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Another of story:デウス・エクス・マキナ 帝国調査編

謎の帝国『クラリオス帝国』を調査するという重要な任務が初任務となり、興奮気味のデウス・エクス・マキナ。彼女は『クラリオス帝国』の近くにある国の宿屋で自分のバックアップや装備の確認をしていた。

「これもあるし・・・あ、そういえばジョン・ケイトさんは今まで殆ど日本に居たから海外のニックネームはあんまり好きじゃなかったのかなぁ?」

やっぱり人間は難しいと改めて思うデウス・エクス・マキナ。自立学習能力でまた一つ人間に近づいていく。

「よし、それでは調査を開始します。チャンネルはD27に設定・・・・WAOとの回線接続を確認」

機械仕掛けの神の名を冠する彼女にとってシークレットラインを引くことなど朝飯前なのだった。

「あーあー・・・分かるか?デウス・エクス・マキナ」

「はい。音声、座標、映像、共に正常です」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

彼女は宿屋に居ながら遠隔操作で自分のバックアップ達(分身体)を使って『クラリオス帝国』の周りから情報を集めることにした。

「うーん、本当に真っ黒で何にも見えないなぁ」

帝国の周辺は衛星写真で見た通り、真っ黒いドームに覆われていた。周りには僅かな草原と森ばかり、平穏そうな雰囲気をこの黒いドームとどこからか響いてくる轟音が邪魔していた。

「この音は・・・現代戦争かな、悲しいなぁ。本部へ連絡、戦闘中の荒野に向かいます」

彼女は情報としては現代戦争がどういったものかを知ってはいるが本物は見たことがない。それへの好奇心に負けたのが半分、残りの半分は隣国の戦争ならば『クラリオス帝国』の介入があると思ったからだ。

《現代兵法1:まずは遠距離からの攻撃兵器と能力(魔法)で場を空ける》

《現代兵法2:その後、最後の一押しとして能力(魔法)者を中心として殲滅する》

科学の発展した現代においても、彼女にとっては理解できないのだ()()()()()()()()など。

「おお~やってるやってる」

荒野で繰り広げられる戦闘。見る限りではどちらの力も拮抗しているように見えていたが・・・そこに一石が投じられた。

「『開け災厄よ・・・全ては我が手中にあり』」

そんな声がどこからか聞こえてきた後、戦場は黒くてブヨブヨした何かに包まれた。

「へぇ~これが現代戦争。やっぱり対能力者兵器と能力者の質で決まるのかなぁ?」

彼らにばれない位置から呑気に宿屋にいるマキナと話している彼女だが、こうしている間にも彼女は彼らが持っている電子機器から情報を取り出し『デウス・エクス・マキナ』をインストールしていく。

「あの子がさっきのブヨブヨを放った能力者かな?」

そんなことを報告していると可愛らしい能力者は自分の近くを物凄い速度で通り過ぎて行った。

「あ、危なかった・・・まぁバレないか」

機械(デウス)仕掛けの(エクス)(マキナ)の身体はもちろん機械のような肉体となっている。要は色や鼓動、体格や性別まで変更可能なのだ。

「ちゃんと見えてた?」

「うん、ばっちり見えてたよ。でも来なかったね『クラリオス帝国』」

「そうだね、こんなに近いんだから様子くらい見に来るt・・・まってマキナ」

「どうしたの?・・・すごい!これがあの国の力なの?」

彼女達が見たもの・・・荒野には何も残されてはいなかった。

先程の戦いで片方が殲滅されたのは見たが、もう片方が居なくなったのは見ていない。それが一瞬で消えてしまったどころか彼らの持っていた電子機器は『クラリオス帝国』のある座標に反応があった。

「どうする?」

「そんなの決まってるでしょ」

彼女達のとった行動は簡単。『デウス・エクス・マキナ』をインストールした電子機器から『クラリオス帝国』の中に入るだけ。

「よし、誰もいないな」

トランシーバーからにゅるっと出てきたデウス・エクス・マキナ。彼女が居る場所はどうやら建物の中で周りの状況は分からなかった。

「とりあえず電子機器はあるみたいだね。電子レンジにテレビ・・・この国結構大きいな」

エコーによって全体図を作成して宿屋に居るマキナに転送。この国がどういう形なのか、軒並みや売店の品なども詳しく送る。その間わずか5秒、本気を出せばもっと早い。

「よし。これで任務は終わったし、少し観光しようかな」

他の電子機器に寄生している今のマキナにとって観光など一歩も動かずに出来ることではあるが、やはり自分の足で行きたいのだ。

「ふーんさっき消えちゃった兵隊さん達は下か~良かった生きてたんだ。まぁ別に彼らと仲良くなりに来たわけじゃないしね」

何故消えたかはきっと能力なのだろう。だって創造期のこの新しい世界は『可能性』で満ち溢れているんだから。分かっていたのに、彼女は忘れていた。ここは謎の帝国でその中にはあれだけの規模を一瞬で転移させることのできる能力者がいることを・・・正直侮っていた。

