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秘伝賜ります  作者: 紫南
329/449

329 誤解は解けたはず

2023. 6. 29

高耶は、こんな説明を同級生にするとは思わなかった。


あくまでも高耶にとっては、学校の事は、学業の事だけの関係と思っていた。


当主となってからは特に、学校の外に出れば、付き合うのは、家業の関係者ばかり。


家業の事については、母親もノータッチだったし、完全に学校での付き合いと別にもなる。


「うちの一族の場合は、当主になれる技術を継承できるかどうかが重要で……だから、分家筋だろうと、それが可能な者が当主になるんだ。スープ冷めるぞ」


高耶は、運ばれてきたスープを味わいながらも説明する。ジャガイモのスープのようだ。滑らかな舌触りになっており、とても美味しかったため、食べるのを忘れて聞き入りかけていた満達に、早く食べろと声をかけておく。


「っ、お、おう。え? それだと、親父さんの後継ぎってわけじゃないのか……ん? じゃあ、本家の人を差し置いてってこと!?」

「すげえじゃんっ。その素質? を小四の時に!?」

「……それ、大変だったろ……」


満と嶺は、すごいと素直に興奮気味に話すが、槇は気の毒そうに色々察したようだ。


「ああ……本家からの当たりが強くてな。それも、三代くらい当主になれるのが居なくて、本家で当主代理を立ててたから、色々奪ったとか、何とか、最近まで煩く言われた」

「「うわ〜……」」

「……最近までって……親父さん居なくなってからもずっとか……」


槇はあまり普段から喋らないし、ムッとしていることが多いが、こうしたことを色々と考えているのだろう。かなり共感してくれていた。


「まあな。俺は……父さんみたいに、道場の一つでも継げれば良かっただけだから、迷惑にも感じたけど、こればっかりは仕方ない。別に俺が決めた訳じゃないし、他に理解者も居たから、まあ何とかできた」

「……お前が、周りとあんま絡まなかったのは、そういうの全部抱えてたからか……それなのに俺ら、なんか偉そうにしてるとか、無視してるとか言って……」


槇達には、一人だけ雰囲気が違うし、カッコつけたやつということで、気に入らなかった。


それで目立ちたいだけの奴だと思い込んで、仲間外れにしたりしていたのだ。


それを思い出し、落ち込んだらしい。


「いや……俺もあの頃は必死だったし。母さんは全くこっちの業界には関わらないというか、知らない人だったから、巻き込まないようにしないととか……確かに、あの頃は色々抱えてて周りが見えてなかったかもな。付き合い悪いって思ってたんだろ?」

「っ、そ、そうだけど……そんな事情があると知ってたら……」


とは口にしても、槇も知ってもどうだっただろうと考える。これには高耶も苦笑いを浮かべた。


「さすがに身内の恥みたいなもんだし、話せないだろ。本家と喧嘩とか、それも子ども一人を親戚中で叩こうとしてるとか……外聞悪すぎる。説明も面倒だし」

「……確かに……というか、じゃあ今は?」

「もうほぼ解決した」

「それは良かった……」

「ああ」


本気で槇達が良かったと思ってくれているのが分かり、高耶は微笑む。


「っ!」

「うわっ」

「イケメンやべえわ……っ」

「ん?」


良い顔だったらしい。不意に笑ったのはよくなかったようだ。女性達の小さな悲鳴のような声もそこここで聞こえた。


これは俊哉にも止めようがないので仕方がない。


ここで、冷静な彰彦が余計な事を言った。


「親戚同士で裁判とかにならなくて良かったな」

「ああ……そういうこともあり得たのか……力技だったから、訴えられてたかもな……」

「何をしたのだ?」

「ちょい周りがキレて家潰した。あと説教?」

「物理か」

「ああ。家は半分以上が完全に倒壊したから、いくつか今まだ建ててる」

「そういや……請求書回ってきてないな……」

「「「「「……」」」」」


どういう会話だと、周りが少しばかり静かになる。そこへ、エリーゼが給仕のためにやって来た。そして、会話に口を挟む。


《それらの請求書でしたら心配要りません。今までの迷惑料も込みだと、本家の者達でどうにかすることになっております》

「そうだったのか……」

《はい。借金してでも払えと、他の首領達と契約書もきちんと交わしておりました》

「……そうか……」


焔泉や蓮次郎達との契約書など、絶対に破れないだろう。少し気の毒になった高耶だ。


「あ、あの……蔦枝……くん?」

「ん?」


それは、話を聞いていたらしい女性達だった。視線は、高耶とエリーゼへと交互に向かっている。


「そのメイドさん……と、どういう関係?」

「……エリーゼはうちの……メイドだ」

《お手伝いさせていただいております。エリーゼです》

「「「「「…………ええっ!!」」」」」


これが一番ショッキングだったらしい。






読んでくださりありがとうございます◎

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