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秘伝賜ります  作者: 紫南
391/449

391 有り難迷惑というもの

誰の仕業かは分かった。これは文句も言えない。ならば受け入れる一択だろう。


「はあ……とりあえず、書庫の方を見るか……俊哉は好きにしててくれ。休憩中のやつも来るだろうしな」

「おう。そうだった。よし! 癒しショットを量産してやるぜ!」

「それ、後で送ってちょうだいね?」

「僕にもね!」

「もちろん!」


雛柏夫妻はここに来た目的を忘れていなかった。もちろん付喪神達の楽園は興味深いが、それよりも本だ。彼らは無類の本好きなのだから。


「さてと。鬼に関するものを探せばいいんだよね?」

「ええ。あと、小さな子どもに関するもの、それと鬼渡について」

「分かった。君も大丈夫そう?」

「大丈夫よ。気になったらあなたに回すから、確認してちょうだい」

「そうしよう」

「では、お願いします」


そうして、書庫の探索が始まった。


「ジャンルとかもバラバラだねえ」

「年代はある程度まとまっているようですけどね」


雛柏夫妻は慣れた様子で、読みながらも内容のジャンルごとにさっさと分けていく。


「ここ、ひと棚使うね」

「はい。お好きなように」

「メモ張っていくわ」

「どうぞ」


一つ空けた棚を起点にして、ある程度の量ずつで仕分けを行っていく。手際が良い。スペースがないながらも、整理する技があるようだ。


「高耶くん。こっちが鬼関係の内容がありそうな怪しいやつ。そんで、そっちが触らない方がいい類いのやつ」

「……よくわかりますね……あらかた避けたはずなんですけど」

「あ、うん。僕も妻も、そういうの手に取る前に感じるんだよね」

「嫌な感じがするんですよ。こう〜、鳥肌が立つんです。最近は気のせいってこともなくなりましたわ」

「精度上がったよね〜」

「あなたがおかしな書物を持ち込むからでしょう」

「だって、高耶くんに祓ってもらえば問題なくなるし」

「あえてでしたのね? 困った人」

「あはは」


笑い事ではないのだが、百合子も困った人で済ませてしまう。この夫にこの妻ありということだろうか。


「あっ、これもダメですわ」

「取ります」

「お願いするわ」


百合子や雛柏教授が不用意に触るのはよくないからと、勇一がそれを取り除いていた。だが、勇一としてもそれに強いというわけではない。多少の免疫はあるが、対処が完璧にできるかと言えばそうではなかった。当然、同じ状態のものばかりではないのだから仕方がない。


「あ……」

《ゆういちお兄ちゃん。それはこっちのおフダがいいの》

「っ、は、はい……っ」


高耶はこれも見越して、威力別に様々なお札を用意していた。それを用途や状態に合わせて処方(手渡し)するのは、果泉だった。


「果泉ちゃんは可愛い上に頼れるねえ」

「本当にとっても頼もしいわあ」

《えへへ》


仙桃の樹精である果泉。元々、雛柏教授によって託された樹だったことを思い出し、手伝いに呼んだのだ。彼女は軽い呪いなら、手を触れるだけでも祓える力を持っている。


そのお陰か、呪いの強さや質が感じ取れるらしく、対処するお札の見極めもばっちりだ。


雛柏夫妻は、果泉を孫のように見ているようで、メロメロだ。


《じいじ、アレもさわっちゃダメだからね?》

「は〜い。果泉ちゃんが言うならじいじは触らないよっ」

《ばあば、それ重そうだから、ゆういちお兄ちゃんにたのも?》

「あらあら。そうねえ。お願いしようかしら。ばあばのこと気遣ってくれてありがとうね」

《うんっ》

「「かわいいっ」」


普通に自分たちをじいじ、ばあばと言ってしまっている所で、もう手遅れだろう。また一組、果泉のじいじとばあばが誕生した。


「……」


高耶はこれらに我観せず、除けられたものから順に読み解いていく。その傍らで、強そうな力を持った本が目に入ると、それを手に取り、悪いものは祓っていく。


そうしている内に、いつの間にか、付喪神が足下に来ていた。


「ん? これは……安部家から……こっちはキルティスさんの?」


それを確認して、高耶は振り返った。


「待て……っ、待て待てっ、わからなくなるからあっちに行こうっ。家ごとに……っ」


付喪神達が、それぞれの家から気になる書物を括り付けられ、運んできているのだ。また列が出来ている。さすがに頭を抱えた。恐らく、送ってきた方に他意はない。純粋に高耶の力になれればと思っているはずだ。


「っ、もう少し手が要るな……」

《トキワお兄ちゃんと、エン姉ちゃまと〜、ルリ姉とハル姉、それとっ、メノウちゃん!》

「……分かった」


早速、その五人(?)を呼んぶことにした。






読んでくださりありがとうございます◎

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