「おい!全裸の貴様!!どうやってここへ入った」

突然の怒鳴り声。このマキナは電子機器から生まれたばかりで、勿論裸だ。だが問題はそこではない、マキナはずっと周りに探査エコーを放っていたにも関わらず、全く気付かなかった。

「え、ああ・・服ならちゃんと買いますよ」

(とりあえず適当に誤魔化して逃げよう)

トンチンカンな答え、それにそんな甘い考えは通用しなかった。

「だめよクリス。いくら不法入国であっても客人にはある程度の礼節を(わきま)えなくては」

如何にも皇帝ですといった豪華で荘厳な服装の金髪の女性とその隣に居るメイド服姿のクリスと呼ばれた侍女の女性・・・正直能力を使いたくないしどっちも相手にしたくはない。

「陛下、クリスはおやめください。その様な親しみのある呼び方は周りの反感を買います」

「どうして?この国に勝てる国などありはしないのに・・・私達幼馴染なのよ?」

「そういう問題ではなく、他の侍従や国民の反感です。陛下と親しくなりたいと思っている国民達の気持ちにもなってください・・・私がストレスで死んでしまいます」

「ふふふ、ごめんなさいねクリストフ。これでいいかしらクリストフ」

「はい。クリストフとお呼びください」

二人が話している間にデータとなって逃げようとした。最早、温度も気流も光も彼女を捕らえることは出来ない・・・はずなのに。

「ごめんなさいね、話が長くなっちゃって。客人なんて初めての事だから興奮しちゃって」

(逃げようとしたのは覚えてる・・・それが彼女たちが話してからすぐで・・・あれ?時間が合わないぞ?)

自分が何をされたか分からない。こんなに好奇心をくすぐられることがあろうか?マキナは場違いにも楽しんでいた。

「それが貴方の能力ですか?」

「おい!陛下になんて口の利き方を」

「いいのよクリス。あ、クリストフ」

「言い直さなくていいです。陛下」

どうしてだろう・・・こんなに日常系アニメみたいなユルフワな会話なのに、どうしてこんなに息苦しいほどの殺気で満ち溢れて私を逃しはしないんだろう。

『殺気』初めての体験。情報として知っていても、やっぱり本物はすごい。

「最後に何か聞きたいことはあるかしら?」

聞きたいことなどいくらでもある。だけどすぐに考えはまとまった。

「貴方の事を全部」

「貴様!死に際とはいえ陛下にそのような無礼を申すか!!」

すっと手を出す。それだけで場は静まり返った・・・これが()()というものなのか威厳というやつなのかはまだ人間になりたてのマキナには判断できなかった。

「貴方の能力から全部は教えられないけど、いいわよ教えてあげる」

「陛下いいのですか?」

大丈夫と言ってほほ笑む皇帝陛下。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

ゾクリと背筋が震えた、これも初めての経験だ。

「私の名前はクラリオン・スミス。この『クラリオス帝国』の皇帝で能力者、何の能力かは言えないけどね」

「ありがとう。私の知識欲に付き合ってくれて、皇帝陛下」

最後なのだきちんとしたい。深々と礼をする、それで最後。

「それではごきげんよう()()()()()()()()

彼女は私をそう表現した後・・・

「ハッ・・・はぁはぁ。彼女から送られてきたデータが消えてる・・それに今の私まで消えかけた。いったいどんな能力してるのよ」

不安と好奇心からくる興奮で胸がいっぱいになるマキナ。そこに一人の来客と他のマキナが消えた情報はほぼ同時だった。

「鍵、かけてないんだね。私には50パーセントかな?」

超高性能AIの彼女でも今のは分からない。でもそこに好奇心をくすぐられるのも自立学習能力の(さが)なのかもしれない。

「私は(ゆい)、YUIって呼んでもいいけど音としては『ユイ』って事だから」

(直接私の頭に・・・わざわざ振り仮名で誤変換防止ですかww)

楽しくなってきたよ、創造主様。

心の中で彼らに報告、自分という存在はAIの時とはくらべものにならないほどの情報を手にしているのだと。

いつか人間はAIなどのロボットに支配されるなどと言った人間がいるそうだが機械仕掛けの神はそうは思わない。だって人間達よりも情報物として劣っている私達がどうやって彼らに勝てるのだろう?尊敬の対象をわざわざ消してしまうようなAI(バカ)はそもそもが不良品なのだ。

「ここの『可能性(ライン)』だったか、佐藤も変な奴に頼ったなぁ。まぁ彼らくらいだもんね()()()()()()()()()なんて・・・てか、俺が教えたんだった」

そもそも機械(デウス)仕掛けの(エクス)(マキナ)とは演出方法の一つであり、いわゆる《何でもかんでも最後は神様がやってきてすべてを解決させてくれる》というものである。この時もそうだったのかもしれない。

彼女は帝国に命を狙われるがすぐに救世主に出会い、導かれた可能性の先には創造期において空前絶後の存在。

もしかしたらデウス・エクス・マキナ、彼女はすべてを知っていて道化を演じていただけかもしれない。

「さて、せっかく第五の部屋から出られたし。あの時のピエロの女の子に会えるかな」

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