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9:二人の学校生活

月曜日。二人の兄妹は無事に入学とスピーチをこなして学校生活を満喫していた。だが、自分より年下で能力と体質持ちで霙程ではないものの、なかなかに顔の良い兄妹が編入してきたのだ。中学校から上がってからまだ二ヵ月程しか経っていない高校一年生の浮き足立った生徒達が何もちょっかいを出さないはずもなく・・・。

~放課後~

「なぁ土井」

「はい。何か御用でしょうか?」

年下である桜はきちんとした言葉で話すようにいつも心掛けているのだが、今回はその言葉遣いが相手は気に食わなかったようだ。

「チッ。お前さぁ神無月と一緒に暮らしてるんだろ?だったらお前も異常者だよなぁ」

そう。土井兄妹がこの学校に入って最初に驚いたことは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

霙は桜と良太の転入生のスピーチの後に学業の終了の話を校長からされたにも拘らず、この学校の生徒は霙に対する考えを改めることは無かった。

「確かに私は吸血鬼と悪魔のハーフですし、異常と言えば異常ですよ。それがどうかなさいましたか?」

神無月家に住む三人は同じ一学年ではある。桜のクラスには兄の良太が居るが、霙とは違ってしまっているのは二人にとっては災難だった。彼女は皆から異常者扱いをされてはいるが彼女の美貌は本物で、彼らにとって霙は嫉妬と興味で出来た偶像なのだ。だからこそ彼女はイジメには遭っていない。

「何でおめぇみたいな奴が神無月の滅茶苦茶でかい家に住めて俺らがダメなんだよ。そんなに金持ってるなら俺らにもよこすのが普通だろ?」

「おい。そういうことは妹じゃなくて霙さんにすればいいだろ。霙さんに話しかける度胸が無いからって妹に当たるな」

『一言多いよ』と桜が注意したが時すでに遅し。

「妹より弱いくせにこういう時だけお兄ちゃん(づら)出来て良かったなぁ~」

すると良太達の周りに集まっていた男子生徒の一人が良太に向かって拳を打ち込もうとするが。

「悪いですけど貴方達に構っている暇がないので帰らせてもらいますね」

紅く鋭い目と赤黒く伸びた爪。桜の鎖によって拳は防がれて良太に届くことは無かった。

「お兄ちゃん帰ろ」

「うん。ありがとな」

だが彼らは次の日もその次の日も兄妹(特に良太)にちょっかいを出してくる(特に良太に)。

(分かってるんだ俺には桜と違って能力が無い・・・だったら)

そう、彼が今まで感じていた体の違和感は可能性(チカラ)ではなく体質の方。彼はまだ可能性(チカラ)には目覚めていない。そこで彼のとった行動は・・・

「霙さん!俺に体術を教えてください!!」

「え、マジで」

アイスを食べながら太腿(ふともも)の上にのった(みぞれ)を愛でていた霙は放課後に良太の体術指導をすることになった。理由はなんとなく霙にも分かる。妹に対する劣等感、だが体質面では良太の方が優れているのだ。

妹の体質には『神々などの霊的存在に好かれる』があるため悪魔と吸血鬼のスペックが多少減ってしまうのだが人間相手に吸血鬼と悪魔の力を使えば彼らは瞬く間に肉塊となってしまうだろう・・・あの時の霙のように(3:一方的主従関係を参照)

「それで体術を習うのはいいけど、何で私なの?」

真剣な良太。気分が高ぶっているせいか兄妹の共通体質である『目が紅くなる。赤黒い爪が生える』が起こっていた。

「霙さんより強い人はないですし、何より霙さんが一番チカラの使い方を知ってそうですから」

そこまで言われると霙も照れる。少し頬を赤らめて霙は良太に体術を教え始めた。

「言っておくけどアチキのは体術って言える様なものじゃないからね。独学なんだからね。それでもいいなら教えるよ」

「お願いします」

霙は良太に教えた後、桜に『プロフィール』と書かれた紙を持って行った。

霙はその悪癖『人真似』から漫画やアニメ、小説や他人から中二病な部分を吸収してしまう事がある。その結果。『0→1』によってもたらされた能力を『可能性(チカラ)』(朧ならば本質を見る可能性)。『0→1』によってもたらされた種族要素を『体質』(良太ならば角と牙が生える)。これに名前を付けたがっているのだが。

