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13:この世界の真実

その後、私は三年前に戻って紫と再会を果たした。紫はしっかりと『0→1(ラブワン)』対策の為の下準備をしてくれていて、後は実行してもらうだけとなっていた。

そこで私は契約とは全く関係ないお願いをした。

「ねぇ紫、一つお願いしてもいいかな?」

「いいですけど、何をすればいいですか?」

「ふふふふふ・・・それはね、『クラリオス帝国』の皇帝陛下。クラリオン・スミスに何回か能力を使わせるっていうのが一つ、それで10年間は戦争させないようにして。後は私の中継スポットにするものを二つ作ってもらいたいんだけど」

「さっき一つって言ってませんでしたっけ?」

明るく笑い返す女神様。この『吸血鬼と悪魔のハーフ』にとっての女神さまは「そんなの言葉のあやでしょ」とでも言いたげだ。

「そんなの言葉のあや、よ」

やっぱり言った。

「それで?どうなのよ?」

まぁいいと思う。実際に女神さまは9年前の世界に戻してくれたわけだし・・・自分としては女神さまに対する『お礼』(契約の対価)ができてない気がするんだよね、一緒の願いっていうのと皆の長いって感じがして。

「いいですよ、具体的には何をすればいいですか?」

「まず、貴方に『クラリオス帝国』に行って渡してもらうモノ。これを『クラリオス帝国』に渡すのは、もう一度タイムリープしてからにしてもらう」

「どうしてですか女神様」

誰にでも見落としはある。霙は何故もっと早く気付かなかったのか、自分を少しだけ責めた。

「まず一つは、超災害の対策が万全ではないことだ。対策したのは落ちてきた時の衝撃波だけで、その後の自然災害や能力者を生み出したりした『波』の様なものの対策が出来ていない・・・それもこの国だけだ」

ハッと目を覚まされたようだった。

「確かに・・・それなら『クラリオス帝国』に渡しても被害は変わらない」

「そういうこと」

今の状態ではWAOを作ったり、三年後に落ちてくるアレの衝撃波からはこの国を守れるかもしれない。でもそれはあくまでも『この国』だけに限った話であって、本来 あの災害はその後に起こった『波』の様なものによって引き起こされる『異常』による被害が大半なのだ。

「それではどういった作戦があるんですか?」」

この後、私は彼にこう告げた。

「まず、『クラリオス帝国』の近くには可能性を絞り込んだ究極を作ってもらう・・・名前は『パンドラ』がいいな、後で詳しいやり方を届けるよ。次にWAOの本部になるところに『デウス・エクス・マキナ』という名前で『能力』と『体質』の超越体を作ってもらう。そしてそれらを使って君の子どもの、え~っと何だっけ?」

「桜と良太ですか?」

「あ~そうそう。桜ちゃんには才能がある、桜ちゃんに最後の『力』になってもらうよ」

一応、彼が結婚した際も 良太が生まれたときも 桜が生まれたときもこっそり見に行っているのだ。見ていて私も彼らのようにはしゃいでしまったのを今でもよく思い出す。夫も妻も同姓同名とは、なかなかに珍しい、とも思っていたが。

「女神さまのおかげですよ。貴方がいなければこの喜びは無かったでしょうから」

「そろそろ『女神』じゃなくて『霙』って呼んで欲しいな~」

「そんなこと言えませんよ。本当に私は貴方を女神だと思っているんですから」

人を助けるのは、別に報酬や名誉が欲しいからではない。というか、体が勝手に動いてしまうのだ。きっと私は・・・人間のことを良い意味でも悪い意味でも『大好き』なんだと思う。

そんなことを思いながら霙は照れて、体をうねらせた。

「まぁ桜ちゃんもそうだけど、良太君もすごい才能だと思うよ。ホント、君とは大違いだ」



「どうだい?思い出せないだろ。クリスちゃん」

話を聞きながら私は必死に思い出そうとしていた。そんな中、一つ気付いたことがある。

さっきから浮かんでいるシャボン玉の様な何かには『皆の記憶』が見え隠れしていることに。

「うん、まぁいいや。それで?その後は?」

「三年後、『0→1』が落ちて世界はまた滅亡の危機。その後、クラリオン・スミスは落ちてきた『0→1』をタイムリープした後に受け取れることを許諾し、『一度目のタイムリープ』を行おうとしたが、()()()()

「え?それってどういうことよ?」

「簡単だよ、()()()()()()さ」

いったい、いつの世界の話なのだろうか?

