表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私達、異世界の村と合併します!!  作者: NaTa音
第二章 さよならの夏編
69/84

第六十五話 始動『ノカノミクス』③

明けましておめでとうございます! 初投稿です。


「――いや、それにしても……すごい面子が揃ってますね」


 村長室の応接セットが四人がけだったので、ネリーは私の膝の上に座りながら興奮気味にいう。

 こういうときの彼女はいわゆる『ジャーナリスト魂が騒いでいる』状態らしい。


「『ヨグ=ソトースの銀の魔女』であるヤサカ カシンさんを始め、今年の一級魔導師のノカさん、縁メンバーで元王国憲兵隊長のシラナミ=カイジョーさん、そして、大戦の英雄『黒き牙獣のベルリオーズ』の名で知られるカルルス=ベルリオーズさん――――こうして集まって座ってるだけでも凄いスクープですよ!」


 いつになく興奮状態のネリーは私の膝をバシバシ叩きながらカバンからメモとカメラを取り出して、取材の準備をする。

 ベリー村長がネリーの取り出したものを見るなり、少し慌てた様子で手を突き出して、カバンに戻すように促す。


「すみません、そういうのは……」

「あっ、はい。大丈夫ですよ、ノカさんから話はうかがっています。ベルリオーズさんとカシンさんの写真は一枚も撮らない、という約束でここに来てますから」

「乃香村長が?」


 ネリーの言葉にベリー村長の目つきが微かに鋭くなり、隣に座っていた私を横目で睨むように見つめる。

 どういうことか説明しろ、彼の視線には言葉にはしない憤慨と説明の要求が乗せられていた。

 

「ごめんなさい、もっと早く言うべきでした」

「はじめから言ってくれれば、僕だって許可くらいだしましたよ。乃香村長、村のためにノカノミクスを進めていただくのは結構ですが、何の報告もなく一人で事を進められては困ります。いいですか? あなた一人の村ではないのです。僕とあなた、そして、皆さんの村なのです。次回からはきちんと報告、連絡、相談をしてください」

「…………はい、すいませんでした」

 

 言い訳の余地なく、ど正論を突き付けられた私は首を垂れて謝罪する。

 たしかに、私は修行を終え、世界一の魔導師になったことで自分に自信がついていた。それで、私はできる、と自分の実力を過信して今回のような、事態を引き起こしてしまった。

 ようするに、自惚れていたのである。私は深く反省するとともに、このようなことを今後、起こさないようにしっかりと決意を固める。


「さて、これ以上のお説教は勲さんにお任せするとして、本題に入りましょう」

「あの、任せないください。反省してるんで、勲おじいちゃんだけは……ご勘弁を!」

「ふふふッ……世界一の魔導師もこの村では形無しですね」


 慌てる私をネリーが膝の上からカメラを構えてからかう。

 うるさい、と静かに反論する。世界一になろうと、宇宙一になろうと怖いものは怖いのだ。


「それで、僕達四人と彼女がなぜここにいるのか、そしてこれから何をするのか説明をお願いします。今度は、隠し事はナシですよ?」

「分かりました。では、これよりノカノミクス、その第二の施策についてお話します――――」


 私は膝の上にいたネリーを抱きかかえ立ち上がり、自分の座っていた場所に彼女を座らせる。

 そして、応接セットの周りを囲むように歩きながら説明を始める。


「第二の施策の目的は“安定した電力の確保”です。つまり、この村に新しい発電システムを導入するのです」

「発電ですか? でも、この村には太陽の光と風の力で発電できる装置があるでしょう」

「そのとおり。ですが、太陽光も風力もその日の天候によって発電量が安定しません。それでは困るのです。そこにある“アカガネノカギ”がありますよね?」

「このデカブツのことだろ? 普通、ここに置くかよ。部屋が狭くて仕方ねぇ」


 カシンさんがアカガネノカギの転移門を指さしていちゃもんをつける。

 部屋が狭いのは認めるが、彼女のいるバー『銀の鍵』の店内のほうがよっぽど狭い気する――という反論がでかかったが、言えば面倒なことになるので喉元で言葉を押し殺す。

 

 しかし、この転移門を村長室に置いてあるのには理由がある。

 現在、アカガネノカギを起動させるには村の電力だけでは足りないので、私が精製した魔法石を補助電源にしている。

 この村長室は私の魔法使いとしての工房にもなっているので、ここで魔法石を精製すればすぐに使えるというわけだ。

 それに、他の場所に置いたら間違いなく苦情がくるので、ここにしか置けないというのも理由の一つだ。


「このアカガネノカギなんですが、消費する電力が膨大でして……この前、シラナミさんをこの村に呼んだとき村が停電したんです」

「あぁ、そういえば、絵美さんが愚痴を溢していました。ドライヤー? が使えなくなったとかなんとか」

「その話なら、私も聞いた」

「あの人、誰にでも言うなぁ……。ま、まぁ、とにかく、これの消費電力は村の電気と私の魔法石を使ってなんとか起動できる状態です。これでは、他の都市と交易するたびに停電です。それではいけないので、今回、この村に新しい発電システムを導入することにしました」


