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私達、異世界の村と合併します!!  作者: NaTa音
第0章 チュートリアル編
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第十四話 コンタクト! ゴブリン三匹組

初めての亜人種登場回ですね


 とりあえず、脅かさない為に原付は降りたまま歩いていこう。

 “あれら”がゴブリンがだとして、どうやってコンタクトを取ろう?


 ――やぁ、こんにちは! こんなところで何してるの?


 うーん、無難だが無難故に味気がない。

 なにせ、人間とは違う種と接触を図るのだ、インパクトに欠ける挨拶はかえって相手に無視をされるか、最悪の場合は敵対ということすらあり得る。

 そうなってしまった場合、物理的な戦闘力が皆無の私なんか、あっという間にやられてしまう。

 では、ここは一つ、やや高圧的に行くのも一つの手かもしれない……。


 ――アララララーーーーイ(アレスの加護があらんことを)ッ!!!


 いやいや、ダメダメ!! それじゃ、接触(コンタクト)じゃなくて征服(コンクエスト)になっちゃうよ!

 それじゃあ高圧的を通り越して、攻撃的になってしまう。

 あくまで、友好的に私達には敵意がないことを示しながら、ナメめられないように対等であることを示しながら接触しなければならない。



「――――あっ……」

「――――ッ!」

「――――ッ!?」

「――――ッ…………」


 

 なんて、考えていたらゴブリンの集団との距離がすっかり詰まっており、もう一メートルもない!

 この距離になると、目の前の三体の特徴が鮮明に確認できる。


 勝じいのように禿げあがった緑色の頭皮――いや、わずかに毛が生えているぶんゴブリンの勝ちか……。

 吊り上がった目に、とがった耳、潰れた鼻に、某元プロレスラーように出ぱった顎(元気ですかー)をしていてよく分からない獣の皮を使った粗末な服を着ていて、中年オヤジのように下っ腹が出ている――すごい! すごいよ!! 本物だよ! 私の目の前に本物のゴブリンがいるよ……ッ!!


「……」

「…………」

「………………」

「――――ッ!!」


 ゴブリン達は驚いたように目を見開いたまま私を直視してたまま固まっている。

 私は架空の存在と決めつけていたものに出会えた感動で言葉を失っていた。


 しかし、このままではコンタクトを図ろうにも図れないので、まずは私から声をかけることにした。


「……あの、そこで――」

「ニ、ニンゲンッ!? に、にげろぉおおッ!!」

「えっ……?」

「うわー!」「にげろー!」


 人語を話した!? ということは、コンタクトを取れる可能性が大きく上がった。

 ――って、それよりも、私を見るなりゴブリンは一目散に逃げだした。

 

 逃がすもんか! 私は原付に跨ると再びエンジンを掛けてゴブリン達の後を追う。


「――ちょっと、待ってよ!」

「て、鉄の馬だぁー!」 

「鉄の馬に乗っている!?」

「なんなんだ! あのニンゲンは!?」


 鉄の馬? あぁ、原付のことか……なるほど、人語を話せるけど私達の世界の知識まではないってことね……。

 ふむ、ますます興味深い。

 これは、必ず追い詰めてコンタクトを取ってみせる!


「はぁ……はぁ……はぁ……くそッ! なんてしつこいんだッ!!」

「は、はやい……!」

「――くッ!」


 ゴブリンと私の追いかけっこは、げんき村の一本道を抜けて、いよいよカルルス村に差し掛かろうとしていた。

 ここまでの所要時間約五分、ゴブリンが走っている時速は……三十キロ。

 ま、二本足の生物にしてはなかなかの速度だが、原付バイクにとってみればランニングにもなりゃしない。

 そして、とうとうゴブリン達の体力も尽き、追いかけっこは終わりを迎えた。


「「「はぁ……はぁ……はぁ……」」」


 道端にへたれ込んだゴブリン達は仲良くかたまって一糸乱れぬ動きで肩で息をしている。

 スタミナはそれなりにあるようだけど、体格から推測される筋肉量からして運動性能は大したことはないみたいだね。

 ヒヒヒ……追い詰めたぜッ! さ~て、未知との遭遇じゃい!!


