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秘伝賜ります  作者: 紫南
355/449

355 面倒くさくなった

2024. 1. 11

二度目のお持ち帰り案件に、高耶は申し訳なさそうに瑶迦へと相談したのだが、瑶迦は目をキラキラさせていた。


「まあまあっ、高耶さんったら、いくらでも相談に乗りますわっ。キティとティアを呼びますわねっ。あっ、エルさんもっ」

「……お願いします……」


キティと呼ぶのは最古の魔女キルティス、ティアは稀代の大魔術師であるイスティアのこと。エルさんとは、表では大富豪、本来は大昔から存在する吸血鬼のトップであるエルラントだ。


高耶のためならばと呼びかければ、そんなVIPな存在がすぐに集結する。


それも、二分と掛からなかった。


「高耶ちゃんっ。何? 何? 何か困り事? 高耶ちゃんを困らせるなんてっ。オコだよお」


小柄で可愛いらしい見た目のキルティス。高校生と言っても通るだろう。手を腰に当てて、むっと頬を膨らませる姿は、怒っていても見ている方は和んでしまう。


「落ち着けや。先ずは事情を聞かんとなあ。まあ、無茶苦茶なもんだったら、孫を虐めんなって釘刺しとかんとなあ」


銀髪美青年にしか見えないイスティアは、その顔から出るとは思えないような荒い言葉を吐く。そこに更に整った顔で凄まれては、距離を取りたくなる。


「ティアこそ落ち着きなよ。怖い顔見せないの。高耶君に嫌われるよ?」

「高耶っ、じいちゃんの事嫌いか!?」

「……いいえ」


こういう問いかけは困る。別に嫌いではないが、好きだと言えば、バカみたいに高額なものをプレゼントされたり、なんでもかんでも作ってくれるようになるだろう。なので、一番困る問いかけなのだ。


「ほら、ちょっと間があったよ?」

「高耶ぁっ」


珍しく、すかさずエルラントが楽しそうに煽る。


「だ、大丈夫です。というか、エルラントさんっ。そういう煽りダメですって」

「少しずつ、冗談に慣れてもらおうと思ってるんだよ。最近、よく会うようになって思ったんだ。ほぼ一人で居るから、こいつ冗談が通じないって」

「……」


エルラントの目は笑ってなかった。


「ティアとかキティはシャレにならない力があるから、冗談を冗談として受け止められないのは危険だと思わないかい?」

「……そうですね……」

「けど、二人とも結構イケイケというか……だから、勢いで冗談を冗談と思わずに突っ込んで行きそうで怖いなって……今更だけどね……」

「……なるほど……」


ちょっと遠い所を見ているエルラントに、高耶は心配になる。


「ということだから、え〜、俊哉君だっけ? お友達の」

「……はい……?」


突然、エルラントから俊哉の名が出て目を丸くする。そうして、少しばかり思考停止していれば、エルラントが続けた。


「あの子、コミュニケーション能力高いから、ティア達の面倒見てもらおうと思って。それで、最近の常識教えてもらえないかな」

「……それは……良いかもしれません」


俊哉にぶん投げようと二人で内心ニヤつく。


「決まりだね。さて、一つこちらの悩みを解決できたし、君の方の問題について聞こうかな」

「お願いします」

「あっ、ズルいっ!! 高耶ちゃんっ。私に任せて!」

「コラっ! 俺の事忘れてんじゃねえぞっ」


そうして、山の事についての話を始めた。その後、すぐにでも行こうと言うキルティスとイスティアに引き摺られ、なぜか旅館で一泊することになった。


「……なぜ……」

「考えるだけ無駄じゃないかな」

「……」


常識人のエルラントが居ることと、キルティスとイスティアは二人セットで動いてくれるので、それほどストレスになることはないのは救いだろう。


翌日、意外にも真面目にキルティスとイスティアは山を歩き回り、夕方ごろに戻ってきた。


「ここめちゃくちゃ、特異な土地じゃんっ。この旅館、連盟で買い取ったんだろ!? ここに俺住むわ。そんで研究する!」

「私も私もっ! 土地神もしっかりしてるし、こんな都合が良くて面白い土地ないよっ。だから山崩すのはちょっとだけ待ってっ。具体的にはあと……」

「「千日くらい!」」

「長いよ」

「……」


これはこれでめんどくさくなったなと、高耶とエルラントは揃って遠い所を見てしまった。







読んでくださりありがとうございます◎

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