「これどうかな?」

「・・・・・」

そう言って桜に見せた一枚の紙。そこに書かれていたのは・・・

土井 桜

種族:悪魔と吸血鬼のハーフ(人間も入っているがその要素は(ほとん)どない)

体質:吸血鬼と同じく霧や蝙蝠(コウモリ)などへの変身。翼と尻尾が生える。霊的存在から好かれる(神々の武器や妖精の使役などはこの部分。神々の力を使うときは元の体質が殆ど無くなる)

可能性:タイプ『能力』

~自虐と戒め『神魔なる茨の眠り姫』~:周囲に釘と鎖を生み出すこともでき、周辺の釘と鎖を操ることも出来る。別に茨にこだわることもなく、十字架や十字の形が入った剣なんかも創れる。可能性にも関わらず体質と強く癒着しているのも特徴。

「なにこれ・・・しかも私も知らないこと書いてあるし。というか恥ずかしいよ霙お姉ちゃん」

「え~どこが恥ずかしいの?」

「ここだよ、ここ。何?≪~自虐と戒め『神魔なる茨の眠り姫』~≫って」

「いいじゃん。桜の可能性(チカラ)の名前だよ?」

「恥ずかしいぃー・・・絶対に他では言わないでね霙お姉ちゃん」

顔を真っ赤にしながら首筋に北欧神話のレーヴァテインと思われる剣やケルト神話のフラガラッハが迫っている・・・これはもう黙るしかない。

「でも楽しいよ、名前つけるの」

「ムゥウウん?」

神具が無くなった所でまた一言余計な事を言った霙の前に、赤黒く禍々しい雰囲気を放つ剣が一本。

「え~と、サクラサンそれは?」

「ダーインスレイヴ。必殺の剣にして、必中の剣。相手に決して癒えぬ傷を負わせ、相手の生き血を一滴も残さず喰らい尽くす北欧神話の魔剣だって教えてくれた」

彼女はどうやら北欧の神々に特に気に入られているご様子。それを見た霙のとった行動は早かった。

「ほんとうにすみませんでしたぁああああ」

神をも堕とす美貌による全力の『ジャパニーズDO☆GE☆ZA』これなら神々とそれを使役している我らの姫も許してくれるはず。

「・・・今回だけだからね」

「ありがとうございます!!」

「その代わり」

「その代わり?」

なんだか嫌な予感がする霙。そしてそんな予感は大体当たる。

「天泣と遊んであげてね」

「え、ty」

無言で襲い掛かった天泣。霙はそのまま階段の方まで咥えられ、階段から投げられた。

《ズドーン》。

《グッシャァアアアア》。

酷い音がした。酷過ぎる仕打ちだった。この後、桜が夕食の時間になって下に降りてくるまで霙は天泣のオモチャになった。

~木曜日の放課後~

今日も今日とてちょっかいを出してくるいつもの連中。今日は良太だけだったが、彼らは良太を校舎裏に呼び出すというなんとも古典的な方法で良太に喧嘩をふっかけてきた。

「なんの用ですか?いつもいつも妹や俺にちょっかいを出してきて・・・これ以上はやめてもらいますよ」

もちろん桜も一緒なのだが、彼女は良太の後ろで待機している。

「うるせえなチビ!お前があの神無月さんと一緒に暮らしてるのが気に食わねえっつてんだろ」

チビも何もまだ良太は8歳なのだ、背が小さくて当たり前である。

「お兄ちゃん帰ろ。こいつらに何を言っても分かってくれないし、やめても貰えないんだから」

「そうだな・・・そういうことなんで帰りますね」

すると良太と桜の後ろから両手を縛られた二人の男女が二人の男子生徒に引きずられてきた。

「動くなよ土井兄妹。お前らに勝ち目はねえんだから大人しく俺らにボコされろ」

急な怒りに兄妹二人して『体質』で彼らの反応できない速度を出そうとする・・・が、そこで気付く。

「あれ?何で?」

「お前もか桜・・・多分あの二人だと思う。ここは大人しく話を聞こう」

二人とも『体質』が使えなくなっている。その上桜に関しては『可能性(チカラ)』も使えなくなっている。

「気付いたかチビども・・こっちの女はアレルギーを治すだけだったが『可能性の第二階層』になったおかげで『体質』封じれるんだよ」

『0→1』(ラブワン)によって手に入る可能性には階層がある。第一階層はただ使えるだけの言葉通りの可能性の具現化。そして第二階層は科学的な応用と派生。第三階層は概念的派生と応用。最後の第四階層はそれらを超越し、すべてを操れるとさえ言われている。

