292 気合い入れました
2022. 10. 6
高耶は大学の学食で昼食を取っていた。そこに、俊哉が定食のプレートを持ってやって来る。
「高耶っ。俺も統二の高校に行くぞっ」
そう言って俊哉は、高耶の前の席に座った。
「……なんでだ?」
「決まってるだろ! 高耶の護衛だよ」
「……」
護衛ってなんだろうと考える高耶に、俊哉が答えた。
「だって、女の子に囲まれたくないだろ。いつもみたく術で意識逸らすなんてこともできないじゃんか」
「……」
今回は姿を消すわけにはいかないのだ。モデルとしての顔合わせでもある。寧ろ目立たなくてはならない。
「だからさっ、俺、お前のマネージャーみたいな感じ。ガードは任せろ! 思う存分、御当主様仕様で悩殺しまくってもいいからなっ」
「……大げさな……」
高耶に悩殺している自覚はない。ただやけに視線が気になるなと感じるぐらいだ。最近は特に、珀豪をはじめ、式神達と一緒に居たりするため、視線が集まりやすかった。目立つなと思うくらいでしかなかったのだ。
その上、高耶にはファンが多い。迅のような強さに惚れる男性ファンも多く、特に女性にモテるとかを感じてはいなかった。ピアニストとしての演奏に惚れている女性達も多い。
見た目に惹かれてという者の方が稀だったのだ。だからこそ、高耶の自己評価は低い。
「……高耶さあ、あんま服とか気にしない感じはあったけど……マジで見た目とか気にならないのな……」
「服選ぶとか、時間がかかるだけだろ」
食事をすすめながらそう答える。高耶にとっては、時と場所に合う服装を選ぶのは当たり前でも、その他はどうでもいいのだ。
「ったくよお、せっかく飾り映えする顔してんのに。その服も変えろよ!」
「……どのみち、一度帰るよ。瑶迦さんがチェックすることになってる……服については信用ないらしいから……」
「妥当だな! 三時の予定なんだろ?」
「なんで知ってる……」
そこで、俊哉がメールを見せる。
「二葉から連絡来たからなっ!」
「……それでか……いや、あまり関係のない部外者は入れないんじゃないか?」
「それなっ。統二が、担当の先生に、お前の写真見せたら一発OKだったらしいぜ」
「……どんな写真見せたんだ……?」
マネージャーのようなものを許可できるほどの写真に高耶は覚えがなかった。
「コレだろ」
「……っ、お前……待ち受けにしてるのか?」
美奈深達や、時島、那津達と最初に瑶迦と顔合わせした時の写真だ。さすがに俊哉とのツーショットには抵抗があり、優希と三人で写っていた。
「当然だぜ! なんか運気上がりそうだしっ」
「……」
実は、あの場に居た者は全員、それぞれケイタイの待ち受けとしているというのを、高耶は知らない。
「食ったら早めに行こうぜっ。気合い入れて着替えてもらわないとなっ。俺が居ても納得してもらえるように」
「……はあ……」
そうして、大学から俊哉を連れて高耶の家へ向かい、瑶迦の所で軽くファッションショーをさせられた高耶は、全員の納得の頷きを得て、統二の高校へ向かった。
「ほお〜、さすが進学校。綺麗だな」
「進学校は関係ないだろ……」
おかしな俊哉の感心を聞きながら、正門の方に向かうと、そこで統二と二葉が待っていた。
「兄さん! 俊哉さん!」
統二が嬉しそうに手を振って来る。
「悪い。ギリギリだよな」
「ううん。正門に三時だから、丁度だよっ」
数人周りに居る生徒達や先生達が、目を丸くしているのは、統二の笑顔を珍しがっているようだ。
そして、二拍くらい置いて、高耶に目を留め、蕩然としている。
まずいと思った俊哉が、統二に声をかける。
「統二、どこに行けばいいんだ?」
「あっ、うん。体育館。全校生徒にお披露目だから」
「……ヤバくね?」
「うん……耳栓必要な気がする……兄さん、ちょっと今日は……藤さん達、張り切ったね……」
統二は二歩下がって、改めて高耶の今日の服装をチェックする。
七分袖の黒のジャケットがよく似合っていた。
「大満足してたぞ」
「写真も撮ってた?」
「おう。ほれ、コレ送っとく」
「お願いします!」
「俺も! 俺にもください!」
「任せろ」
「……」
高耶そっちのけで、写真を送り合う。
「はっ、こうしちゃいられねえ。ほれっ、ここはもう悩殺済みだ。行くぞっ」
「ですね。さすが兄さん。男も残らずってのは、すごいです。何か出てません?」
「俺もそれ気になる。高耶、何か出してるのか?」
「……神気は抑えられてるはずなんだが?」
「「「しんき……」」」
上手く脳内変換されなかったようだ。そのまま統二と二葉に案内され、高耶と俊哉は体育館へと向かった。
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