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秘伝賜ります  作者: 紫南
132/455

132 何を賭けてますか?

2019. 9. 30

夕方になり、それぞれ自由な時間を楽しんでいた一同が部屋に集まってくる。


高耶がプールを満喫した美奈深と由香理を伴って部屋へ戻ってきた時、部屋には源龍と時島、父の樹と、なぜか黒艶とでカードゲームをしていた。


《どうだ? これで再び我がリーチだ》

「まだまだ分かりませんよ」

《先生は中々、諦めが悪い》

「何事も諦めずに最後までというのを教えている身ですのでね」


時島が真剣な表情でカードを睨んでいる。


「そうですよねっ。諦めてはいけませんっ。勝負は手を抜かないのが礼儀ですし」

《樹は熱くなり過ぎて周りが見えなくなるタイプだがな。ほれ、早い所覚悟を決めて差し出せ》

「そ、そんなことは……な、ないです……ちょっ、ちょっと待って〜」


樹は明らかに動揺していた。真っ直ぐな気質の彼は黒艶の揺さぶりに弱い。


「あ〜、樹さん。落ち着いて。まだまだ挽回のチャンスはあるんですから。一度落ち着きましょう」

《ふんっ。さすがは当主だな。自身のことより全体を見るか……だが、良いのか? このままではまた負けるぞ》

「私達はもうチーム戦ですからね。黒艶殿を勝たせなければ良いんです」


朗らかに笑いながら源龍は冷静に対応していた。


そして、これで美奈深と由香理は気づいた。


「えっと……まさかのババ抜き?」

「良い大人三人と黒艶さんで?」

「「「じじ抜き!」」」

「「……ごめんなさい……」」


凄い勢いで訂正が入った。


「いやあ、最初はポーカーだったんだけどね〜」

「黒艶さんが圧倒的で、どこのギャンブラーかと……」

《ふははっ、伊達に本場で遊んでおらんわ。それも樹はポーカーフェイスができんしなっ》

「いやあ〜……うぅっ……」


ポーカーは黒艶の一人勝ち。これでは面白くない。ならば大貧民となったのだが、これがまた革命ばかりで訳がわからなくなり、黒艶の一人勝ち。


そして、ババ抜きとなるとまた樹が顔に出てしまうし、黒艶は微細な表情を読み取る。これにより、時島や源龍も敵わず、最終的にじじ抜きになったらしい。


「因みにこのじじ抜きは何戦目?」


美奈深が尋ねると一瞬考え込んだ一同はカードから目を離すことなく告げた。


「「「《八戦目》」」」

「ず、ずっとやってたんですか?」


その前にポーカーとかをやっていたなら、ほとんどこの部屋から動いていないのではないかと呆れた。しかし、どうやら息抜きはしていたらしい。


「いやいや。じじ抜き戦になる前に大浴場でゆっくりしてきたよ」


そう言われてみれば、服装が変わっている。ホテルで用意されたラフなシャツとズボンだ。因みに高耶と美奈深、由香理もそれに着替えている。


「凄い風呂だったよ。蔦枝も入って来たか?」

「ええ。軽く温まってきました」

「そういえば、お姉さん達とプール行ってたんだよね。楽しかったかい?」

「それは……はい……」

「「めちゃくちゃ楽しんだわっ。ね〜」」

「はい……」


両腕を取られるのも、慣れて来てしまっていた。


「そういえば、子ども達は結局来なかったわね。ハクさんと一緒かな?」

「任せちゃったわね〜」


美奈深も由香理も珀豪が任せろと言ったので、そのまま甘えてしまった。とはいえ、途中で子ども達もプールに来るかなと思っていたのだ。


《三人娘ならば、珀豪と丘の上のユウキの勉強部屋だ。そろそろ戻ってくるぞ》

「あそこか……」


珀豪ならば、暗くなる前にはきっちり子ども達をここへ連れてくる。問題はない。


《男児三人ももうすぐだ。瑶姫達三人は今大浴場だな》

「そうそう。入れ違ったよ」

「お城を見て来たって言ってたわね〜」


瑶迦と美咲、校長の那津は天柳と山にある城を見学に行っていたらしい。


「それじゃあ、そろそろ、こちらも本気で勝負つけないとね」

「負けるわけにはいかんからな」

「大丈夫、大丈夫……どれがどれかわからないからねっ」

《ふっふっふっ……良い勝負だ。だが負けんぞ! 今日こそ主殿を籠絡してくれる!》

「は?」


何の勝負だと高耶は首を傾げる。


「高耶君を別室に連れ込ませはしないよ」

「小さい子ども達もいるし、一人異様に興奮しそうなのもいるからな」

「高耶君の貞操は父である僕が守るよ!」

「……はい……?」


ちょっと意味がわからない。


《無駄な足掻きよ。我が本気になれば……むっ……これはっ……》

「上がりだ」


時島が抜ける。


「逆転だね」


源龍が抜けた。


「な、南無三っ……っ、や、やったっ!!」


樹が上がった。思わず立ち上がって飛び上がるくらいの喜びようだ。


《な、なんだと……っ……くっ、侮ったか……》


黒艶が負けた。


「ねぇ、これって、高耶君のための戦いだったの?」

「なんかもう、ちょっと羨ましいくらいの熱戦だったね」

「……」


意味がわからない。だが、良い勝負だったと思う。高耶もちょっと混ざりたくなったというのは秘密だ。


「あれ? なに、この異様なやりきった系の空気」


そこに、俊哉達が帰ってきた。その後ろには優希達もいる。


「あれ? おとうさんたち……トランプやってたの?」


このタイミングで良かったと心底思った。


「あ、なあ、高耶。今さあ、雪降って来てんだよ。すげえよな〜。この世界、夜には雪降るんだ?」

「は? いや、雪? この辺は夏に近い気候のはずだが?」

「なにそれ、場所ってこと? なら、なんで雪降ってんの?」


瑶迦がそうしたのだろうかと外を確認する。だが、雪の降り方を見て察した。


「これ……まさか……」

「あらあら〜。言い忘れてたわ〜」


そこに瑶迦が美咲達とやってきた。彼女は口元に手を当ててしまったなという顔をしていた。


「瑶迦さん……由姫ゆきを入れたんですか?」

「うふふ……そうなの……ちょっと前に家出してきて……あの大氷晶宮殿で花嫁修行するんですって」

「いや……あいつ男ですよ……? あと、家出して来たら追い返してくれって言われてますよね?」

「そんな小さいこと、気にしちゃダメよ♪」


とにかく、この雪はそいつのせいだった。


読んでくださりありがとうございます◎

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