「な……なんなんだよ! あの鉄の馬は!?」

「に、ニンゲン……ッ!!」

「――くっ、殺せ!!」

「おい、ゴブリンの『くっ(ころ)』とか誰得だよ……。マジでヤメろ」


 ――いかんいかん。思わず、素の声が低いツッコミが出てしまった。


 しかし、誤解してはいけない。

 私はただ、友好的にゴブリン達とコンタクトを取ろうとしているだけだけなのだ。

 まぁ、先のツッコミのおかげでゴブリン達は少しビビっているし、『舐めれない』という課題はクリアしたとポジティブに考えればいい!

 私は軽く咳払いして声のトーンを戻す。


「……で、えっと。あなた達はげんき村(あそこ)でなにをしていたの?」

「…………」

「……話すわけねぇだろ」

「そうだ、あのわけ分かんねぇ村の代表を呼んで来い。お前みたいな小娘に用はねぇ」


 息の整ったゴブリン達はげんき村に侵入していた理由を一様に喋ろうとはしなかった。

 まさか……家を壊そうとしていたのかな? だとしたら、村長として見過ごすわけにはいかない!

 なんと都合のいいことにゴブリン達の言ってる『わけの分からない村』の代表はここにいる。 

 事情を聞いてトラブルを解決することも村長としての大切な務めだ。

 

「その『わけの分からない』村の代表はここにいる(・・・・・)わ。ご用があるならどうぞ」

「なに!? お前がか?」

「信じられん……」

「ウソを吐くんじゃない!」


 ゴブリン達は三下チンピラのテンプレートのようなセリフを吐きながらこちらを睨む。

 まぁ、そりゃそうか……私が村長ってのは確かに疑わしい。

 なんなら、私自身も相応しいかどうか疑問に思っていたところだ。


「しょ、証拠はあるのか!?」

「証拠っていわれてもなぁ……今、持ってるものなんて――」

「待て、お前…………契約印があるな」


 さっき「信じられん……」って言った三匹の中で一番落ち着いている個体――そうだな、とりあえず『B』と仮名しておこう。

 そして、一番感情の起伏が激しい個体を『A』、くっ殺の個体で若干ボーっとしているのを『C』としよう。

 

 噛みつこうとするAをBが緑色の細腕で制して私をほうをじっと見つめる。

 亜人種特有の黄色の瞳がまるで美術品の像を眺めるように瞳を逸らすことなく、まっすぐとこちらに興味の視線を送ってくる。


「け、契約印?」

「そうだ。お前、ゴーレムと契約しているな」

「ゴーレム? あぁ、岩田さんのことか。起動はしたけど契約はしてないよ?」

「起動と同時に契約も完了するのだ。ふむ、なるほど……確かに一つの村に対して中型ゴーレムの所有は一体のみ、しかも村長のみに契約が許されている」


 んんん? なにやら難しいことを言っているぞ?

