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秘伝賜ります  作者: 紫南
331/450

331 終わった後に

2023. 7. 13

賑やかに時間は過ぎて行き、お決まりのビンゴゲームで盛り上がり、お喋りも料理も十分堪能した所で、高耶は俊哉に呼ばれてピアノの前に向かう。


「そんじゃ、BGMよろしく!」

「おう。バラード系から入るわ」


会場が暗くなる。ピアノから斜めに見える向かいの白い壁に映像が映し出された。


それを合図に、静かにピアノの音が流れる。映像の邪魔にならないよう、慎重に。


映像は、会が始まる前に、早回しで確認している。なので、なんとなく雰囲気を合わせることはできた。


映し出されているのは、小学校の頃を中心にした中学校卒業までの写真。学校行事などで映されたものだけでなく、個人の出しても良いとメールで幹事達に送られて来た思い出の写真だ。


時折、笑いや悲鳴が上がるのはきちんとその映像に集中できている証拠だろう。


時間にして十五分強あるものと聞いている。中学校卒業後の個々の写真も最後には流れ、今に繋がっていく。


その後はこの旅館に来てからの写真。部屋で寛いでいる者や、トランプなどのゲームをして楽しんでいる様子。外でお土産を選んでいる様子など様々。


小、中学校の頃の修学旅行の写真と交互に入るから、変わってないと笑いが起こる。


そして、ラストにはこの場に来られなかった恩師や中学校の頃の教師達のビデオレター。よくここまで揃えたものだと、高耶はピアノの音を小さくしながら感心する。


そろそろ終わりが近い。ならばと、卒業式での定番の合唱曲をポップにアレンジして弾いていく。


かなり女性達は感動して泣いているので、明かりが点く時までにはゆっくりと落ち着けるように、今度は曲に意識を向けさせる。


余韻も残しつつ仕上げた。


「「「「「っ〜……」」」」」

「すごい良かったっ」

「感動した〜ぁっ」

「編集上手くね?」

「懐かしかったよねっ」

「やべえ。変わってねえわっ」

「俺ら同じことしてた! アレ笑うっ」


かなり好評だったようだ。


露子が最後の挨拶をする。


『「これにて、同窓会は終了となります。ありがとうございました!」』


幹事一同が前に出て礼をすると、歓声が上がった。


「ありがと〜」

「すっごい楽しかった!」

「良い会だったぞ〜!」

「お疲れさんっ」

「また頼むぞ〜」


先生達も楽しそうに拍手していた。大成功だったと言えるだろう。


『「まだまだ話し足りないかと思います。お部屋の方で集まってもらっても構いませんし、ロビーもお使いください。こちらの会場も八時までこのまま使えます」』


他の客が入っていないので、旅館のロビーも好きに使える。


ドリンクバーも用意されているので、ここでダラダラと過ごすのも良い。


『「今日帰られる方は、八時までにはチェックアウトをお願いします。お風呂は十時までです。他のお客様はいらっしゃいませんが、遅くまで起きている場合は、部屋ではなるべく静かにお願いします」』


今日は特に夜遅くまでうるさいだろう。


『「では、解散!」』


こうして同窓会は終わったのだが、その言葉を待ってましたと言うように、男女関係なく、高耶に突撃してくる者は多かった。


「蔦枝君っ。なんでそんなにピアノ上手いの!?」

「もっと弾いてっ」

「お前やばいだろっ。最初の校歌のアレンジバージョンとか、普通無理!」

「もう一回聞きたい!」


圧がすごかった。


ここに割り込むのが、高耶の保護者達公認のマネージャーの俊哉だ。


「こらこら。そんな勢いで来たら危ねえだろうが。弾いてもらうから、きちんと席に座れっ。お触り禁止!」

「「「「「えぇぇぇ〜」」」」」

「ええ〜、じゃない! 高耶はコンサートもモデルの舞台も控えてんのっ。落ち着くように!」

「コンサート!」

「モデル!? モデルやってんの!?」


余計にうるさくなったように感じる。鬼気迫る様子に、本気で身の危険を感じて、高耶はピアノの方へ向かう。そして、最初にやった校歌のアレンジバージョンを弾く。


これで周りは一気に落ち着いた。きちんと近くの席についている。椅子だけ持って来て、自然と綺麗に並んだ。


しばらくはこれで何とかなりそうだ。


いつの間にか、先生達まで近くに椅子を持って来ていたのには驚く。だが、そのまま数曲弾き続けた。これは、アルバイトの時と同じなので、特に迷うことはない。


そうして弾ききり、高耶が鍵盤から完全に手を離し、余韻に浸っていた時だった。


部屋の外が騒がしいことに気付いた。


「ん? なんだ?」


俊哉が振り向く。すると、武雄が駆け込んできた。


「強盗がっ! ナイフを持った強盗が何人か人質に取って部屋にっ」

「「「「「っ!!」」」」」


出くわしたこともない状況に、この場に居る者たちが身を固くする中、高耶は冷静だった。


「どこだ?」


高耶は落ち着いた声で武雄に確認していた。




読んでくださりありがとうございます◎

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