幸福の方程式。
「ねえ、藤原のおじさん、とこ、行かない。今日はラーメン定食、おごってあげるよ。一郎君」
「あ、ありがとうございます、葉月さん」
キスを交わす男と女。このまま、時が止まればいいなぁ。でも、永遠なんて、きっとないから。
エレベーターに乗り、フロントに鍵を返すと、一変。ミケが赤い座布団に座ってた。ミケは一郎君の胸に一気に飛んできた。
「おお、ミケ。今から、葉月さんとデートだぞ。ミケ、お仕事、頑張って」
そうすると、社長さんがほくそ笑みながら、封筒を持って、私と一郎君に吉報を。
「大山様、田中様。私、せっかちなものですから、『ミケ』のチラシを作りました。勿論、今、当ホテルのホームページに『可愛い三毛猫、ミケに出逢える、癒しの湖山シティホテル』とこの画像を載せさせていただきました。私、性格上、せっかちなものでして。よろしかったでしょうか」
社長さんの封筒の中には、座布団に座るミケの可愛い顔とにくきゅうの写真。その横には、癒し猫。と風流な筆書き。ナイス。ナイス。
「社長さん、完璧ですよ。ミケも絶対、喜んでますよ。なあ、ミケ」
「ミャーフグフグ」
一郎君とミケ。社長さんの笑顔に救われた。
「今から、お出かけですか」
「はい。湖山マップに載ってた、藤原ラーメンへ行こうかなと」
「ああ、藤原さんですか。藤原さんは私の高校時代の先輩でして、すごく、よくしていただいて」
「ああ、そうなんですね。もしかして、太いズボンが藤原さんにはお似合いではなかったですか」
一郎君は社長さんに無邪気に話す。藤原のおじさん。絶対、元ヤンだよ。私も笑うことにした。
「はい。その通りでございます。所謂ボンタンに長い学ランがお似合いの男の中の男でございました。是非、松本が藤原さんによろしくと言っていたとお伝えください」
「はい。では、行ってくるね。社長さん。ミケのこと、よろしくね」
「かしこまりました。田中様。大山様。いってらっしゃいませ」
と社長さん達は私達に一礼し、ミケを座布団に乗っけた。ミケが可愛くて仕方がないのは幸福だ。
助手席の一郎君。笑顔だ。二人でバンプオブチキンの天体観測を聴きながら。藤原のおじさん、確かに長い学ランが似合いそうだ。幸せ、ここにあり。一郎君と話すのは、バンプの隠しトラックについて。おおいに笑った。
藤原ラーメンの駐車場。切り返し切り返し。よいしょと。
「葉月さんって本当に可愛いですね。愛していますよ」
「あ、ありがとう」
のれんをくぐり、藤原のおじさんが、私にいきなり、言った。
「おう、姉ちゃん。あんた、いつ見ても、可愛いな。今日、わしは機嫌がええで。宝くじ、40万、当たったんよ。おっ、兄ちゃん。今日、わしは機嫌がええで。宝くじでな、40万、当たったんよ。まあ座り。コーラ、おごっとくわ」
宝くじか。おじさん、凄い。悪いことのあとには良いことが待っている。これがミケ効果かもしれないな。招き猫ってか。
「兄ちゃん、確か…」
「僕、一郎です。大山一郎。写真、まだ、プリントアウトしてなくてすみません。葉月さん、チャーシューメン大盛、おごってくれますか」
「い、いいよ」
「一郎。今日はわしが出したるわ。世の中、義理人情よ。なあ、葉月ちゃん」
「そ、そうだね。おじさん、テンション高すぎないの」
「せ、せやった。冷静にラーメン作るさかいに、コーラ飲んでや」
「はい。葉月さん。ミケとおじさんに乾杯」
「カンパーイ」