この街の片隅に生きるということ。
三毛猫君。君は、私、田中葉月のモロタイプだよ。この子と、一緒にいたいなぁ。でも、ホテルじゃ猫は飼えないし。。。『ミャー』「乗ってくか」『ミャー』。助手席に、三毛猫を乗せて、一郎君を迎えに行った。
「葉月さん。ありがとうございます。ちょっと、色々、あって、教官を殴っちゃったんですよ」
「まあ、いいじゃない。一郎君。この子、新しいお友達」
「おっ、いい感じですね。可愛いです」
「でもさ、ホテルじゃこの子と一緒に住めないよね。どうしよう」
一郎君が苦笑い。三毛猫の頭を撫でる、一郎君も猫顔だ。一郎君、あなたは、神の子だ。
「僕に任せてください」
ホテルへの道のり。一郎君は、今日、教習所で、酷い目に遭った。ホモの教官に、膝を触られ、ペニスも触られた。その教官は、教習所の校長も務めているとのこと。こうも、言われたらしいんだ。
『免許を取りたけりゃ、俺に抱かれろ。そうじゃないと、お前をこの教習所から追放する』
爪を噛む一郎君。今、私が一郎君に出来ること。一郎君の全てを受け入れること。こんな私を愛していてくれる、唯一無二の一郎君を。
フロントに到着。もう、私達、顔馴染み。フロントの堤さんというきれいなお姉さんに一郎君は、
「すみません、堤さん。社長様は、いっらしゃいますか」
「社長でございますか。かしこまりました。今、呼び出しますので、しばらくお待ちくださいませ」
「一郎君、どうしたの。いきなり」
「少し、僕の作戦を実行します」
「作戦って」
「葉月さん、友達は多い方が楽しいですよね」
「うん」
そうこうしていると、黒いスーツの刑事ドラマの主人公のようなかっこいいおじさんが、目の前に現れた。
「私、湖山シティホテル、代表取締役、松本と申します。大山様、田中様、このホテルをご愛顧いただきありがとうございます。私に何かしらご用件でございましょうか」
「社長、僕のお友達のことでして」
「お友達ですか」
「はい。この子です」
そうすると、三毛猫君が一郎君の大きなカバンから現れた。何やら一郎君は、『猫ブーム』について、社長さんとお話。ここに、三毛猫君の居場所はあるのかと。社長さんは笑って、こう言った。
「大山様、今、確かに猫ブームでございますね。この猫のお名前は」
私の目を見て、笑顔の一郎君。
「分かりやすく、『ミケ』と申します」
「そうですか。それでは、ミケにお仕事をご依頼してよろしいでしょうか」
一瞬、迷い、答える一郎君。
「お仕事。とは」
「癒しのミケがフロントで待っている、湖山シティホテル。エレベーターガールではなく、可愛いフロントボーイ猫。これでよろしければ、条件を飲みますよ。大山様、田中様」
「ミャー」
「ありがとうございます。それでは、フロントボーイ猫、ミケをよろしくお願いします」
一郎君、あなたは生きとし生けるもの、全ての救世主だよ。愛してる。ミケ、お仕事、貰えてよかったね。
「ミャー」