 私のなかでゴブリンに対するイメージが変わり始めていた。

 ゴブリンってもっと野蛮で知能が低いと思っていたけど、Bの喋り方はそのイメージとは裏腹にかなり知性的で落ち着いている。

 思ってたよりゴブリンって頭がいいのかもね、うんうん、ますます興味深くなってきた♪


「つ、つまり……何が言いてぇんだ?」

「???」


 あ、いや、どうやらゴブリンの中でも知能が高い個体とそうじゃない個体がいるみたい。

 AとCに関しては私と同じ反応してる。


「目の前の人間は村長さ。おそらく、あの村のな」

「そ、そうなのか!?」

「そうなのかー」

「だから、そうだって言ってるでしょ! あと、そこルー〇ア止めい!」


 よく分からないけど、Bのおかげで他のゴブリン達から私がげんき村の村長であると認めてもらえてみたい。

 となれば、彼らの要求を聞くだけだ。

 極力、敵対は避けたいけど……それは向こうの出方次第かな。


「――で、あなた達は一体、何をしに私の村に入ってきたの?」

「我々は住処の森を取り戻すためにここに来た」

「住処の森? ってことは、あなた達は森の魔獣なの……?」

「そうだ。どんな理由かは知らんが、貴様ら人間の身勝手な都合で住処を奪われ、今日も寒さに震える仲間や家族の為、我らは森を奪ったこの村の長を殺し(・・・・・・・・)、奪われた土地を取り戻す為にここに来た!」


 これまで落ち着きを払っていたBの口調が激しい憎悪と共に強くなる。

 そうか……そういえば、げんき村は『魔の森』の一部を抉って転移したんだっけ。

 だから当然、消えた部分には魔獣たちの住処があって、生活があった……私達はそれを奪ってこの土地にやって来た。

 そりゃ、許せないよね。きっと私も同じ立場なら…………ん? 待てよ。



 ――――今、あのゴブリンさん“村の長”を『殺す』って言ってなかった……?



「あ、えっと……そ、そうなんだ~。じゃ、がんばってね~。私はぁ……そのぉ、見回りの続きをしないと…………」

「なんと、今、運が良いことにその村の長がホイホイと我らの前にいる。忌々しい神にも今ばかりは感謝をせねばな」

「あぁ、そうだなぁ(じゅるり)。こりゃ、運がいい……」

「(ゴキゴキ)……」


 さっきまで、地面にへたり込んでいたゴブリンの皆様がなにやら不穏で邪悪な笑みを浮かべながらゆっくりと立ち上がる。

 立ち上がった彼らは禍々しい殺気を纏ってこちらを憎悪たっぷりの眼で睨んでいる。


 私は彼らの迫力に気圧されてじりじりと後退りする。

 それに合わせてゴブリン達もじりじりとこちらに近づいてくる。

 ま、まずい……逃げなきゃ! 脳から全身へ危険信号が行き渡り、嫌な汗が滲み出てくる。

 

「ぼ、ぼ、ぼう……暴力反対…………」

「――やってしまえッ!!」

「おうさ! “フレイム・ボール”ッ!!」

「“サンダー・バレット”――」


 AとCが右手を前に突き出すと、Aの手からはドッジボールほどの火球が、Cの手からはその火球よりも小さくて速度の速いバチバチと音を立てる閃光が飛び出す。


 わぁ~! すごーい! 本当に出るんだ……手から火とか雷が――――イタッ!!!


 Cの放った閃光が私の頬を掠めると、まるで火で炙られたような鋭い痛みが肌を貫く。

 その瞬間、生存本能が全力で「逃げろッ!!!」と全身に命令を送り、私は反射的に原付に飛び乗るとクラッチを全開にしてカルルス村の方へ走る。


「――ひいいいいいいいいいいっ!!! おたすけぇ~!!」

「逃がすな! 追えぇ!! “フロスト・アロー”!」

「“フレイム・ボール”!」

「“サンダー・バレット”」


 間違いない! これは、今まで見た魔法とは明らかに違う。『攻撃』用の魔法だッ!! 

 異世界に飛ばされて僅か数日あまり、私は――不思議な石で暖められたお風呂に入り、ゴーレムを造り、ゴブリンと遭遇し、炎・雷・氷の魔法から原付で逃げるという体験をした。


 まぁ、異世界ライフとしてはなかなか充実している方――――冷たッ! って今は逃げなきゃ!!

〜乃香の一言レポート〜


 深夜のラーメンってなんであんなに魅力的なんでしょう? よく食べた後に「また、食べちゃった……」後悔するんですけどね。


 次回の更新は4月12日(木)12:30です! 

 どうぞお楽しみに!!

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