表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秘伝賜ります  作者: 紫南
181/456

181 混じり合ったもの

2020. 8. 13

当然だが、万全の体制で挑むため、作戦は立てた。


高耶も、全ての式を手元に喚び出していた。この間、優希は瑶迦の所に居てくれる。というか、普通に友達とお泊まり会を開催しているらしい。お母さん方も一緒なので大丈夫だろう。


日が高くなる前。それは始まった。


庭に特大の結界を張り、霊穴からの影響を受けないように何重にもした。とはいえ、広さ的には体育館くらいだろうか。高さもそれくらい取っている。


あとは、どうこの場に鬼を連れてくるかだった。それは、高耶がなんとかすると伝えていたのだ。


「高坊、どないするん? 家、壊さんでええように考えるぅゆうたけど」


焔泉も、建物を壊さずにというのは無理だと思っている。普通はそうだろう。鬼の方も、蓋をしている部分を壊して出てくるはずだ。だが、それをやるとエリーゼにもダメージがいってしまう。何より、改装工事をするとはいっても他人の家だ。壊さずに済むならそうしたい。


「これくらいの距離なら……常盤、黒艶頼む」

《お任せを》

《承知した》


常盤と黒艶が姿を消す。その場から光るボールと黒いボールが打ち上がり、家にストンと落ちていく。まるでスーパーボールの様。だが、屋根に跳ね返ることなく、それは消えた。


そして、次に見えたのはそのボールにくるくると周りを回転されながら飛んで来た大きなもの。


それが庭に張られた結界をすり抜けて中に落ちた。


ボールになっていた常盤と黒艶が高耶のまえに戻ってくる。


《完了しました》

《有無を言わさずにな》

「よくやってくれた。常盤はアレが居た場所の浄化を頼む。黒艶は中の調査を」

《すぐに戻ります》

《じっくり確認してくる》


二人は正反対の言葉を返し、再び姿を消した。


「ど、どないしたら、こんなことができるん?」

「裏技です」

「光と闇やろ?」

「時と空間です」

「……分かった。裏技やな」

「そうです」


詳しく聞くのを諦めたらしい。高耶としては、焔泉や達喜達には、話しても問題ないと思っているが、この情報は今要らないようだ。


そんな中でも、高耶は警戒していた。黒い繭のようだったそれが(うごめ)き出す。


「気色悪いですね……それに顔……二つあります……」


いつもは飄々(ひょうひょう)としている蓮次郎も二つの存在が混ざったような、そんな気持ちの悪いものに眉をひそめていた。


「家守りが……あんな姿に……」


源龍が絶句する。女の顔は醜くただれ、体はひしゃげて居いるように見える。そして、存在がとても希薄だ。それでも存在しているのは、取り込もうとするもののお陰だろう。


「あれが……鬼……っ」


まるで、ひしゃげた女の体を毛皮のようにして身に纏わり付かせ、立ち上がったのは可愛らしい小さな子ども。その子どもの額には、小さなツノが見てとれる。


《……おマエら……術者か……聖結界……はっ、俺がこんなものに阻まれると思ぉてか》


次第に言葉も堪能になっていく。鬼の声は、どこから響いているのか全く分からない。式達とも違う声音だ。聞き惚れてしまうような、そんな力があった。


高耶以外、聞いたことのないその不思議な声に、一同が少し惚けていると、鬼は術を使って結界を消し飛ばそうとしていた。


「させるか」


いち早く気付いた高耶が、その術を打ち消す。


《ほぉ……これで合ってはいるようだな》

「ちっ」


舌打ちして、高耶は結界の中に入る。黒い炎を警戒していたのだが、出してきたのは黒い氷だった。ほんの小さな一塊。それが鬼の手の上に現れる。そこから、凄まじい冷気が感じられた。


その間に割り込んだのは、清晶だった。


《主様。アレは、霊界の底にある黒氷石だよ。あまり冷気も吸わないで。肺が凍るよ》

《ならば、私がそばに居ります》


天柳が焔を纏った。


空気が少し柔らかくなる。その間、高耶はじっと鬼を観察しながら考えていた。結界を破ろうとした術。それは高耶達の使う陰陽術だった。


「こいつ……こちらの知識を持っているのか」

「っ、芦屋のか!」


焔泉が驚愕する声が響いた。




読んでくださりありがとうございます◎

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