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秘伝賜ります  作者: 紫南
324/449

324 憎まれにくい性格

2023. 5. 25

同窓会の開始の十五分前。


参加者達のほとんどが前日には到着しているということ、会場が滞在する同じ旅館内ということで、開始ギリギリの時間が集合時間となっていた。


ちょっと忘れ物と思っても、部屋にすぐ戻れば良いだけなので気楽なものだ。


中には、温泉に浸かってから来たという者もおり、とてもリラックスした様子での集合となった。


「うわっ。めっちゃみんな着飾ってんじゃん」

「部屋あるから、着替えやすいもんな〜」


結婚式の二次会のような雰囲気にはなる。女性は特に華やかに着飾っていた。お化粧も着替えも、部屋が用意されているのでやりやすいだろう。


慣れないヒールで自宅から離れた会場に向かうということもないのだ。遠慮なく着飾れるというものだった。


「こうして見ると、泊まりって正解かもな」

「確かに」


そんな話を満と嶺が席について話していた。


そこへ、最終の確認として部屋ごと、机ごとでまとまっている人数をチェックしに来た露子が同意する。


「本当にそうよね。終わったらすぐ化粧落として、温泉に直行。それで即寝落ちすることが出来るもの」


食事も出て来るし、布団も敷いてもらえる。至れり尽くせりで楽しめる。何より、着飾るというのは、意外と疲れるものだ。オシャレには我慢も必要。それを家まで帰るまで我慢する必要がないのは有り難いというわけだ。


「喋り過ぎてとか、気疲れする子もいるだろうし、会場をここにして本当に正解だったわっ。和泉の思い付きも、たまには本気で聞いてみるものよね」

「え……和泉の……?」


槇が目を丸くした。


「そうよ? 同窓会をしたいって言うのは、瀬良さんとか、女子の方で考えてたんだけど、場所の選定が面倒でね……大学生だし、あの辺、大学とか近くにないし、結構地元から出て行ってる。けど、そっちに気を使って、都会の方でとかなると、それ以外の負担が大きいし、何より、店が大きいと高いのよ。駐車場も困るし」


交通の弁も良く、店が多くなる都心では、それほど大くの人数を受け入れてもらえない。駐車場に困ったりもする。


コインパーキングの値段も馬鹿にならない。公共交通機関を使って来る人の事を考えれば、駅の近くだ。そうなると余計に駐車場は割高になる。


「先生達は自家用車で来るんじゃないかなって思うと、駐車場でお金払ってもらうのもねえ。まあ、ケチらないだろうけど、イヤらしいじゃない?」


気にしないかもしれないが、こちらとしては気になる。教師はご招待。お金もこちら持ちだ。けれど駐車場代はかかりますよと言うのは気分的に良くないだろう。


「用意するこっちとしても、車で来たかったし」


ゲームをすることで出す景品も運ばなくてはならない。それらを考えると中々開催に踏み出せなかったらしい。


「だから、和泉が夫馬君に連絡取って、ここでってなった時はびっくりしたわ。駅からの送迎バスもあるし、駐車場にお金もかからない。けどまさか、旅館一つ貸し切ろうなんてね。アホかと思ったわ」

「「「確かに……」」」

「……」


突然『なら、旅館貸し切ろうぜ〜』なんて言ったのだろう。俊哉ならやるかもしれないと、満、嶺、高耶、それと槇は思った。突然の意外な提案をするところは、小学生の頃から変わっていない。


「まあ、結果的にすっごい理想的で、出席率も高くなったんだけどね。あいつが生徒会長じゃなくて良かったわ……」

「「「「確かに……」」」」


全員同意する。彰彦も頷いていた。


露子は笑いながら、手元の名簿にチェック印をつける。


「けど、アイツが居なきゃ、実現しなかったわ。情報網がエグいのよ。アイツ一人で三分の二以上の連絡が取れたからね。まあ楽しんで行ってよ。蔦枝君もね。修学旅行のやり直し。楽しんで」

「ああ……」


俊哉の一番の目的はコレだろう。武雄の旅館を使えると聞いて、高耶と修学旅行のやり直しができると本気になったらしい。


思えば、気難しい蓮次郎までもいつの間にか期待している。補佐役として使えると思われている俊哉だ。情報網など、情報収集の能力も高いのだろう。


そして、あの性格は憎まれにくい。


「俊哉ってすげえわ……」

「あんな落ち着きないのにな……」


ここでも落ち着きがないという評価を受ける俊哉。けれど、それでいいのだろう。それも個性だ。


高耶が何気なく忙しなく準備に駆け回る俊哉を見ていれば、不意に入口の方を見て彼ら顔を顰めて見せた。とはいえ、一瞬だ。


それが気になって、俊哉の視線の先に目を向けると、高耶も思わず眉根を寄せた。


女子達を引き連れながら、入ってきた白いスーツの男が、顔に特大の口頭蛾をくっ付けていたのだ。


そして、その男は会場を見回し、真っ直ぐにこちらのテーブルの方へと向かってきた。


槇が腰を浮かせたのを見て、目的はここかと始まる直前の面倒事の予感に、頭を抱えたくなったのは仕方がない。




読んでくださりありがとうございます◎

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