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私達、異世界の村と合併します!!  作者: NaTa音
第二章 さよならの夏編
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第五十三話 どっちが本物!? 舎弟対決!! ④

舎弟対決、いよいよ決着?


「「――アウト! セーフ! よよいのよい!!」」


 Aとジュムジュマ(♀)が勢いよくグーを出して、いよいよ細田さんvsいたずら妖精による舎弟対決、その最後の火蓋が切って落とされた。

 男の娘と美女に化けた元・骸骨という需要があるのかないのかよく分からなくなってきたけど、もうこうなったら細けぇこたぁいいんだよ! だってカワイイし、美人なんだもん!! 傍目から見れば……。


「「ジャンケンポン!!」」


 二人の拳が勢いよく振り下ろされて記念すべき(?)?一回目の勝敗が決まる。

 Aがグー、ジュムジュマがパー……先手を取ったのはいたずら妖精のほうだ。

 負けてしまったAはしげしげと自分の拳を見つめて、その後ルールを思い出したのか悔しそうな顔をする。

 まぁ、まだ一回負けただけだ。勝負(おたのしみ)はまだまだこれからだ。


「――しゃーねぇな、負けちまったもんはしかたねぇ……そりゃ!!」


 負けてしまったAは豪快に自分の服を脱ぎ捨てる。

 ポーン、と放物線を描いて私の頭上を通過する衣服――それは上着に始まり、ズボン、シャツ、下着……。

 あれ? なんで下着(パンツ)まで飛んでるんだろう? そうぼんやりと思考した次の瞬間、私はハッと我に返り視線をAの方に戻す。

 すると、そこにはAが全裸(・・)で仁王立ちしていた。


「えっ……ねぇ、A、なにしてるの?」

「じゃんけんに負けたので服を脱ぎました(・・・・・・・)

「誰が全部脱げっていったよぉ!?」

「……えっ?」


 股間から“小さなゾウさん”をぶら下げなが仁王立ちするAはキョトンと首を傾げる。


 嗚呼、なんてことしてくれたんだAよ……。

 脱衣野球拳は美少女が顔を赤らめて恥ずかしがりながら一枚一枚(・・・・)服を脱いでいくところに意義があるというのに、一気に全部脱いでしまったら意味がなくなってしまうじゃないか!!


「A、貴様は今、脱衣野球拳においてもっともやってはならない禁忌を犯したぞ!!」

「そ、そんな!? オレはただルールに従っただけで――」

「ばっかもーーーんっ!!! 貴様はそれでも私の舎弟か!? ルールを守るぅ? 野球拳をただ服を脱ぐ(・・・・・・)だけの競技(・・・・・)と思っとる時点で修行が足りんぞ!!」

「す、すいません!!」


 「なんだこの茶番は……」と言わんばかりのBの白けた視線はとりあえず棚上げにしておいて――Aは腰を直角に曲げて、勢いよく頭を下げた。

 でも、きっとAはなぜ怒られている(・・・・・・・・)かをきっと理解していないのだろう。叱責を受けた理由を理解しなければこちらとしても怒った意味がない。

 愛情を持って叱責し、情熱をもって指導をする――これこそが理想の『教育』というもの。

 

 そう、これは教育なのだ! そして、Aに『恥じらい』という新たな感情を教え込むチャンスなのだ!!

 新たな可能性の出現を前に熱くなった私は考えることを止めて目の前にチャンスをつかむことに専念する。

 そして、その結果、手本を見せるのが一番手っ取り早いと本能が判断し、私は上着を豪快に脱ぎ捨てる。

 

「いいかぁ! 野球拳っていうのは一枚、一枚また一枚と脱いでいく過程を楽しむ競技である!!」

「おぉ! 一枚一枚の衣服の価値を確かめながら脱いでいくのですね!! 」

「そのとーーり!! いきなり全裸になるなど邪道の極み! こうやって、こうやって、こうやって――――|脱いでいきます」 


 ルビーのようなキラキラした瞳で私を見つめるAの熱意に感化され、私もついついここが屋外であることを忘れて一枚づつ服を脱ぎ捨てて野球拳のレクチャーをする。

 最終的にトップレス――いや、もっと身近な言い方をすれば“パンツ一丁”の状態になったところでようやく正気に戻り、最後の一枚を理性が死守したのだ。

 瞬間、羞恥の激流が全身を駆け抜けて、私は顔から火が吹き出そうなほどの火照りを感じた。


「と、と……まぁ、このように……ここまで脱ぐと、さすがに……恥ずかしいのです…………」

「なるほど! そして、その最後の一枚(パンツ)を脱がせることで『勝利』を手にすることができるのですね!!」

「そ、その……とーり……。で、でも、その勝利は実際の対戦相手で体験して――」

「姉御、オレにその勝利の輝きを(・・・・・・)見せてください(・・・・・・・)!!」


 ……えっ? なんだって?

 キラキラしたAの瞳、その眼差しに一切の邪な思いはない。ただ、純粋に私が(・・・・・)パンツを脱ぐ(・・・・・・)姿を見たい(・・・・・)、それだけだ。

 なんて恐ろしい男の娘なんだ……! 無知と純粋が引き起こした悪魔的所業!!


