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秘伝賜ります  作者: 紫南
242/449

242 腹黒い大人もカッコいい

2021. 10. 14

三人に、先ずは状況を話す。すると、どうやらキルティスが何か思い出したらしい。


「そっかあ。アレかあ。うんうん。アレは、アレよお。ほら、ティア〜、そっちでアレしたやつ〜」


アレだアレだと、高耶には全く意味がわからない。だが、これにイスティアが手を叩いて理解を示した。


「ああっ、アレかっ。確かに、俺がこっちでアレしたやつだ!」


本気で何が何やらわからない。高耶は、隣に居るエルラントに、こそっと耳打ちする。


「……え、エルラントさん……」

「うん……もうね。二人は熟年夫婦並みの関係だから……なんであれで一緒にならないのか不思議だよ……落ち着くまで待とう」

「はい……」


いつだって会えば楽しそうに自分たちの研究の話で盛り上がり、共通の趣味の本を貸しあう。そんな関係。結婚した事実も話もないけれど、二人を知る者たちは、別居婚夫婦だと思っている。夫婦仲は良好だ。


話が付いたのか、悪魔と天使達が近付いてきた。


《そちらが応援の……おや。エルラント君に、イスティアとキルティスじゃないか》


クティは三人と面識があった。


「やっほー、クティっ。相変わらずのイケオジねえ」

《嬉しいことを言ってくれる。そういう君は、いつ見ても可憐だね》

「うふふっ。嬉しい! クティに言われると、自信が付くわっ」

《それはよかった》


悪魔は基本、嘘をつかない。真実も言わない場合もあるが、駆け引きがあるわけでもないので、これは本心だろう。だから嬉しいのだ。


《イスティアも相変わらず美しい》

「よせやい。俺は昔っからカッコいいを目指してんだぜ?」

《そろそろ諦めては?》

「諦めなさいよ、ティア」

「私もそう思うよ」

「エル、お前まで……」


そこで、イスティアは高耶を見つめた。


「……っ」


少し切なげにも見える様子で、眉を下げるイスティア。その姿は間違いなく、儚げで美しい。


答えを期待する一同。イスティア以外は、間違いなく面白がっている。なのでここは正直に言っておくことにした。


「……っ、俺は、綺麗なおじいちゃんだと、自慢したいですっ」

「っ、そ、そうか……自慢のじいちゃんか?」


ちょっと違うが、まあ『自慢のじいちゃん』でも間違いはない。


「はい……っ」

「おおっ、お前も自慢の孫だぜ!!」

「いっ!?」


ガバっと、イスティアに抱きつかれた。力加減の分からないのか、羽交い締め状態だ。別に高耶には抜け出せないことはないが、周りの天使までもがうんうんと頷き、生温かい目を向けているので、言葉通りお手上げ状態で落ち着くのを待つことにする。


その間に、エルラントさんが話を進めてくれた。


「それで、隔離できてしまえば、あなた方の方でどうにかできるということで良いのかな」

《ああ。なんとかしてみせる》

《こちらの問題でもありますもの。やらせていただきますわ》

「承知した。キルティス。どうするのが、一番効率がいいかな」


本当にエルラントに来てもらえて良かったと、高耶は内心感動していた。そんな視線に気付いたのか、エルラントがウィンクを返す。間違いなく、カッコいい大人だ。


「そうねえ……ここ、土地神はちゃんと居るのよね?」


この確認に、高耶は頷いて答える。


「はい」

「なら、高耶ちゃんには土地の保護の方に回ってもらうわ。土地神に力を貸す感じで干渉して。力加減間違えないでね」

「分かりました」


一人でやることになるはずだった五分の一の役割り。きちんと調整できるだろう。


「一応確認するけど、あの辺の子は使えないかな」


クスクス笑いながら、エルラントが視線で示したのは、結界の中で呆然と立ち尽くすだけの術者達だ。


「あの辺の子って……なに、あの子達」


キルティスに続き、ようやくゆっくり離れたイスティアも彼らに目を向ける。そして告げた。


「なんだあれ……視えるだけの一般人か」

「よね? 使えないなんてものじゃないじゃない?」


これは、きちんとエルラントが結界の中の者たちに伝えた。すると、ゆっくりと彼らは顔を青ざめさせていった。エルラントは狙っていたらしい。


カッコいい大人は、腹黒でもあった。





読んでくださりありがとうございます◎

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