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私達、異世界の村と合併します!!  作者: NaTa音
第一章 はじまりの春編
42/84

第三十八話 私の舎弟がこんなに可愛いはずがない!!

衝撃のダブルパンチ!!


「――姉御、目を開けてください」

「ん……っ」


 変身する際の強い光をもろに目に受けてしまい、視界が一時的に真っ白になっていたが、それも徐々に回復していき人間体へと変身した細田さんの全貌が明らかになっていく。



「エヘヘ、どうです? 今のオレ、変じゃねぇですかね?」



 目の前で照れくさそうに頬を染めてはにかんだのは――――艷やかな真紅の髪に獣のような鋭い金色の瞳をしたマリアちゃんと同じくらいの『少女(・・)』だった。



「えっ……えええええぇ!?!? だ、誰ですかッ!?」

「誰って姉御の舎弟のホソダですよ。あぁ、もしかしてやっぱり変でしたかね?」

「いやいやいや! 変っていうか、むしろ完璧なんだけど……ええええ!? 細田さんって男……いや、オス――女の子だったの!?」


 私は驚愕のあまり、本当に自分の目がおかしくなってしまったのでは!? と思って目を擦った。

 しかし、幸運なことに現実は変わらず、今、私の前には“三人の女の子”がいた。


 姿どころか声すら変わっていて、私に話しかけた紅髪をツインテールにした女の子は自称詞から考えるに『A』。

 そして、その横にいる栗毛色のウェーブのセミロング、頭頂部のアホ毛がチャームポイントのぼんやりとした表情の女の子は『C』だろう。

 二人共、おそろいの村娘といった感じの服を着ている。


「気が付かなかったのか? 私達は雌だぞ? つまり、人間で言うところの『女』だ――」


 唯一、服装の違うゴスロリチックなフリフリの服を纏った、青みがかかった綺麗な黒髪ロングの美少女は気怠けな口調と私を見つめるジト目から『B』ということが推測される。

 こんなことならA、B、Cなんてテキトーな名前を付けずにもっと真剣に考えれば良かった……。


「ばっ……バカな!? 細田さんが、美少女だと!?」

「そんなに驚くことか?」

「ノカ、おおげさー」


 本来の姿ゴブリンだったときにはほとんど生えていなかった髪の毛が気になるのか、Cがくるくると髪を弄びながら言う。


 大げさ……大げさだと!? ロリコンにとってこの状況を驚くな、というのは「呼吸をするな」といっているのと同義だ。

 三匹のゴブリンが一瞬で、三人の可愛い少女に変身するなんて――、


「美少女の産業革命や……」

「何を言っているのか分からんが、とりあえず、もう一度、貴女を殴ればいいのだな?」

「はい! お願いします……はぁ……はぁ……!」

「ふんっ!」

「――あう♡」


 Bからご褒美――もとい、制裁を喰らい私はようやく正気に戻ることができた。

 マリアちゃんをお預けにされていたので少女(ロリ)への禁断症状が激しい……なんとか理性を保たねば! なんて厳しい修行なんだ……!!

 

「とにかく、そのパズルとやらを始めよう」


 Bが箱から適当なピースを取り出して私の前に突きつける。


「うん、そうだね。そのために変身してもらったんだし」

「よっしゃ! やるぞー!!」

「おー」


 私が頷くとAとCも両手を挙げてパズルに取りかかる。

 すべすべの二の腕を甘噛みしたくなる衝動を堪え、ニヤけそうになる顔を抑えて私も修行に参加する。


「――これは、ここか!?」

「何を言っている! ここだろ!」

「あー、山が見えてきた」

「…………(…………)」


 パズルに興じる細田さん(人間体)を眺めている私の心の中は凄まじい葛藤の大波で荒れていた。 


 落ち着けぇ、鎮まれぇ、愛知 乃香ぁ……。あの娘たちはあくまで“ゴブリン”。目の前の姿は変身した仮染めの姿なんだ。

 むやみやたらに襲いかかり、元の姿に戻ったときのショックは計り知れない。

 我慢するんだ……私にはマリアちゃんという心に決めた天使がいるじゃないか!? 今は引き裂かれているがこのまま修行を続ければ必ず会えるじゃないか!