「いや、自業自得だろ……」

「心の中を読むな! あと、それは言わないで、事実だから」

「姐御、もしかして見せられないんですか……? 大丈夫です! 姐御の裸なら前にも見たことがありますから!!」

「いや、あの……そういう問題じゃなくて」


 そりゃ、あの時はお風呂場だったから別に裸になっても問題ないけど、今ここで裸になるのはマズ過ぎる。

 全裸になった男の娘と全裸の私……って、どこのエロ漫画だよ! というか、パンツ一丁でも十分マズいんだけど……。

 

 …………いや、待てよ。

 パンツ一丁のこの状態でも十分マズいってことは、これ以上マズくなることないんじゃね?

 今さら“全裸”でも“パンツ一丁”でもカンケーないんじゃね? 所詮、パンツなんて布一枚だし!


「――よし分かった!」

「おいちょっと待て! どう考えたら全裸になるって結論がでるんだ!?」

「おぉ! さすがは姐御!!」

「よっしゃあ! いいかA? 姐御の勝利の輝きをしっかりと目に焼き付けるんだぞ――!!」


 そうして、私が最後の一枚を脱ごうとしたそのときだった。

 私の背後で低く枯れたような咳払いと共に寒気が背中を駆け抜けた。

 錆びついた機械仕掛けの人形なような動きで私が振り向くと、そこには白髪を生やし厳つい顔が怒りによってさらに厳つくなった老人が立っていた。


「……修行から帰ってきたと聞いて来てみれば――なにをやっとるんだ! この馬鹿者が!!」

「い、勲おじいちゃん!?」

「年頃の娘が外で裸になるとは何事だ! それに、子供の服まで脱がすとは恥を知れ!!」

「いや、あのこれには深い事情がありまして……」

「――黙れ!! 言い訳は聞かん! そこに座れ! 今すぐに!!」

「……はい」


 まさかの勲おじいちゃんの登場に野球拳の会場は一瞬で凍り付き、私はあっという間にその場に正座させられた(パンツ一丁)。

 年頃の娘を下着一枚で正座させたあと、勲おじいちゃんはその場にいた細田さんといたずら妖精たちに目をやる。


「お前たちはすぐに帰りなさい。儂はこの馬鹿者に話がある」

「承知いたしました。では、ノカ様、失礼します」

「えっ!? ジュムジュマ!? そんなあっさり見捨てるの!?」

「えぇ、ワタクシはノカ様の身辺警護を任されていますが……自業自得の事案までは対処しかねますので」


 そう言って、ドライな言葉を返したジュムジュマたちは煙となって姿を消した。

 正論過ぎて言葉もでねぇぜ……。

 なんて思ってると、今度はBがさっさと森の方へ歩き始めた。


「そんなBまで!?」

「さっきもあのオモシロ骸骨が言っただろ? 自業自得だ。ご老人、もう一人馬鹿者は私が叱っておく。貴方はノカがこれ以上、バカなことをしないようにしっかりと説教してやってくれ」

「フンッ! 言われんでもわかっとる……」

「安心した。では、失礼――いくぞ、そこの全裸」


 Bは勲おじいちゃんに一礼するとAの尻を軽く蹴飛ばして足を進めさせた。

 どうやら、彼女もかなり怒っているようである。

 申し訳なさそうな顔をするAと相変わらず自体が飲み込めていないCが見えなくなり、私の味方は完全に姿を消した。


「さてと……。だいたいお前はなぁ――!!」

「ひぃいいいい……」


 その後、勲おじいちゃんのお説教は三時間にも及びその間、「年頃の娘が云々〜」という彼の言葉はどこへやら……私はパンツ一丁のまま地べたに正座させらました。


・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・


 その日の夜――。


 お説教から開放された私は石や砂利が食い込んで今だに痛む脚をさすりながら山形さんが用意してくれた『村長室』でとある機械(・・・・・)を組み立てていた。

 これは明日から開始するノカノミクス、その第一の杭で使用する大事な物だ。馬車に積み込んでいたのはこの機械のパーツだったのだ。


「へぇえ……まだ痛むよ。まぁ、私が悪いんだけどさ……」


 誰に言うわけでもなく、私は独り言を呟きながらパーツ同士を組み合わせていく。

 すると、どこからか私をジッと見つめる視線と共に脳裏に若い男の声が響く。


 ――――バカか、お前は……。


 声の主は見当たらない。私の脳裏に直接話しかけているのだ。

 しかし、私は別に驚くことはなかった。

 むしろ、やっと起きたか(・・・・・・・)と少し呆れているくらいだ。


「やっと起きた。ていうか、それが起きて一発目に言うこと?」


 ――――それ以外に何がある? ジュムジュマたちも相当あきれてるぞ。ていうか怒ってるぞ〜。


「あぁ〜、それはゴメンね。まぁ、それはそれとして、さっきまでずっと寝てたんでしょ? なら、これ組み立てるの手伝ってよ」


 ――――嫌なこった。一人でやれ。


 声の主はぶっきらぼうにそう言い捨てる。

 まったく、困った精霊だ。ジュムジュマたちの苦労が忍ばれる。

 しかし、私はこの困った精霊を一発で動かす魔法の言葉を知っている。




「――またまたぁ〜。そう言いながらも手伝ってくれるでしょ? おにいちゃん(・・・・・・)




〜乃香の一言レポート〜


 この度の舎弟対決におきましてはカルルス=げんき村の村長として相応しくない発言、行動があったことを深く反省すると共に今後、このような事が起こらぬよう再発防止に努めて参ります。

 皆さんには大変お見苦しいところをお見せしてしまい、申し訳ありませんでした。



























 …………なーんて反省すると思ったかぁ!! 私は諦めんぞ! 次は夏にちなんで『ギリギリ♡少女たちの水着騎馬戦』を開催してやる!! 皆さん、乞うご期待!!!

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