私には『可能性の無効化』という能力がある。そのため、本来ならばタイムリープされようとも記憶は残るはず・・・というかそんな状態でタイムリープが発動しないのは当然とも言える。

「それは君がWAOの任務で『兄、土井 良太と妹の桜に会いに行った日』なんだよ」

もうついていけない。いったい何があったというのだろう?

「それが何だっていうのよ?」

そんな私に第五の霙は分かるように説明しようとしてくれた。

「いい? クリスちゃんの記憶だとね、『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』ように思ってるかもだけど、それがさっき言った部分のタイムリープなの」

「???」

首を傾げる私に霙は叫ぶように説明してくる。

「だ!か!ら!クリスちゃんが私の家に出たり入ったりしたのは、家に居るっていう状態から『タイムリープの影響を前の世界で唯一受けたクリスちゃん』に今のクリスちゃんが変更されたからなの」

「えっ、てことは最初のタイムリープが失敗したときは、私だけが前の世界に戻ったって事?」

ようやく話が前に進みそうなことに安堵する霙。

「そこが厄介だったのよねぇ~。本当ならさっきクリスちゃんが言ったようになるはずなのに、ならなかったのよ。それなのにこっちの世界で変わっちゃうんだから、大変だったのよ~」

なんだか私が悪いみたいだ。

「結局私がその埋め合わせのために家の場所を変えたりしたからクリスちゃんが変な動きをしてるってことになってるけど、普通なら瞬間移動したってばれちゃうし、最悪クリスちゃんの記憶が分断されるとこだったんだから」

全く分からない訳ではないが、分からない。まぁあの時にあったクリスが、頼んでおいたはずの『A-1に居る霙に会いに行って』っていう・・・あれ?

「どうしてジョンの記憶があるの?」

不敵な笑みを浮かべる霙。この世界で起きるおかしなことは大体コイツのせいなのだろうとクリスも分かってきた。

「フフフ・・・ようやく気付いたようだね」

「うざったいわね、さっさと説明しなさいよ」

彼女はそこらへんに浮かんでいるシャボン玉のようなモノを指さして言った。

「さっきから浮かんでいるあれには皆の記憶が詰まってるんだけどね、そこに紫雲の固有能力:『平和が平和のために行う平和の統治』みたいなのを使ってクリスちゃんとの共有記憶にしてるの。だからこの話もクリスちゃんが向こうの世界に戻ったら皆の共有記憶になるから」

「つまり、今の私は皆の記憶をもったクリスで、向こうに戻ればその記憶は皆のモノに戻るってこと?」

「そゆこと~」

もう話についていくのに精一杯すぎる。

「それでね、クリスちゃんと桜が車に乗ったときにもう一回こっちではタイムリープしてるから、それで釣り合いは取ってるんだけどね」

「それも総統が貴方と繋がってたからでしょ」

「うん」

「ジョンや私に出された指令だって、全部前の世界のためのつじつまあわせで、貴方との約束だったんでしょ!」

「そうだよ、気を悪くした?」

違う、誰も悪くないのだ。ただ、今のクリスには辛い現実だっただけで、裏切られたように感じてしまったのだ。

「別にいいわよ・・・もういい、適当にまとめて話してくれる? もうアンタの説明を聞くのも嫌になってきたから」

「そう・・・なら、事実を伝えた後に君を返してあげるよ」


世界には三回『0→1』が落ちてきている。

世界の崩壊 この国以外への厄災 今の地球。私はそのうちの一つを『クラリオス帝国』に渡し、もう一つをWAOの最終兵器にした。最後の『0→1』は何所かで自由にやっているだろう。

クラリオン・スミスが行ったタイムリープは三回、そのうちの一つは君のせいで失敗した。私は君を消そうとして10年前に行き、君とクラリオン・スミスと君の姉のステラ・クリストフに会うことが出来たけど君は私を追い払う代償に記憶を一部失った。

