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秘伝賜ります  作者: 紫南
297/449

297 対策して損はない

2022. 11. 10

学校の様子を確認しながらも、高耶は衣装合わせを行っていた。


仮とはいえ、既にほぼ完成された服だ。それに着替えてカーテンで仕切られた手作り感溢れるフィッティングルームから出ると、小さな歓声が上がった。


「っ、す、すてき……っ」

「どうしようっ……服が完全に負ける……っ、けどイイ!」

「っ、ヤバい、ヤバいっ……これはヤバいっ」


女子高生の熱量は高い。本気で逆上せそうになっている子もいるようだ。


人数は限定されているから、今の状態でも問題はないだけで、集団の中でとなったらどうなるのかというのが心配だ。


「……」

「あ〜あ、これ、本番ヤバいぜ? 氷嚢とまではいかなくても、氷は用意しといた方が良くないか?」

「ですね。生徒会に伝えておきます。本気にしてくれるかは分かりませんけど」

「な。ちょっと冗談みたいだもんな〜」


腰砕けになっている女子生徒もいるのだが、この状況を見ていないと本気には思えないだろう。何より、ただでさえ忙しくなるのだ。そのままスルーされてもおかしくない。


「集会で見ててもな〜」

「ですよね……となると……今から連れてきます」

「え? 誰を?」

「副会長が二葉の知り合いのお姉さんらしくて。お願いして来ます」

「おっ、それなら、ちょっとこのままだな。どうせ、女の子達も落ち着く時間が必要だし」

「はい。すぐに。行ってきます」

「よろ〜」

「……」


高耶はただ一人、立って待っていることしか出来なかった。


「高耶。椅子やる。座っとけ」

「……ああ……」

「それにしても。ファンとかが倒れるってのが良く分かるぜ。あと、女子高生に御当主モードは刺激が強かったかもな」


この場にいる生徒達は、こっちの話など聴こえていないだろう。


「けど、こうして見ると……いい体してるよな」

「……」


どうやら、高耶が初日に着てきた服と同じ、腕は七分丈らしく、逞しい腕に男子生徒達も釘付けだ。


スタイルの良さが際立つ細身にも見えるシャツとズボンが、余計に高耶の魅力を引き出していた。


「あれだろ? このデザイン。統二のなんだろ? 藤の姉さん達監修だし、高耶にピッタリだよな」

「……そうか?」

「そりゃそうだろ。まあ、素材が良いのは仕方なくね?」

「……」


高耶を想定してデザインされた服なら、イメージもピッタリで正解だ。


「けど、ここまで高耶に合っちまうと、ちょいコンセプトとは外れてねえか? 一応『大衆向け』の服じゃねえとダメなんだろう? 奇抜じゃないのは良いけど、これだけ高耶に合うとさあ」

「「「……あっ」」」


これを聞いて、数人の生徒達が正気に戻った。


「確かに……コンセプトから外れているかも……いや、でも、誰もがカッコよく着られる服としてのデザインだし……」

「シンプル過ぎるとか?」

「あまり絵から変えるのもね……減点だし……」


デザイン画から、いかに離れ過ぎず、それでいてカッコよく手を加えられるかどうか。理想とするものから、着やすさや見た目をどれだけ追求できるかが試されるのだ。


手の加え過ぎで、デザイン画とは似ても似つかない感じになってはいけなかった。


自分たちの改めて起こしたデザイン画を広げ、頭を突き合わせる。


「ここ、もう少し摘んでみる?」

「ベルトみたいなのにしてみない? 少し自分で調整できるように」

「あ、だったら……」


話し合いが始まったようだ。


まだ高耶に見惚れている者もいるが、一応は正常に動き出した。


そこに、統二が二葉と副会長だという女子生徒を連れてやって来た。


「お待たせ、兄さん」

「うわっ、ちょっ、これは確かにヤバいわ。高耶兄さん、さすが!」

「っ、これはっ、わ、分かったわ。理解したわっ。氷、必要ね! クーラーボックスを持ってる子達に声をかけておくわ! 運動部なら確実だしっ。あと、保健室は開けておいてもらわないと……っ、お兄さん! 本番もよろしくお願いします!!」

「あ、ああ……」

「ありがとうございます! 失礼します!」

「……」


元気な副会長さんだ。


「姐さんって感じだな」

「ああ……」


そうして、なんとか衣装合わせは終了したのだが、帰り際に一人の生徒に声をかけられた。


「あの……失礼します。秘伝の御当主ですよね?」

「ん?」


高耶が当主であることを知っている者が、この学校に居るということに、少し驚きながら振り向く。そこに居たのは、ボサボサ頭の丸渕メガネ、ヨレヨレの制服を着た、いかにもな暗キャな男子生徒だった。




読んでくださりありがとうございます◎

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