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Fランクの少年、伝説のドラゴンを手に入れる  作者: キミマロ
第一章 ドラゴンとの出会い
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第二話 謎の魔物!

「結構採れたな! 誰も来てないのが良かったか?」


 俺以外の開拓者が、軒並み休業しているからだろうか?

 森の採取スポットには、薬草が大量に残されていた。

 凄い事故が起きたらしい割には、特に火災の跡などもなかったし。

 おかげさまで、たった半日で袋が重くて抱えられないほどになってしまっている。

 文無しになってヤバいと思っていたけど、この分ならしばらくは持つかもしれない。


「そろそろ限界だし、帰るか」


 パンパンに張った袋を背負うと、町に向かって歩き出す。

 今まで特に何もなかったとはいえ、立ち入り禁止令が出ている森だ。

 弾薬が散らかっているらしいから、何かの拍子にドカンと行くかもしれない。

 あと、事故調査のために来ている憲兵とかと出会ってもヤバい。

 そう思うと今さらだがちょっぴりだけど怖くなって、自然と足が早まる。


「お? あれは……!」


 ふと視線を上げると、木に生えたキノコが目についた。

 傘が大きく開いたそれは、夕陽を反射して淡い金色に輝いている。

 これは……フェアリーマッシュだッ!!

 妖精のように光ることからその名が付けられた、超貴重種である。

 回復薬の材料として知られていて、これを食せばどれほどの瀕死状態でも助かると言われるほど。

 当然、その価値は半端なものではない。

 売れば金貨十枚は確実だ。


「よっしゃああァッ!! 俺にもツキが回ってきたッ!!」


 喜び勇んで、木によじ登る。

 金貨十枚もあれば、それなりの装備が一式揃う。

 そうなれば、俺でも入れてくれるパーティーはきっと見つかる。

 昨日は人生最悪の日だったけど、今日はいい日になるかもしれない!


「金貨十枚だァッ!!」


 フェアリーマッシュをつかみ取ると、快哉の叫びをあげる。

 あとはこれを無事にもって帰って、薬屋で換金すればいい。

 すっかり大金を手に入れた気分の俺は、先ほどまでとは打って変わって、周囲を見渡し警戒した。

 なんてったって、金貨十枚に相当するものを持っているのだ。

 気も引き締まるというもの。

 そうしていると、遠くの物陰からこちらを覗き込んでいる視線に気づいた。


「誰だ!?」

「グルァ……」


 何やら弱々しい鳴き声と共に、木々が揺れた。

 枝を掻き分けながら、鈍く光る影がこちらへと迫ってくる。

 大きい!

 ズンズンと大地を揺らして進んでくる姿は、半端な大きさではなかった。

 二階建ての家ぐらいはある。


「なんだ、こいつ……!」


 そいつは四足獣で、胴体が長く尻尾も伸びていた。

 ちょうど、トカゲを太くしたようなフォルムだろうか。

 ただトカゲとは違い、皮膜で出来た大きな翼が背中に生えている。

 裂けた口には剣のような牙が生え揃い、見るからに強そうだ。

 しかし、腹に怪我をしているようで本来持っているであろう覇気は感じられない。

 こうしている間にも血があふれ出していて、かなり痛々しい。


 明らかに、こいつはこの森には生息していない魔物だ。

 それどころか、図鑑ですら見たことがない。

 一応は開拓者の端くれである俺が知らないのだ、かなり珍しい種類の魔物なんだろう。

 一体どこから来たんだか……。

 まさか、アンダーフィールドの凶獣がミドルフィールドのこの森まで飛んできたとかだろうか?

 必死に頭をひねっていると、魔物の視線が一心不乱に俺の手元へと注がれていることに気付く。


「ん? お前、これが欲しいのか?」

「グルゥ」

「これが何だか分かってるのか?」 

「グルルッ!」


 フェアリーマッシュを指さすと、心底嬉しそうにうなずく魔物。

 こいつ、かなり知能が高いみたいだな。

 俺の言ってることが、どうやら完璧に分かって居るらしい。

 ますます、どんな魔物なのか気になってきたな。

 でも、さすがにフェアリーマッシュまでは渡せない。


「ダメダメ! このキノコは、金貨十枚もするんだ! 俺も金がないし、そこの薬草で我慢してくれよ。な?」

「グルゥ……」

「そんな悲しげな顔するなよ。薬草でも、それだけあったら傷は治るんじゃないか?」

「……グル! グルル!」


 首を横に振る魔物。

 薬草だけでは足りんと言いたいらしい。

 いくら大量にあるとはいえ、薬草ってかすり傷を治すぐらいのものだからなあ……。

 見たところ、こいつ傷は内臓まで達してそうだし、そんなのでは足りんというのも分かる。

 だけど、金貨十枚……!


「ああ、もうわかった! やるよ、やるから後で礼ぐらいしろよッ!!」

「グルゥッ!!!!」


 魔物の視線に耐えかねた俺は、フェアリーマッシュを口元に投げてやった。

 魔物はすぐさまそれに噛みつき、飲み込む。

 喉がなったと思った途端、腹の傷口から煙が上がり始めた。

 見る見るうちに怪我が修復され、痕すら残らずに治っていく。

 噂どおり、いや、それ以上の再生能力だ。


「グオオオオオッ!!」

「うおッ!?」


 傷が治った魔物は、半立ちになって雄叫びを上げた。

 大気がどよめき、木々が揺れる。

 怪我をしていた時と姿かたちは変わらないのに、全く別物と言っていい迫力だ。

 輝きを強めた鱗、光を取り戻した瞳、何より力強く大地を踏みしめる手足。

 魔物の全身から神々しいほどの存在感が発せられている。

 目に見えない何かが魔物から放たれ、俺を押しつぶしているかのようだ。


「おいおいおい……! 俺は、何かとんでもないものに手を貸しちまったんじゃないのか……!!」

「人間よ」

「は、はい!?」

「恩は必ず返します、今宵再びあなたの元へ参りますぞ」


 翼を羽ばたかせ、飛び立つ魔物。

 その巨体がすっかり小さくなったところで、俺は茫然とつぶやく。


「今あいつ……しゃべったよな?」


 魔物が……しゃべる?

 そんなバカな。

 俺は夢でも見たのかと、まぶたを擦ったのだった――。


ようやくドラゴンさんと遭遇です!

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