 それに、いくら可愛いからって見境なく喰らいつくというのはフェアプレー精神に欠ける。


「――これが最後のピースか……」

「あぁ! ボクがさいごのやつやる!」

「……しょーがねぇな、ほらよ」

「ありがとー♡」


 お姉さんぶりたいAが仕方ないと苦笑を浮かべてCに最後のピースを渡す。

 ピースをもらったCがひまわりのような黄色い笑顔を浮かべて、最後のピースをはめ込んでパズルが完成した。

 完成したパズルを得意げな笑顔で見せてくる三人の少女はまるで姉妹そのものだ。


 ――あ、やべぇ……今、本気でこの娘たちのお母さんになりたいって思っちゃった。 

 

「ねぇ、B? お母さん、ほしくない?」

「はぁ? いや、べつにいらないが……」

「私がなってあげようか? あなた達のお母さんに」

「べ、べつに、いい!」


 Bが一瞬、驚いた顔をしてあと、耳まで赤くしてそっぽを向く。

 もう、可愛いんだから~! もう抱きしめて、そのリンゴ色の柔らかい頬っぺたに思いっきり頬ずりしたい!!

 すると、そっぽを向いていたBがベッドの上にあった知育玩具に興味を示したらしく、メッキ加工された手のひらサイズの金属のオブジェクトをこちらに持ってくる。


「ノカ……この金属でできたコレはなんだ?」

「あぁ、それは“知恵の輪”だよ。これはねぇ、こうやってやるものだよ」


 私はBに背を向けて知恵の輪を外して、彼女に見せる。

 げんき村の知恵の輪はやり尽くしてパターン化したので、目をつぶっても外すことができる。


「こうやって外して――で、またこうやって元に戻すの」

「……やってみても?」

「もちろん! どうぞどうぞ!!」


 新しい物に目をキラキラさせながらBは知恵の輪を受け取ると、しげしげと眺めて外そうとするが、うまくいかない。


「――ん? んん!? ん……っ! うんッ!! うーーんっ!!」


 Bが外れない知恵の輪を無理やり力で外そうとする。

 いくら大人びた口調をしていても、こうしてムキになるところを見るとBもまだまだ子供である。


「へっへっへ……力じゃ外せないよ。(ココ)を使わなきゃね♪」

「おのれ! ガラクタ風情が生意気なッ! こうしてくれるわッ!!」

「ちょっと! 魔法で壊そうとしないでよ。ま、がんばってねぇ〜」

「ムキーーッ!!!」


 悔しそうな声を上げながらBが知恵の輪との格闘を開始する。

 Bが知恵の輪に没頭している姿を観察するのもやぶさかではないが、これはあくまで修行なのでサボっていると思われても面白くないので私はベッドに置かれた知育玩具に目を通す。


「うーん……じゃ、私はこれやろうかな」

「それはなんです?」

「ん? “ぬりえ”だよ。こうやって線が書いてあるでしょ? この線の中をはみ出ないようにキレイに色塗りしてくの。やり始めるとハマるのよ?」

「オレにもやらしてくだせぇ!」

「僕も〜!」


 パズルが完成してやることがなくなったAとCの二人がぬりえをやりたいと申し出てきた。

 まぁ、二人には知恵の輪はレベルが高そうだし、ぬりえなら細かい作業が要求される『大人のぬりえ』から大雑把な『幼児向け』まであるし、ちょうどいいか……。

 私はベッドから三冊のぬりえの本を取り上げて、二冊をAとCに手渡す。


「よし。じゃあ、細田さん達にはコレね。キャラクターが書いてあるやつ。クレヨンがあるから好きに塗ってね。ただし、クレヨンを折っちゃダメだよ?」

「うっす!」

「おけまる〜」

「私はこれにしよっと……」


 細田さん達には幼児向けのキャラクターが描かれたぬりえを、私は大人のぬりえを選んで机に座る。

 Bはベッドの上で知恵の輪と無言の格闘し、私とA、Cの三人は机に座り、各々の作業に没頭した。

 三人の表情は真剣そのもので作業している間、誰一人して口を開く人はおらず、金属の擦れる音と紙に色鉛筆が触れる音だけが部屋に響いた。

 私も三人の存在を忘れるほど無心に集中して、作業が終わるころには三時間も経過していた。


「ふぅ……久しぶりに集中したわ~! ていうか、三時間も経ってたし。やっぱりカクタンの修行方法よりこっちのほうがいいわ」

「いやー、自分もついつい無言になってやってました。この“ぬりえ”ってやつは集中力を上げるにはもってこいです!」

「たのしー! でも、ちょっとつかれた」

「二人のやつ、見せてもらっていい? ……おぉ! 上手くできてるじゃない」


 AとCの性格上、ぬりえの線なんて超越した画伯チックなトンデモ作品が生まれると思っていたが、二人の書いたぬりえは線からはみ出ることなく綺麗に塗りつぶされていた。

 私の知っているキャラクターの色合いとは全然違うが、これはこれで独創性があって良いと思う。

 

