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Fランクの少年、伝説のドラゴンを手に入れる  作者: キミマロ
第一章 ドラゴンとの出会い
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プロローグ 裏切られた!

「ひい、ふう、みい……しけてるわねーッ! 銀貨三枚ぽっち!」


 寝苦しさで目を覚ますと、女が俺の財布を開いて中身を数えていた。

 肩にかかる豊かな金髪に、透き通るような白い肌。

 ちょっぴりきつい感じだけど、整った目鼻立ちに大きな泣きぼくろ。

 誰かと思ったら、仲間のアイスさんである。

 

「アイスさん、何してるの?」

「ん? やだ、もう起きちゃった。薬が弱かったかしらね」

「え、薬? ああッ!!」


 起き上がろうとしたら、身体がしびれてしまって動かない。

 これは……しびれ薬か何かか?

 まさか、アイスさんは俺の財産を狙って……!

 だんだんと事態が読めてくるにつれて、はらわたが煮えくり返ってくる。


「何してるんだよ! 盗みなんてしたら、憲兵に捕まるぞ!」

「どうぞご自由に。あんたの言うことより私の言うことの方がよっぽど信用されるだろうけどね」

「ちィッ……!!」


 悔しいことに、否定しきれない。

 このアイスさん――いや、アイスという人物は、とても品行方正なように見える。

 今に至るまで、俺も彼女が裏切るなんてこれっぽっちも思っていなかったのだ。

 ヘっぽこで通っている俺よりも、よほど信用があることだろう。

 まして、俺は男でアイスは女。

 犯されそうになったとか言われたら、勝ち目はない。


「……やめろよッ!! 俺たち、仲間だったじゃないか!」

「仲間? あんたさ、自分と私とで釣り合うとホントに思ってたわけ? パーティーに見捨てられて行き場がなくなっていたあんたと私が?」

「そ、そりゃ……思ってたさ!」


 ホントのところ、そうは思ってはいなかった。

 アイスさんは開拓者の中でも有望視されている存在だ。

 それに対して俺は、いつ開拓者をやめてもおかしくないような落ちこぼれ。

 戦闘力や将来性には、天地ほどの差がある。

 おまけに、彼女は開拓者の間でも評判の美人さんだ。


「お笑い草ね! 身のほど知らずもいいとこだわ! そうやってバカだから、騙されんのよ」

「く、クソ……!」

「どうせ、私があんたに惚れたとかそんなこと思ってたんでしょ? バッカじゃないの? 私みたいに綺麗で実力もある女が、あんたみたいなカスになびくわけないのにさ。せいぜい、豚がお似合いよ」


 綺麗な顔を醜くゆがませながら、器用に豚の鳴きまねをしてからかうアイス。

 たまらず殴りかかってやろうと思ったが、身体が動かない。

 ……まあ、仮に体が動いたところでアイスなら片手で俺を倒せるだろう。

 その事実が、何より俺を打ちのめした。

 男だと言うのに悔しくってしょうがない。


「しかし、あんたって金すら持ってないのね。有名な開拓者の孫だって言うから、お金は結構持ってそうだと思ったのに。ほんと、情けない男」

「しょうがないだろ、爺さんは何も残さなかったんだから……ッ!!」

「まあいいわ。銀貨三枚と、このよくわかんない地図で勘弁してあげる。服は残しといてあげるわ、良かったね」

「待て、地図はやめてくれ!!」

「ん、そこに食いつくの?」

「あッ……!」

 

 しまった……!

 地図を守ろうとしてとっさに言ってしまったけれど、あれはまずかった!

 そんなこと言ったら、地図に価値があると言っているようなものじゃないか!


「ふーん、この地図に何かあるんだ!」

「こら、それだけはやめてくれッ!!」

「やめてって言われて素直にやめると思う? 馬鹿ねえ!」

「いい加減にしろよ! このッ!!」

「はいはい、お静かに」


 アイスは俺に身を寄せると、口と鼻に布を押し当てて来た。

 甘ったるい匂いが鼻をつく。

 眠り薬だ……ッ!!

 すぐに息を堪えようとするけれど、とっさのことであまり我慢が出来ない。

 たちまち意識がもうろうとして、俺は再び眠りにつくのだったーー。


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