第4話:演技
私は憧れの人、山平先輩を助けるため、ガブに乗り、鎧の男達を追いかけた。
鎧の男達についていき、40分後、男達は建物の中に入って行った。
どうやらここが詰所らしい。
(看板に書いてた。)
ここから先はガブを連れていくわけにはいかないから、詰所から少し離れた場所で、
私はガブに言った。
「ここで待ってて。」
と。
いよいよ潜入開始。
はたして上手くいくか・・・・。
あ〜〜。やばっ。緊張してきた。
まずは・・・兵士になりすますために、鎧を手に入れなくてはならない。
建物の中に誰にも見つからないように入る私。
汗の匂いかなんなのか、男臭がすごい。
鼻をつまむ私。
入口近くの部屋を探索中。
早速、鎧発見!
誰かに見つからないように着替える私。
くっさ!・・・重!
鎧のあまりの重さに、私の肩はへしゃげるのではないかと思った。
歩くのも・・・・辛!
「おい。」
ビクッ
後ろから男に
声をかけられた。
「誰だ、お前・・・見た事ない顔だな。」
と、ごつい、でかい男に言われた。
冷や汗をかく私。
失敗したらその時はその時だ!!
いくよ!私!!
演技、開始。
私は背筋を伸ばし、男の低い声で堂々と話した。
「私の名前はナト-コーミ。南駐屯所より派遣されて来た者です。挨拶が遅れて申し訳ございません。」
口からでまかせを言う私。そもそもちゅうとんじょってなんだっけ?合ってる?とか思いつつしゃべった。
「ほう・・・、南から・・・・・。」
「はい。助っ人としてやって参りました。」
「助っ人か・・・・。にしてはずいぶん弱そうだな。
細いし、小柄だし、鎧がブカブカで合ってない。
まるで・・・・
女みたいだ。」
ギックゥ!
いきなり女だってバレた?
ヤバい。
どうやってこのピンチを切り抜けよう?
少しづつ私に近づいてくるごつい男。
どうする・・・・・?私には力がないし、相手を言いくるめられるほどの話術もない。
でも・・・・・。
「・・・私が役に立つ証拠に、剣の腕を見てはいただけないでしょうか。」
「なるほど・・・。いいだろう。
見せてもらおうか。」
「兵士長、会議が始まります。」
下っ腹っぽい男がごつい男に話しかけた。
あ、この人兵士長なんだ。
今、知った。
「用事ができた。後で行く。
先に始めていてくれ。」
「かしこまりました。」
頭を下げ、
部屋を出ていく下っ腹っぽい兵士。
「ここでは剣を振るえまい。場所を移ろう。」
詰所の中の広い、誰もいない部屋に移動した。
「では、見せてもらおうか。
剣の腕前を。」
スラッ
鞘から剣を抜く私。
現実世界で、剣で斬り合う舞台をやった事があり、そこで学んだ型を見せる。
「ほう・・・。」
私の美しい剣さばきを見て、感心してる(たぶん)兵士長。
「お手合わせ願おう。」
と、剣を構える兵士長。
ヌラッ
と不気味に光る兵士長の剣。
それにでかい。
すごい迫力。
私のはしょせん演技だから、このままでは
弱っちいのがバレる。
「来い。」
え---い!!どうにでもなれ!!
やけくそで私は兵士長に向かって行った。
「ムッ」
素早く兵士長の右下から後ろにまわりこみ、
攻撃した。
ガキィィン!!
もちろん、私の剣は止められた。
兵士長の剣、おっも!
私はすぐに離れ、今度は左から・・・。
私は素早さには自信がある。
(・・・といっても、ガブほど速くはないけども。)
弱いのを素早さでごまかそうと思ったわけだ。
鎧の重さは最初よりは慣れた。重いのには変わりはないが。
私が一方的に攻撃を続ける。
すべて兵士長の剣で受け止められるか、
よけられる。
兵士長は攻撃して来ない。
『くそぅ!一回も当たらないなんて・・・。
めっちゃ動いてるのに、私。』
息が荒くなる私。
兵士長は全くゼーゼー言ってない。
『クッソーー!!!』
ガキィィン!!
また(剣を剣で)止められた。
「・・・・お前の実力はわかった。
その華奢な体で、戦場で役に立つわけないと思っていたが、少しは役に立ちそうだということはわかった。」
「いいだろう。信じよう。」
『やったーーー!!!』
私のハッタリが成功した。
「ただ・・・・・。」
『ただ?』
「南駐屯所など、この町にはないがな。」
ゲゲーー!!って思う私。
「嘘つきだが悪いやつではないのは見てればわかる。なにか事情があるようだが、これ以上は聞かぬ。」
「・・・・では、他の兵士と共に、大広間で待機していてくれ。」
そう言い残し、兵士長は部屋から出ていった。
ひとまずうまくいった・・・・・?
しかし、まだ肝心の山平さんを
この詰所で見つけてない。
会議が終わる前に・・・・、
急ごう。
駆け足で大広間に向かう私。
大広間に入った。
そこにはたくさんの鎧を着た男達がいて、
私が来たとたん、すごいジロジロ見られた。
チビで弱そうで、鎧のサイズ合ってないし、知らない奴だから
そりゃあ見られるか・・・。
女だとバレる前に、山平さんを捜そう。
キョロキョロしながら部屋の中を歩きまわる私。
いた。
山平先輩は一人、みんなから離れた場所にいた。
立って、テーブルの上で飲み物を飲んでる。
「こんにちは。」
私から話しかけた。
「ん?・・・あぁ。
こんにちは。」
「山平さんもこの世界に来てたんですね。
私、山平さんを最初に見つけた時、ビックリしちゃいました。」
と、
女の子っぽく言う私。
次の瞬間、山平さんから
衝撃の言葉が。
「山平?
誰それ。
おれの名前は
ローディン-クリストファー
だけど?」
ええぇ!!?
まさかの人違い?
読んで頂きありがとうございます。
まだ続きます。