「えへへ……。照れますねぇ~」

「ノカもじょうずだよ」

「ありがと♡ そうだ! 二人のぬりえなんだけど、私の部屋にこうやって飾っておいてもいいかな? 私達の努力の証よ!」

「えぇ! もちろんです!!」「おー! やったぁ~!!」


 私は部屋の壁にあった予定表にAとCの作品をマグネットで張り付けた。

 また一つ、この世界で大切な思い出が一つ増えた。

 と、和やかな気持ちに浸っていると背後から「ズーンッ……」と重苦しいオーラが漂ってきた。


「の、のがぁあああ……」

「ん? どうしたのB? ――って、なんで泣いてるの!?」

「“チエノワ”が……チエノワが解けないのだぁぁぁ……」


 目の周りを真っ赤に腫らしたBが知恵の輪を握りしめながら地団駄を踏む。

 どうやら彼女は私達がぬりえに没頭していた三時間もの間、ずっと一つの知恵の輪と戦っていたらしい。


 か、かわいいぃぃ〜! 笑った顔も好きなんだけど、なんで少女の泣き顔ってこんなに可愛いんだろう? もう、胸の中に愛おしさが津波のように押し寄せて今すぐにでもBに飛びかかって頭を撫で回したい!! 

 しかし、ここは我慢だ……。ここまで、全ての欲求を理性で抑えつけいた努力を無駄死にしてはならない! あと一言で……たった一言で、私は楽園(エデン)へのチケットを手にすることができるのだから!! 


 そして、今、時は満ちたッ――――!!


「ありゃ〜、まぁ難しいもんね……。ね、そうだ! 一緒にお風呂入らない?」

「……おふろぉ?」

「そう! お風呂に入って頭をスッキリさせてからもう一度挑戦したらうまくいくかも!!」

「そ、そうなの?」

「リフレッシュするのも修行のうちよ! さ、一緒に行きましょ。あ、でも、万が一ってことがあるから姿はそのままでいてくれる?」


 くっ……クフフ……グヘヘヘヘヘヘヘへへへッ!!


 細田さん達が変身した時から決めていた! この娘たちと一緒にお風呂に入るってね!!

 だが、普通に誘っただけではAとCはいいものの冷静な思考をするBには怪しまれて釣れない。なら、Bが思考できないような状態にすればいい。


 何気ない会話の中で視線誘導を用いて知恵の輪にBの視線を引き寄せ、最高難度の知恵の輪を渡して頭をいっぱいにして思考を鈍らせて彼女に『YES』と言わせる作戦は大成功。

 おまけに、彼女が泣きだすという運命の女神のアシストのおかげで私の作戦はいよいよ盤石のものとなった。


「うん……いく」

「よし、おっけー。じゃあ、他の二人も来る?」

「姉御が行くというならどこへでも!」

「いくいくー!」


 知恵の輪に勝てず泣いてしまったBは考えることもなく頷いた。

 AとCの反応も予想通りだ……! ――さぁ、行こう! 楽園の扉は開き、道は照らされた。

 

 私は宮崎さんに「村の娘たちとお風呂に入るね!」と言付けして普段は開放しない大浴場を開放してもらい、脱衣所に向かった。


「――服は……脱げるの?」

「……ぐすっ。問題ない。“ポケット”」


 Bは脱いだ服を魔法を用いて空間に空けた穴に放り込む。

 変身した後の身体にも下着を着けていたあたり、Bの律儀な性格が伺える。

 白くて滑らかな肌が綺麗な黒髪とコントラストを織りなして少女の身体はまるで一級の彫刻のような美しさだった。


 あぁ、もう死んでもいいや……。


「じゅんび、できたー!」


 全裸のCが駆け寄ってくる。

 うーん、百万点(鼻血)♡


「じゃ、私も入りますかね……って、あれ? Aは??」


 私も服を脱いでところでAの姿が見えないが見えないことに気がつく。

 おかしいな? さっきまでついてきていたのに……。


「おーい、どこいったの?」

「あぁ、すいません! ちょっと服を脱ぐのに手間取っちゃって……」

「なーんだ、脱衣所の外で脱いでたの? ダメだよ? ちゃんと服は脱衣所のなかで脱がない……と…………」

「すいません……待ちきれなくて、エヘヘ……。って、姉御? どうかしましたか?」


 どうやらせっかちなAは脱衣所に入る前に服を脱ぎ捨てていたらしく部屋の外から全裸になった彼女が子犬のように駆け寄ってきた。

 そのとき、ふと彼女の下腹部に視線が動いた。

 別段、大きな理由はない。単にロリコンとして当たり前のことをしただけだ――――。


 しかし、きょとんと首を傾げるAの下半身から私は目を離すことができなかった。

 文字通り『釘付け』となる。そして、私はすべてを悟った。



「き、きゃああああああああああああああああああッ!!!」



 その悲鳴は私の中で新たな価値観と悦びが生まれた産声となった。

〜乃香の一言レポート〜



 ――『男の娘』っていいよね……。


 

 次回の更新は6月11日(月)です。

 どうぞお楽しみ!!

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