「そんでこいつは前の世界からの環境の変化に追いつけなくて可能性無効の可能性をゲットしてんの。分かった?あんたたちは私達に勝てないから」

嘲笑(あざわら)う女。相手は約15人。これだけの人数を相手にするのに『可能性』も『体質』も使えない絶望的状況。

「桜、俺が霙さんから教わった体術で何とか時間を稼ぐからその間にお前は誰でもいいから人を呼んで来い」

《バシッ》

「うっ・・・やめて・・・誰か助けてよ」

「抵抗すんなよ。じゃないとこいつらの顔が歪みきっちまうからな」

どうやらさっきの女が縛られている女子生徒の頬を叩いたようだ・・・二人の心にこみあげてくる怒り。だが人質をとられている以上、彼らの指示を聞くしかない。

「お前ら絶対に許さないからな」

「桜も絶対に許さない・・・絶対!!」(あの距離じゃ『ラブワン遮断器』を使っても助けられない)

じりじりと距離を詰める集団。

だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「そこで何してるの?良太と桜」

すべての視線が一方に向く。そこにいたのは長い黒髪の(なま)めかしい少女。神無月 霙だった。

「霙お姉ちゃん!!」

桜が叫ぶと、近くにいた女が拳を握って霙に近づいた。

「この環境じゃ、空手をやってる私の方が強いんだよ!!」

「はぁ・・・めんどくさ」

霙は殴って来た拳を掴み、相手の軸足を払って転ばせた。

「その二人が無効系の可能性なのね・・・まぁ私には関係ないけど」

「その二人だけでも助けてあげてください霙さん!!」

他の連中が良太と桜を囲みこちらを見ている・・・動けば傷めつけるぞと言わんばかりに。

「二人を守るって約束したからね・・・大丈夫だよ、四人とも助けるから」

その声で彼らは自分の近くの相手に襲い掛かった。縛られている二人を襲う者。良太と桜に殴りかかる者。命知らずにも霙を襲う者。

「失せろ」

それは一瞬だった。

()眼前(がんぜん)にその身を(さら)すな」

『体質』も『可能性』も使えない状況で約15人のいじめっ子達は消えた。

「「「「・・・・・」」」」

唖然とする四人。桜はおもむろに首から下げてある『ラブワン遮断器』を見るが、電源は切られている。この前のWAOの件から良太と桜は少しだけ霙に対して不信感を抱いていたがこれではっきりした。

((本当にあの人は『0→1』(ラブワン)の影響外なんだ))

兄妹の考えが一致した瞬間だった。

「じゃあ二人とも帰ろっか」

「あの・・ありがとうございます」

「神無月さん本当にありがとう・・僕達のこと助けてくれてさ」

(縛られていた二人にお礼を言われた・・・やっぱり何も感じない。ダメだね)

この日以来、土井兄妹にちょっかいを出す者はいなくなった。

~神無月家にて~

「そういえば、霙さん」

「どったの?」

「あの消えちゃった人達って・・・」

「ああ、大丈夫だよ。自分たちがやろうとしてたことを返して、家に送るから」

かなり酷いことをしてきた奴らだったが、これには同情する土井兄妹。だが兄妹の心の中は他の事でいっぱいだった。

「来週から夏休みだねお兄ちゃん」

「三人で色んな所に行こうな桜」

「夏休みは我輩の別荘に行くからね」

「「おおー」」

嬉しそうな二人。危険と楽しみが入り乱れる夏休みが目の前に迫っていた。

「そこにも居候(いそうろう)の子が二人居るから仲良くね」

「「え、?」」

『私達』(みぞれ)の新たなる物語が幕を開けようとしていた。



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