしょ。うるさそうだよね」

《何されてそんな声が? って、最初の頃は怖いもの見たさで落ち着かねえって》

「……分かる気がする……」

「気になるっ」

《そんで、実際に確認しちまってからは、声が聞こえる度に目を閉じてても、夢の中でも、脳内再生? されんだよ》

「狂うな……」

「発狂ものだね〜」

《いや〜。アレはマジで滅入る》

「それで済まんだろ……」

「あっははははっ」


笑い事でもないが、最悪の場所に移送されているということはわかった。それだけの罪を犯したということでもあるだろう。


「それで、いつ行けば」

「うん? 今でも良いよ? その方が榊も良いんじゃない?」

「……分かりました。このまま行きます」

「じゃあ、行こう」


そうして、扉を使って本部にやってきた高耶と蓮次郎、充雪は、そのまま地下牢へと向かった。


その牢の前には、テーブルや椅子が並んでおり、そこに焔泉や達喜、源龍がいた。高耶と蓮次郎が姿を現すと、源龍が驚いたように立ち上がる。


「高耶君っ」

「こんにちは」

「っ、うん……久しぶりだね」

「はい。源龍さん……顔色が……」

「え、あ、そ、そう?」


それまであった雰囲気は、かなりトゲトゲとしていて、良い雰囲気ではなかった。話を聞くためにも、少し雰囲気を緩めた方が良いだろうと、高耶は感覚的に判断した。


「ここ、少し寒いですしね。温かいお茶でも淹れましょうか」

「おおっ。それはいいなっ。出してくれっ」


達喜が何よりも喜んで口を挟んできた。まあいいかと珀豪を喚ぶ。


「【珀豪】すまないが、お茶を出してくれるか?」

《うむ。この間見つけた美味い梅昆布茶はどうだろうか?》

「「「おおっ!!」」」


焔泉と達喜、蓮次郎の目が輝いた。


《お茶請けは、黒糖饅頭で良いか?》

「おおっ。この小さく丸っとした感じが良いっ」

「可愛らしゅうて、ええなあ」

「皮も美味しいやつだっ」


おじさん、おばさん達は大喜びだった。


《うむ。そちらにも渡そう。食べると良い》

「っ……あ、ありがとう……」


ここで、久し振りに薫の声を聞いた。自信満々で、鬼をけしかけていた時とは違う、力無い声だった。





読んでくださりありがとうございます◎

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