表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私達、異世界の村と合併します!!  作者: NaTa音
第二章 さよならの夏編
67/84

第六十三話 デッド・パニック ③

できたばかりのゲームにバグはつきもの


「乃香村長――――ッ!!」


 飛びかかるゾンビと私の間にベリー村長が素早く割り込んでゾンビの顔面に拳を叩き込む。

 弾丸を避けたゾンビも空中では回避行動をとれず、拳の威力をもろに喰らい後方へ吹っ飛ぶ。

 ゾンビを倒したベリー村長は私も元へ素早く駆け寄る。


「大丈夫ですか!?」

「えぇ、なんとか……」


 尻もちも着いてしまった私にベリー村長が手を差し伸べる。

 私は彼の手を取って立ち上がる。相変わらず、大きな手だ。

 倒したゾンビの残骸を見つめながら彼は顔を引き締める。


「しかし、弾丸を避けるゾンビが現れるとは、後半戦は厳しい戦いになりそうですね」

「……いえ、これは違います」

「違う? 違うってどういうことです?」


 頭を振る私にベリー村長は引き締めていた顔が驚きの表情に変わる。

 彼からすれば単にゾンビが強くなっただけだが、これはれっきとしたバグであり今すぐにでもゲームの外に出なければならない。


「ノカ、外すなど貴公らしくない。どうした?」

「外したってより、ゾンビが弾を避けたようにみえたけど……」


 先行していたシラナミさんとマリアちゃんが異変に気づき、私達のもとへ合流する。

 ちょうどいい。今から、ゲームから脱出しようというところだ。


「あ、シラナミさん、マリアちゃん。ちょうどいいところにきた」

「なにかあったのか?」

「うん、実はバグが発生しちゃって、すぐにでもゲームの外に出ないといけなくなったの」

「えー! せっかく、半分まできたのに!」


 せっかくの息抜きが中断されることに不満たらたらのマリアちゃんに「ごめんね」と謝罪する。

 今回のバグは製作者である私に非がある。だからこそ、何が起こるか分からないゲームを続けさせるわけにはいかない。


「――とにかく、私のマスター権限でゲームの外に出ます」

「わかりました」

「了解」

「……わかった」


 ベリー村長とシラナミさんは素直に、マリアちゃんはかなり渋々で頷いて了解する。

 三人が頷いたのを確認してから、私はマスター権限を発動させる。


「マスター権限を発動! プレイヤーをゲーム外へ強制転移!!」

『……………………』

「あれ? おかしいな? マスター権限! プレイヤーをゲーム外へ!!」

『……………………』


 …………あれ? おかしいな? 普通ならナレーターが応答して私達はあっという間にゲームの外に出るはずなのに。

 その後もいくらマスター権限を発動させてもナレーターは応答しなかった。嫌な汗が背中を流れる。


「どうした?」

「……いや、あの、その…………」

「早くゲームの外に出ましょう」

「そうしたのは山々なんですけどぉ〜。なんというか、マスター権限が発動しないんですね……はい」


 ベリー村長たちに急かされた私は素直に告白した。

 マスター権限が発動しない、ということは、このゲームからは自力で脱出することができなくなった、ということ。

 つまり…………、


「「「――――とじこめられた!?!?」」」

「………はい」


 三人が声を合わせて驚愕の声をあげる。

 どうやら今回のバグで私のマスター権限までの使用不能になってしまったのだ。

 今のところ、使えなくなったのはゲームからの脱出と、好きなステージに転移できる権限が使えなくなっていた。


「それで、どうするんです?」

「もしかして、ワタシたちずーっとゲームのなか!?」

「マリアちゃんと一緒なら悪くないかも」

「馬鹿なことを言うな。解決策はないのか?」


 場を和ませようと言ったジョークも堅物のシラナミさんに真っ向から否定され、いよいよ逃げ道のなくなった私は観念して唯一の脱出方法(・・・・・・・)を告げる。


「――進むしかないよ。危険だし、ゴールがあるか分からないけど、ここで止まってても何も変わらない。それに、『自滅』って方法もあるけど、みんなやらないでしょ?」

「そのとおりです。自滅なんてまっぴらです」

「カルルス殿と同意見だ。自滅など愚策の中の愚策」

「どんなに強い敵がきても大丈夫! ワタシたちのほうが強いもん!!」


 不敵な笑みを浮かべて三人は大きく頷く。

 ――最初から分かっていた。私も思わず彼らにつられて口角が上がる。

 どんなに危険で、ゴールなんかないかもしれないけど、私達の道は前にしかないのだから! 

 決意を改めて、先に進もうとしたその時だった。先ほどまでうんともすんとも言わなかったナレーターが突然、応答したのだ。


『――そうだ! それでこそ、オレの弟子ってもんだ!!』


 しかし、その声は無機質な機械の声でなく、大胆不敵でむちゃくちゃな私達がよく知る女性の声だった。

 そして、その人は私と同じ、このゲームの製作者(・・・・・・・・・)だ。


「先生ッ!?」

「師匠ッ!? いったいどこから!?」


 師を同じとする兄弟子のベリー村長と私は同時に驚きの声を上げる。

 私達に話しかけているのは『ヨグ=ソトースの銀の魔女』という異名を持ち、文字通り世界を股にかける女、私達の師匠でもある――――八坂 カシン、その人だった。

 

 

〜乃香の一言レポート〜


 向こうの世界はクリスマスが近いようですが、こちらはまだまだ夏真っ盛り! とうとう季節が逆転したZE☆


次回の更新は12月26日(水)です。

どうぞお楽しみに!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