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秘伝賜ります  作者: 紫南
223/449

223 あちらとこちらの違い

2021. 6. 3

この場の誰もが聞き逃しはしなかった。しかし、その言葉の意味は理解出来なかったのだ。雛柏教授が確認する。


「自発的って言ったかな?」

「はい。だから、あちらのは嫌ですよね〜」

「……」


ジトっとした目で見られた。そんな軽く済まさないで欲しいという目だ。高耶も流す気満々だった。だが、無理なようだ。


「……蓮次郎さんが今、報告をしてますし、どこに居るかは、日本に入ってこればこちらで分かるので」

「今は分からねえってこと?」


俊哉の指摘に、こういうところは鋭いなと頷く。


「あっちでは、物の探査が難しいんだ。広い上に主張するものが多くて、一つを特定し辛い。特に悪魔系のものは、あちらには多いし、既に管理者がついている物でも、意図的に他のものの探査の邪魔をしたりするんだ」


とはいえ、最初からきちんと警戒して目を離さなければ、今回のように逃すこともなかった。堂々と人の目に触れていたのだから、擬態が上手くいっていると、あの鎧も思っていただろう。きっとバレないと油断していたはずだ。


「悪魔系のものは、騙すのが好きだから擬態が上手いというのもある」


はじめに発見された鎧は、怪しんだエルラントや高耶と蓮次郎の指摘により、油断している間に周りを上手く固められていた。


協会への移送も計画されて、順調に処理する為の準備が進められていたはずだった。しかし、恐らく下の者たちがやらかしたのだろう。協会に運び入れることが鎧についている悪魔にバレた。


協会の方にも油断があったのだ。見失えば、見つけることが困難なことだと分かっているはず。注意すべきところが不完全だった。


「こっちの妖ものと違って、悪魔は自我も持ってる。人に付け入るのも上手い。そういうのも使って、紛れるんだ。気配も変えて」

「それでなんで、日本に入ったら分かるんだ? あっ、数が違うからかっ」


俊哉の出した答えに、高耶は首を横に振る。


「いや。まあ、確かに数は違うから、見つけやすくはなる。土地神は異物として扱うし、悪魔達は格上の存在には敏感だから、避ける土地を予想していけば、進路も分かるだろうな。けど、それは対策の一つだ」


実際、経路予想が立てられるようにも対策はとってある。だが、一番の理由はそれではない。


「単純に、探し物の特定をする専門の部署があって、そこが優秀なんだよ」

「ん? あっちにはねえの?」


そんな単純なことかと少し拍子抜けしているようだ。それならば、なぜあちらは、それを強化しないのか気になるだろう。


「こっちの能力者は、一族で血や知識によって受け継いでいくんだが、あちらは違う。祓魔師(エクソシスト)は基本、師弟制なんだ。あちらの素質は血に頼るものじゃなく、環境とかの影響が大きいからな」


幼い頃に悪魔の影響を受けてしまったり、精霊達と知らず交流をしていたりする者が、その素質を開花させ、祓魔師(エクソシスト)になるのだ。


「だから、全てが一子相伝。技術も知識も、師弟の間でしか受け継がれない。そうなると、能力のバラつきも大きい上に、誰かと協力して研究したり、知識を合わせたりするのを嫌がるんだ」

「それ……よく協会でまとめられてるなあ」

「そこは一応、少ないが一族でまとまっている所がない訳でもないからな。そこを絶対のトップにしてる」


これを聞いて、雛柏教授が納得したように頷いた。


「ああ、なるほど。あちらの協会は王制で、こちらは議会制って違いかな」

「その認識で良いと思います。まあ、国柄というか、考え方がワンマンスタイルなので、誰かと協力するよりは、それを補う道具を使うのがあちらでは一般的ですね。求められた理由はどうあれ、その発明は誇れるものです」


ダウジングの道具などは、その代表的なものだ。いざという時は、それに頼ればいいからと考えるため、遅々として探索系の技術が向上しないのは問題だ。


「ふ〜ん。色々あるのな」


その一言で済まされるのはどうかと思うが、この手の話を統二達にしても、それくらいの感想しか出てこないだろう。


こちらの者が何を言っても、長年続けてきた慣習のような考え方の違いは、どうにもできないものなのだから。


「そうだな……」


そうして、高耶は逸見と大和が特定した場所と持ち主のリストを確認しながら、タブレットに表示した地図で確認していく。


俊哉が出力した資料に必要な情報を書き込み、まとめていった。それを俊哉がさり気なく照合した資料と合わせたりと、手伝いつつ、まだ気になっていたことを口にした。


「そういや、自発的にって、取り憑いてくんの? 鎧着たやつが飛行機や船から降りてくるってこと? 見りゃ分かるじゃん」

「それ、乗れないだろ……ちゃんと荷物としてだろ。意識させずに運ばせるんだよ」

「え〜、だって、この鎧だぜ? めっちゃ嵩張るじゃん」

「そうだな……」


協会への移送中に消えたのだ。きっちり梱包はされている。とはいえ、鎧一つ分だ。確かに大きな荷物になる。


そこまで考えて、高耶は確認のメールをエルラントへ打つ。


「もしかして、わざわざ分けたんじゃ……」


梱包の時に、エルラントや高耶の情報から、バラして金と銀に分けているかもしれない。


そうなると、嫌な予感がする。


「……金と銀……【瑠璃】」

《はい。高耶さん》


ふわりと、高耶の目を向けた場所に現れた瑠璃は、大和と出会った時にデパートで身に付けた服装のままだった。翼は出していない。


瑠璃の美しさに見惚れてしまった一同をよそに、高耶は彼女へ尋ねる。


「あの金の鎧……瑠璃は悪魔の力を感じたんだよな?」

《ええ。間違いありません》


ならばと、実物はないが、銀の方の鎧の写真を見せた。


「こっちも悪魔だと思うか?」

《っ、その色……その銀白色は……天使の力によって染まったものだと思われます》

「悪魔と天使の鎧……」


高耶は、嫌な予感が当たりそうだと顔を顰めた。



読んでくださりありがとうございます◎

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