 なるほどぉ……、とネリーが唸りながらメモを取る。

 そんな彼女に私は「しっかり頼むよ」とウインクして応援する。今回の施策のことを彼女の記事を使って大々的に世間に知ってもらうのだ。

 彼女をこの村に招いたのは、そのためだ。

 予定では全ての作業が完了してからこの村に来てもらうはずだったが、カシンさんの(余計な)計らいでかなり早くに来てもらうことになった。

 しかし、面白い記事になりそう、と言っているネリーをみれば、これは嬉しい誤算である。


「新しい発電システムとはどんなものですか?」


 メモ帳を開いたまま、ネリーはペンを片手に尋ねる。

 さきほどまでの可愛らしい印象から打って変わって、仕事モードに入った彼女の顔は凛々しくみえる。

 この状態になった彼女には冗談も勿体ぶった話も通用しなくなるので、まずは彼女が欲している『答え』を発表する。


「地下に走る龍脈の魔力を電気エネルギーに変換する発電方式、いわゆる『地脈発電』です」

「龍脈……たしか、自然界に存在する魔力の流れ、でしたよね。ノカさんの使う魔法も龍脈から魔力を引き出してるっていう――」

「そのとおり! それで、私、思ったんです。魔法使いが龍脈の魔力を電気に変換できるなら、その原理を応用して発電設備にできないかなぁ〜って!」

「魔法使いである貴公らしい発想だな。しかし、なんと大胆な……」

「そうですね。おそらく、龍脈を使った発電設備なんて史上初の試みになるでしょう。これは、歴史的なスクープの予感……ッ!」


 ネリーとシラナミさんが興奮気味に食いつく。

 この発電方式が確立すれば、カルルス=げんき村のエネルギー問題を解決するだろう。

 そうすれば、アカガネノカギを安定して運用でき、この村をさらに発展させることができる。

 

「ですが、龍脈の魔力は強大です。訓練を積んだ魔法使いや精霊魔術師だからこそコントロールできるもの、機械にそのような繊細な操作ができるとは思えません」


 自ら精霊と契約し、龍脈の魔力を操ることのできるベリー村長が難色を浮かべる。

 しかし、たしかに彼の言うことも一理ある。


 龍脈の魔力は一定ではなく、生き物のように常に変動しているため、魔法使いや精霊と契約した魔術師はその魔力の変化に合わせて柔軟にコントロールする必要がある。

 暴走させてしまえば最悪の場合、死に至るほど危険な存在であり、機械でのコントロールは大きな危険を伴う。

 まして、発電設備のような規模が大きな物でそうなった場合の被害は想像もできない。


「たしかに、ベリー村長の言うとおりです。龍脈の魔力をコントロールするのはとても難しい。では、コントロール(・・・・・・)しやすい形に(・・・・・・)すればいいんです(・・・・・・・)

「どういうことです?」

「私の魔法からヒントを得ました。私の魔法『千変万化の魔法の煙(プレイ・ガール)』は龍脈から引き出した魔力をナノサイズの小さな小さな魔法石に変えるものです。暴走しやすい龍脈の魔力も結晶化して“魔法石”という形にすれば安定します」

「なるほど、たしかに魔法石なら安定もする。機械での操作もしやすい、というわけですね」


 ベリー村長は、なるほど、考えましたねと感心しながら頷く。

 彼の機械への不信さは、やはり、この世界の機械文明は私のいた世界に比べて大きく遅れているようだ。

 一級魔導師試験のときに訪れた『ルインズ』という都市もガス灯があるくらいで電気を活用した機会は見受けられなかった。


 私のいた世界じゃ、こんな精密なことぜーんぶ機械任せなのになぁ〜。


「つまり、龍脈の魔力を魔法石にした後、電気に変換する方式なのですね」

「はい、龍脈の魔力を魔法石にする装置、その魔法石を電気エネルギーに変換する装置はすでに私達で開発済みで、実証実験も終えています」

「わかりました。では、今回の件も乃香村長にお任せしても大丈夫そうですね」


 納得がいったベリー村長は固い表情を解いて、いつものほんわかした笑顔に戻る。


 ――――真面目な顔もいいけど、やっぱりこの人は笑顔がよく似合うなぁ。


 そんなことを何気なく考えてしまった私の頬と耳が途端に熱くなる。 

 な、何を動揺してるんだ!? 今は仕事の話をしているというのに!!

 これ以上、余計なことを考えないように私は慌ててベリー村長から顔をそらした。


「……………………ッ!?」

「ん? どうしました?」

「い、いえ。なんでもないです! なんでもないですッ!!」

「はぁ……? そうですか。あぁ、それで、彼女はどうしてこの村に?」

 

 思い出したように、話題を変えたベリー村長がネリーに視線を移す。

 視線を向けられたネリーは少し萎縮したのか、ソファの上で肩をすぼめる。

〜乃香の一言レポート〜

  

 『千変万化の魔法の煙(プレイ・ガール)』は“煙を操る魔法”ではなく、“微粒子サイズの魔法石を操る魔法”なんですよ。

 ただ、人間の目にはナノサイズの魔法石の集まりなんて煙にしか見えないので便宜上“煙”と呼んでいるのです。

 え? 詐欺だって? そんなこといったら魔術も魔法も詐欺みたいなものですよ?


 次回の更新は1月16日(水)です。

 どうぞお楽しみに!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