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秘伝賜ります  作者: 紫南
241/449

241 とっておきの応援を呼びました

2021. 10. 7

本日二話目です

高耶はため息混じりで席を立つ。


「すみません、一分待ってください。応援を呼びます」


一人で倒れるのを覚悟してやるよりも、ここは常日頃から言われている『頼る』ということを選んだ。何より、確実性を取るべきだろうと判断する。


《う〜ん。いいよ。こちらも少し打ち合わせするから》

《無理はいけませんしね……構いませんわ》


少しばかり残念そうな様子を見せる二人。本気で倒れた高耶を拐うつもりだったらしい。それでも納得して、彼らはそれぞれ天使と悪魔で固まり、話し合いを始めた。


少しヒヤリとしたが、二人の許可が出たので、蓮次郎とレスターにも断りを入れる。


「三人、人を呼びます。さすがに手に余りますので」

「分かった」

「はい」


すぐに、この件で頼りにできそうな三人にメールを打った。内容は全部同じ。


三人目にメールを送信した時、一人目の返信が来た。二秒後に二人目、その一秒後に三人目の返信を受け取る。


「……兄さん……返信? 早くない?」

「ああ……大体いつも、秒で返ってくるんだ……すぐ来てくれるらしい」


返事が早いのはとっても助かる。だが、それなりに忙しい人もいるのだ。どうやって処理しているのか謎だった。


「それで応援って、誰を呼ぶんだい?」


蓮次郎が確認してくる。急ぐと思い、先程は追及しなかったが、今ならと思ったのだろう。


「エルラントさんと、イスティアさんと、キルティスさんです」

「「っ!!」」


蓮次郎とレスターは目を剥いた。


「っ、ちょっ、え、エルラント殿は分かるけどっ、い、イスティア様!? それにキルティスって……最古の魔女のキルティス・ファルムヴィア様かい!?」

「はい……」


まあ、驚くのも無理はないのかもしれない。特に魔術師のイスティアと魔女キルティスとは、現代で交流を持っている者はごく僅か。


二人とも既に伝説となっており、姿を見た者など、この何百年といないと言われているほどだ。


「『あ、あのお二人と交流が……さ、さすがタカヤ様です……』」


レスターも動揺し過ぎて日本語ではなくなっていた。


しかし、高耶にとって二人は、時折会いに行く田舎のおじいちゃんとおばあちゃんの感覚。見た目は未だ初老にも差し掛かっていないが、普段の様子や関係性は、まさに祖父母と孫だった。


「二人とも出不精で。たまに外に連れ出さないと、体に悪いんですよ。研究ばかりで、寝たい時に寝て、食べたい時に食べる生活で……悠々自適なスローライフとか言ってますけど、間違いなく不健康な生活をしてますから」


寿命の終わりが見えないのは不安なものだ。だから興味ある研究をして、気を紛らわせているということもある。友人や弟子を可愛がっても、自分より先に逝くと分かっているので、関係も薄くなる。


そうすると、本当に家から出なくなるのだ。


「最近は、こちらも忙しくてメールだけになってたんで、今回のはいい機会です」

「「……」」


そこで、何もない所に、唐突に豪華な白い扉が現れた。場所は、結界の外側だ。細工も美しい扉がゆっくりと開くと、そこから水色の可愛らしいワンピースを着た女性が駆け出してくる。そして、そのまま高耶へ両手を広げて抱きついた。


「高耶ちゃんっ」


ふわふわの茶金色の髪は肩に付かないギリギリの長さ。まん丸パッチリの大きな茶色の瞳。背の高さは百六十くらいだろうか。小柄で可愛らしい人。この人が最古の魔女のキルティスだ。


「高耶ちゃん、また大きくなったねっ。あっ、お小遣いあるよ! 貰って、貰って〜」

「いや……もうすぐ成人なんですけど……」

「え? 成人したらあげちゃいけないの? ねえ、ティア、おばあちゃんなら孫にお小遣い、何歳になってもあげるよね?」


抱き着いたまま、キルティスは後ろを振り向いて、扉をくぐって来た男性に問いかける。


「ああ、間違いねえよ。孫に小遣いは一生やるもんだ」

「だよねっ! あのね〜、あのね〜、ヨウちゃんに、折り紙の本を送ってもらったのっ。可愛い袋が出来たんだよっ。ほら、うさちゃんっ。それで、こっちはクマさんだよ! どっちもあげる!」


可愛く折ってある。折り紙サイズの紙ではなく、わざわざ切り出した用紙だろう。多分、折り紙の本にあった出来上がりサイズより三倍は大きい。


だが、それは仕方がない。多分、入らなかったのだ。入れたい金額が。


「……あの……」

「多くないよ?」

「でも……」

「ずっと会えなかったでしょ?」

「……ふ、二つは……」

「一つじゃ入りきらなかったからっ」

「……ありがとうございます……」

「うんっ」


断れなかった。


そして、こっちも来た。


「じゃあ、じいちゃんからも受け取れ」

「……はい……ありがとうございます」

「うむ」


ここで彼からのを断れば、『俺からのは受け取れないってえのか? あ?』とメンチを切られ、無理やりポケットに押し込まれるのは目に見えていた。


イスティアは、見た目四十前半。あり得ないほど綺麗な銀髪で、顔も小さく背も高い。間違いなく美形。なのに、言葉遣いはヤンチャなじいちゃん。中身と外見がチグハグ過ぎて、大抵の人は戸惑う。


普通に違う人が喋ったと思って、周りを見回す。これが稀代の大魔術師イスティアだ。


そんな二人と違い、見た目も中身も大人なのがエルラントだった。


「はははっ。二人とも、嬉しいのはよく分かるが、今回は仕事だよ。珍しくも彼の方から助けてくれと言われたんだ。頼りになる所を是非とも見せなくてはね」

「エルラントさん……」


なんだかほっとした。


読んでくださりありがとうございます◎

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