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秘伝賜ります  作者: 紫南
164/448

164 お灸を一つ

2020. 4. 16

綺翔が前足で押さえ込んでいるモノ。それを高耶と源龍は冷静に床に屈みこんで確認した。


「エリザベスとか」

「マリーもあるんじゃない?」


冷静に観察した結果、出たのがそれだった。


しかし、ソレがジタバタと激しく手足を動かしながら叫ぶ。


《エリーゼ!》

「「そっちかあ〜……」」


高耶も源龍も頭に手を置いて悔しがる。


「え、えっと……何が起こっているんだい?」


陽が恐る恐る問いかけてくる。振り向くと、三人でソファに隠れるようにして固まっていた。


「あ、視えるようにしますね」


綺翔が何をしているのか分かれば、多少は落ち着いてくれるだろう。


そうして、部屋に術をかける。


「……なるほど。エリザベスだね」

「確かにマリーもありそうです」

「う〜ん。僕としてはフランソワーズとか」


目にしたのは、フランス人形。それがジタバタしている。あまりにもあり得ない光景過ぎたのだろう。普通に冷静になったようだ。


「……エリーゼらしいです」

「「「そっちかぁ!」」」


冷静だ。


「綺翔、あまり乱暴はしないように」


そう注意すると、綺翔は人化して立ち上がる。その手にはフランス人形に見えるソレを掴んだままだ。


《……主様の邪魔……してた》

《っ、っ、う、んっ、離してぇやっ》


ジタバタともがくソレだが、綺翔の手はびくともしない。綺翔の金に光る目が冷たい視線を射る。


《……潰す……よ》

《っ……》


ピタリと動きが止まった。人形にしか見えないのに、顔色が一気に悪くなった。


《た、助け……》

《主様に……媚びを売るな》

《すんまへん!》

「ん?」


ちょっと訛っているように聞こえた。


《う、うちかて、好きで邪魔しとんとちゃうっ。邪魔すんのが仕事やねんっ。うちは悪うないっ》

「……訛ってますね」

「本当だね……あっちの方に居たのかな。あの見た目でコレは……違和感すごいね」


金髪の巻き毛。赤を基調としたひらひらとしたドレス。バッチバチのまつ毛に青い瞳。それが関西弁。驚くだろう。


《それ偏見やん! ゴスロリで何が悪いねん!》

「あ、自覚あったんだね」

《うっ……やって……他と一緒やと面白ないて……さっちんが言ってん……やで、勉強したんよ……》


関西弁は努力の結果らしい。


「さっちんってのは?」

《……主様の質問……答える》

《い、いややっ! こないなクールビューティを使役しとるんリア充なんて許されへんねん!》

《……主様……黒を呼ぶ……上下関係……教えるべき》

「ああ、闇の子か。なら、ちょっと休憩する間頼むか」

《っ!?》


高耶が召喚のために一気に力を溜めたことに気付いたらしい。自称エリーゼはぶらんと四肢の力を唐突に抜いて口をポカンと開けた。ちょっと気持ち悪い。


「【黒艶】」


喚び出した黒艶は、なぜかタイトドレスだった。


「っ!?」


陽達が息を呑むのが分かった。高耶だってびっくりだ。


「……なんでその格好なんだ……」

《む? 主殿が男ばかりで仕事と聞いたのでな。どうだ。花を添えてやったのだぞ?》


迫ってくる黒艶。だが、その高耶との間に綺翔が入り込む。黒艶の胸にぶち当たっていたが、綺翔の表情は変わらない。


《……その邪魔なの退けるといい》

《綺翔……前々から我の胸を邪魔にするのはどうかと思っていたが……羨ましい……わけではなさそうだな。本気で邪魔か!? せっかくの女体なのだぞ? 主殿を喜ばせ……っ》

《削り取る?》

《……その本気の目を止めんか……分かった。これでどうだ?》


最近の普段着となった黒艶に、綺翔は頷くこともせずに手で掴んだままになっているエリーゼを突き出す。


《む? 家守りか?》

《主様の邪魔をする……主様をリア充と……潰したい》


潰したいと聞いて、黒艶は高耶の表情を確認する。呆れたように首を振ったのを見て察する。


《うむ。よく分からんが……理解した。ちょっと聞き分けよくすれば良いのだな?》

《ん……すり潰す》

《っ!?》

《分かった分かった。少し預かるぞ》


黒艶がむんずと掴み受けて玄関の方へ向かった。家守りであるエリーゼは、簡単には家を出られないので、そこは考えてくれるだろう。黒艶はふざけるのも好きだが、きちんと意図を察してくれる。


「とりあえず……休憩しようか。いっぱいいっぱいみたいだしね」

「ですね……」


源龍の提案に頷く。そして、目が合った修が同意して立ち上がった。


「お茶をしようっ。その時に……あの人形についても教えてもらえるかな」

「はい」


その後、全員がソファに腰掛けてようやく息をつくのだった。



読んでくださりありがとうございます◎

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