385 強い味方
当然だが、すぐに薫と面会というわけには行かなかった。人ではないかもしれないとはいえ、さすがに、今朝方まで数ヶ月意識のなかった者と話をすぐにするというのは難しい。
《ちょい様子を見て来くるわ》
「おう。頼んだ」
そうして、充雪が偵察に出かけたのを見送り、高耶は鬼への対策を考えるため、資料を確認しようと少し考える。
「図書館のは……あらかた見終わったし、あとは……」
そこで思い出した。秘伝家の所蔵する資料を確認できていないことを。
「……授業が終わったら、行ってみるか……」
一応はと、勇一に夕方向かうことをメールする。
「あまり期待はできないが……」
見てみなければ分からない。とはいえ、高耶は一度もまともにその蔵書を見たことがないのだ。読み解けないものとされているものは、勇一や統二によって持ち出されており、それを確認していた。しかし、どれも残念ながら鬼に関することは書かれていなかった。
「一人で……無理か?」
どれだけあるかも分からないが、一人で確認するのは不安だった。
そこに、雛柏教授が現れたのだ。
「高耶君。どうかしたの? 難しそうな顔してるよ? 土地神様のことで何かあった?」
「あ、ええ……教授。今晩の予定はありますか?」
「ん? ないよ? 講義も高耶君達のが終われば終わり〜」
「でしたら、秘伝家の資料整理を少し手伝ってもらえませんか?」
「いいの!?」
寧ろ良いのかと雛柏教授は興奮気味に確認する。
「はい。うちは……脳筋が多いので、その資料の状態に不安がありまして……」
「ああ、なるほど。いいよ? 僕は明日も休みだし、そういう仕事、苦じゃないから」
「……思いつきで言ったんですが、本当に良いんですか?」
「もちろんだよ! わ〜、秘伝家の資料か〜、何があるんだろうっ」
物凄く楽しみだと、その表情が言っていた。本当にそうした仕事が好きなのだろう。
「ありがとうございます。助かります。鬼の資料がないか確認したいので」
「いいよ〜。あ、姫様の所のホテル、泊まってもいい? そうしたら、休みの日は全部それに当てられるよ!」
「え……あ、まあ……そこから扉を繋げても良いですね……」
「お願いするよ! うわ〜あ、楽しみだっ。うちの奥さんも呼んじゃダメかな? 二倍働けるよ!?」
雛柏教授は結婚しており、子どもも高耶より少し上の女の子がいるらしい。そろそろ結婚するのではないかと言っていた。
そして、雛柏教授の奥さんも、教授と同じ人種だ。今回は助かるかもしれない。
「妻はね。こう……仕事以外の旅行とかあまり好きじゃなくてね。だから、あの姫様のところのホテルとかいいな〜って。ほら、不特定多数の人が居ないじゃない?」
「そうですね。良いですよ。寧ろお願いする方ですし」
何よりも、ホテルの従業員として働きたいと思っている者達が喜ぶだろう。
「やった! じゃあ、講義が終わったら早速ね!」
「はい」
ご機嫌な様子で教授はスマホを取り出していた。奥さんに電話するのだろう。
「仲がいいんだな……」
そんな感想を口にしながら、高耶は時間を潰すため、図書館へと向かった。そして、次の講義でとてつもなく機嫌が良さそうな教授の様子に俊哉が勘付き、一緒にいくことになるのだった。
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