表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秘伝賜ります  作者: 紫南
146/448

146 好かれすぎて困る

2019. 12. 12

週末。土曜の午後だ。


仕事に出かけようとしていた高耶は、丁度遊びに来た美奈深と由香理親子と出くわした。


「あれ? 高耶君、お仕事?」

「今時の子なのに土曜日も忙しいの?」


ラフな服装だが、前髪も上げているし、これは仕事仕様だなと二人ももう分かっていた。


「ああ、美奈深さん、由香理さん。はい。これから道場です」

「だからその荷物?」

「え〜。お夕飯、一緒にできそう? いつ帰るの?」

「そうですね……振り切って……七時半頃なら」

「「いいわよ!」」


とっても嬉しそうだ。


「その時に旦那達は紹介するわね」


そう。美奈深達の後ろには、男性が二人いた。こちらを凄く見ているが、後でと言っているので軽く会釈だけしておく。相手側は、勢いよく頭を下げていた。


「分かりました。では、失礼します」

「「「「いってらっしゃ〜い」」」」

「いってきます」


親娘に見送られて、高耶は仕事に向かった。


稽古だからと張り切っている充雪を引き連れて行く。なんだか、こういうのも久し振りだ。


《今日の稽古はアレだろ? ジンとか上の奴らだよな? 気合い入りそうだ》

「おう。そんで、七時十五分までで終わらせる」

《振り切るとか言ってたな。ガンバレ》

「……」


警察にいる連盟の協力者である、三先迅をはじめとする、秘伝の仕事をよく知る者たちが集まる月一の合同稽古の日なのだ。


平均年齢は五十三歳。とはいえ、若い人もそれなりにいる。一番上は八十だ。


《あいつらみんな、お前のこと大好きだもんなっ》

「……」

《アレだ、アレ。ふぁんクラブってやつだろ? あ〜、けど、キャッキャしねえな。真面目だもんな》

「きちんと稽古はするから文句言えねえんだよ……」

《だよな〜》


高耶が大好きで、尊敬していて、憧れている者ばかりだ。因みに全員男。稽古をしてくれるというのも嬉しくて、そんな高耶が好きな者たちばかりで楽しいという者達しかいない。


けれど、真面目に稽古をする姿勢は本物なので、やめようとは言えないのだ。


《まあ、あれだ。弟子に好かれるってのはいいことだぞ》

「限度はある……」


そんな少々気の重い稽古を無事終えたのは、七時だ。本来の終了時間なので早いとは言えない。むしろ、戦いはここからだ。


「いいじゃん。ご飯行こうよ!」

「これから約束があるんだよ」

「そんな! いっつもご飯の約束逃げるじゃん」

「お前のタイミングが悪いんだろうな。縁がないのかも」

「マジかっ。いやだよっ。縁結ぼうよ! 結んでよ!」

(ゲン)さ〜ん。こいつ回収してください」

「やだよっ。高耶君も一緒がいい!」


子どもだ。子どもがいる。


「おうおう。毎度毎度、お前は高坊に迷惑ばっかかけやがって」

「迷惑じゃないしっ。みんなの言葉を代弁してるんだしっ」

「おい、そこ。頷くな。高坊に嫌われっぞ」

「えっ、あっ、そんな否定しないでっ。一緒に高耶君を落とそうよっ」


仲間はいなかったらしい。


「元さん。この埋め合わせは必ず」

「おう。待ってるぞ」

「なに?! その雰囲気、羨ましいすぎなんだけど!」

「お前はちょい黙れや。ほれ、同好会で食事だろ?」

「また高耶君抜き……」

「それでも良いから同好会だろうが」

「む〜、高耶君! 今度ランチ! 絶対ね!」


同好会というのは怖くて内容を聞けないでいる。知らないままがいい気がするのだ。


回収されていく迅を見送り、高耶は急いでシャワーを浴びて着替える。急いで夕食へと駆け出した時にそのメールは届いた。


「陽さんか」


それは、稲船陽からのお祓いの依頼だった。


読んでくださりありがとうございます◎

次回、19日です。

よろしくお願いします◎

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