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生命賛歌

『葉月。落ち着いて。とにかく、一郎君のそばにいてあげて。お願い』

『わかった。ありがとう。陽子』


自販機に500円玉投入。缶コーヒーを一口飲んで、ゴミ箱へと捨てた。手術中のランプが消え、一郎君の顔が見れた。

「お姉ちゃん、彼の奥さんなの。僕が担当医の尾崎です。正直に言うと、かなり、がんが酷いことになってる」

「わかりました」

「では、病室で、一郎君を頼むよ」

約束はいらない。生きてく約束なんて。でも、ここで一郎君との愛を確かめたいんだ。最期の愛を。点滴を受ける一郎君。意識は戻らない。顔も青白く、何。

「どうしたの、一郎君」

「ぼ、僕、葉月さんに嘘を吐きました。たった一人の、あ、愛する人なのに」

「そんなのはいいから、無理しないで。私は大丈夫よ」

「は、葉月さん。愛しています。だから、」

「私がそばにいるよ。大丈夫」

横たわる一郎君の右手にキスをした。永遠のパズル。生命。二人の時間。

「は、葉月さん。藤原のおじさんにごめんなさいって伝えてください。僕は、もうすぐ、死にます」

「だから、そんなのはいいから」

泣きたくなる。だけど、一郎君の前では泣かないよ。

「少し、休もうか。一郎君」

「は、はい。ごめんなさい。葉月さん」


焦っちゃだめだよ。私は、さっきのコンビニまで、タクシーに揺られ、車を、とりに行った。一郎君が、もし、死んだら。。。

「姉ちゃん。兄ちゃんは、どないやったん」

と、コンビニのさっきのおばちゃんに言われる。答える嘘吐き葉月。

「ああ、単なる疲れですよ」

「そうか。それなら、良かった。デート、楽しみや」

「はい。こちらこそ、ごめんね、おばちゃん」

「ええって。姉ちゃん、それにしても美人やなぁ。二人で赤ちゃん、作りや」

「はい。おばちゃん」

車に乗り込み、エンジンをかける。煙草の煙が舞い上がる車内。もし、一郎君にもしものことがあったら、、私、生きていけないよ。だけど、一郎君が消えてしまったわけじゃない。

『奇跡』

奇跡が起きると自分自身に言い聞かせる、私。一郎君の香り。信号待ち。私、どうすれば。

どうすれば。



あれから、三日が経った。病院には、藤原のおじちゃん、松本社長も、ミケも呼んだ。一郎君は精神的には元気だけれど、体がどんどん、やせ細っていくのが目に見える。ミケはベッドの上で一郎君とじゃれあう。

「葉月ちゃん。俺に、何か出来ることないか。なんでも言うてや。俺、葉月ちゃんと一郎には、世話になったから」

「ありがとう。藤原のおじちゃん。でも、一郎君、。。」

涙が溢れた。全ての幸福が一瞬にして消えてしまう。私は、泣いた。一郎君と一緒にいたい。永遠に。

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