プラスティックゲーム
「えっ。私、何してた。ここ、どこ」
辺りを見渡しと、えっ点滴。ここ、病院。あれ、藤原のおじちゃんの店にいたんじゃなかったの。
「葉月さん。記憶、ないんですか」
「えっ。うん。一郎君。私、なんで」
「葉月さん、いきなり、倒れて、頭を打って。。」
頭。私の頭に包帯が巻かれてある、ことに気付く。
「葉月さん、てんかんだそうです」
「てんかん。えっ、私が」
「はい。きっと、疲れたんでしょう。僕、ここにいますから、休みましょうよ」
「そ、そうだね」
冷静に考えてみた。死。私、死にたい。一郎君のいない、この世なんていらない。
「一郎君」
「はい」
ベッドで二人して横になった。また、体を合わせる、男と女。時計は夜の3時19分。眠ろう。
「一郎君、寝ようか」
「そうですね」
夢を見た。私は、鏡の中の私に、こう言われた。
「あんた、みたいな自分勝手な人間に生きる資格はないんだよ」
そして、目が覚めた。ぐっすりと眠っている一郎君。私には生きる資格がないのだろうか。涙がとめどなく流れた。私は、包帯を外し、血まみれになりながら、眠っている一郎君のほっぺたを触った。あふれだし血。そして、私は、一人、タクシーに乗り込み、藤原のおじちゃんの店へと再び、向かった。
「葉月ちゃん、何してんねん。寝とかなあかんやろ」
「おじちゃん、私を殺して。もう、一郎君のいない、世の中なんていらない」
「何、言うてんねん」
「だったら、私、自殺する」
「待ってぁな、葉月ちゃん。そないなことして、一郎が喜ぶか」
「おじちゃんには、私の気持ちなんてわかりっこないよ」
追いかける藤原のおじちゃんをしり目に、私は、国道沿いの歩道橋に登った。
そして。。。
パパ、ママ、ごめんね。一郎君、私が先に逝くよ。ミケ、松本のおじちゃん、陽子、またね。私は、飛び降りた。そして、息が止まった。私は死んだ。
ここは、どこ。白い霧の中。黒いスーツを着ている、おじさんがいた。
「田中葉月さん。ここは、永久の世界です。あなたが愛する人も、もうすぐ、ここにやってきます。鏡を見てください」
「あの、あなたは誰なんですか」
「私は、ここ、人生の終点、『青空』の管理人をやっている、名もなき男です。あなたの傷はすべて、消えました。鏡を見てください」
ほんとだ。血も傷もない私がいる。鏡の中に。
「私、本当に死んだの」
「そうです。大山一郎さんをお待ちください」
「わかりました」
私は、『青空』の中を散策する。すると、白い三角屋根の建物があり、白衣を着た、年老いた女性に言われた。
「あなた、自殺したんだってね」
私は恐る恐る答える。
「はい」
「わがままばかり言って、生きてきた、人生を反省してるの」
「はい、しています。私は、一郎君に永久に尽くします。二人で家庭を持って、子供を作って。ミケを待って」
女性は笑顔に変わった。二人でテーブルを囲み、三角屋根の下で、コーヒーを飲んだ。
そして。振り返ると、愛する一郎君が。
「葉月さん」