ジョンがWAO本部で会った『クリス』は君の姉のクリスで、その時に佐藤(土井 紫)が君の姉に『0→1』を渡した。

『パンドラ計画』は可能性を強制的縛ることによって得られる『0→1』の可能性の強化。パンドラには幼少期から戦闘などの知識や経験を積ませて、それを褒めることにより彼女にそれ以外の道を選ばせない。これはピアニストの家に生まれた子どもが幼少期からピアノを弾き、才能に恵まれたときに『ピアニストになりたい』と思ってしまうのと同じ原理である。可能性は努力と自分を信じること、自信ある行動によって向上する。テストで100点を取るという可能性(100%の可能性)を実現しようとすると、まずは100点を取る『勉強』(努力による可能性の向上)テスト中の『自信ある回答』(自分を信じたことによる可能性の向上)これらは純度と時間によって増えるため早くから始めた方が100点という究極の可能性に近づける。

『パンドラ計画』は上記の努力を重視したものである。

『デウスエクスマキナ計画』。史上最高のAI『デウス・エクス・マキナ』の製造によりWAO本部の情報能力向上と『0→1』の正確な被害予測などを行わせるものとする。また『知』に関しての究極でもあるため、先程の『自信』においての可能性の向上を重視したものであることも分かるだろう。


『デウスエクスマキナ計画』と『パンドラ計画』の真の目的は『0→1』が落ちてきた後に目覚めるであろう『能力』と『体質』である。

『パンドラ計画』においては先程の段階を踏むことにより能力を『パンドラの器』に確定させるうえに、初期段階から『可能性の第三階層』(9:二人の学校生活より)に至らせることで周りの可能性に影響を与える。結果として第四階層に『土井 桜』及び『ルーナ・(エクリプス)・クリストフ』を至らせる速度を速める働きがある。

『デウスエクスマキナ計画』においては『体質』と『能力』の混合体である『デウス・エクス・マキナ』を土井 桜の『お手本』とさせることで彼女の可能性を飛躍的に向上させる働きがある。また、両者とも『新たなる可能性』の影響下であり魅力的なモノであるため『0→1』の可能性を受けた『0→1』である固有個体(YUI)に接触する可能性を上げる目的もある。


なお、『0→1』が落ちてきた理由は明確ではないが、限りなく近い真実としては世界で最初の能力者である『ルーナ・(エクリプス)・クリストフ』という『新たなる可能性』に引き寄せられた可能性があり、そのことからルーナは生まれた時から『第四階層』に達していたと推測されるが10年前においてのみ、第四階層から第一階層などのコントロールが出来た模様。

現在は記憶が欠如しているためか非常に不安定なモノとなっている。



「はい!おしまい!」

どこからツッコめばいいのだろう。クリスは思考を止めてしまった。

「全部アンタが楽しむためにやったってのは分かったわ」

「そう、まぁこれから君にはみんなのいる世界に戻ってもらうんだけどね、いくつか言っておかないといけないんだ」

「何?私の記憶のこと?」

「まぁそれも返すんだけどね、向こうは今頃・・・クラリスの攻撃を受けてから10年ぐらい経ってるよ」

「はぁあああああ!?」

「あと、何人かは結婚してるよ」

「”$”$#$’&%#%’&!#&?’%」

衝撃が大きすぎて泡を吹いて倒れそうだ。

「最後にね、みんなを助けるために『第五の私』が力を使ったから、その分だけ他の霙とか、クラリスの罠の解除のために世界を(いじく)ったから色々とおかしくなってるから気を付けてね」

何でもできて何にもできないアレにとってはこの世界も数ある可能性の一つでしかないのかもしれない。

「はぁぁ~・・・ありがとうね霙」

大きなため息をついた後、彼女は最大の笑顔で霙に微笑んだ。

「うん オリジナルと馬鹿な私達をよろしくね」

「ええ、任せておきなさい」


白い光に包まれた私は霙によって入れられた異様な場所からいつもの世界に戻った。後ろを振り返ると扉があり、そこには『第五の部屋』と書いてあったが次の瞬間には扉もろとも消えていた。

「・・・ここって霙の家?」

周りを見渡せば、どこか見たことあるようなリビング。前に来た時と違うことと言えば、従者達が霙ではなく私の事を『この家の主人』であるかのように話してくることだ。

まぁ兎にも角にも、あの6人を呼ぶことから始めよう、これから起きる戦争をなんとしても止めなくてはいけないのだから。

決意を胸にクリスは近くにいた従者に声をかけ、あの6人を呼んでもらう。

「本気で勝ちに行くからね、二人とも!!」

戦争を起こそうとしている友人と双子の姉に対する決意のこもった『宣言』

一人一人の正義のため、彼女たちは結束する。













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