第一話 容疑者の弁明文
初めて異世界転生を書きました!
色々チャレンジしつつ、面白い作品になればと思っています!
応援よろしくお願いします!
はじめまして、私は現在無職の30歳童貞です。
ついこの間まで高校教師をしていました。
現在は警察の取り調べを受けています。
容疑は、未成年の少女への淫行及びに誘拐です。
はい。社会的に抹消されておかしくありませんね。
でも聞いて下さい。
私は確かに未成年の高校一年生の女の子を好きになりました。
だけど決してロリコンというわけではないんです。生まれてこのかた彼女ができたことなんてないけれど、二次成長も迎えていない女の子に欲情したことなんてありません。
そんな私が高校生の女の子を好きになったのは、もう一人の女性に向ける純愛にほかならないのです。やましいきもちなんて微塵もありませんよ。
だいたい、日本の法律では女の子は16歳で結婚できるんです。私は彼女と結婚するつもりでした。それなのに何故責められないといけないのでしょうか?
彼女に授業以外でも勉強を教えて欲しいと言われたことが、私と彼女の距離を縮めました。彼女は賢くて運動神経も抜群の優等生でしたが、世界史だけは苦手だったんです。私は小学校の頃から勉強も運動もできなかったんですが、歴史だけは大好きでドラマを見たり、小説やラノベを読んだり、戦国シュミレーションゲームをやりこんできて、何とか世界史の非常勤講師になることができましたからね。
私が世界史を面白おかしく教えるので彼女はいつも笑顔が絶えませんでした。テストで良い点を取ったことで私に尊敬と信頼の眼差しを向けていましたね。メールや電話をやり取りすることも頻繁になり、授業がなくても一緒にお茶して楽しい時間を過ごしました。
こりゃあもう、彼女と付き合っていると思いましたね。
はっきり言葉に出して「付き合おう」とは、どちらからも言うことはありませんでしたが、私達は暗黙のうちに恋人同士の関係なんだと。
彼女とは運命の赤い糸で繋がっていると確信する出来事はいくつもありました。
彼女に会いたいと思った時に廊下でバタリと出くわしたり、毎晩のように夢の中に彼女が出てきたのは天からの啓示でしょう。
自分が彼女より一回り以上、年上なのが気にならなかったと言えば嘘になります。さらに、特別優秀であったり、人望があるわけでもなく、イケメンでもないのに、彼女はどうして私を好きになってくれたのだろうか? と疑問も抱きました。
けれど、惚れられる理由が一個もないのに惚れられることこそが神の奇跡なんだと。伴侶と定められた彼女との出会いだとより強く彼女への愛を燃やしました。
だから彼女が他の男の子と話しているのを見るだけで嫉妬ですよ。同性の友達との約束を優先して私との二人の時間を蔑ろにすれば許せませんでした。無言電話と大量メールの罰を与えました。怒っているんだというアピールですね。
そんな私の態度は彼女を傷つけてしまったようで、しばらくすると、彼女は私を避けるようになりました。
それだけ彼女は私に怒られたことが辛かったのでしょう。
私の方が年上なんだから大人の男として度量があるところを見せてあげないといけない。反省した私は彼女に歩み寄りました。これまで以上に電話やメールをしたり、学校の外で彼女の帰りを待ち伏せしたり、彼女の机の中に何百枚と手紙を入れたり……もう怒ってないよと精一杯伝えたんですが、彼女からの反応はありませんでした。完全にスルー。
どういうことでしょう?
私はそこまで彼女を傷つけてしまったのか?
ならば安心させてあげないと。私はこんなにも愛しているんだから、彼女も安心して私のことを愛してくれていいんだと伝えないといけない。
私は彼女の家まで行きました。
最初は彼女の住む町の最寄り駅で張り込んでいただけでしたが、私を見て顔を引きつらせて全力で走り去る彼女の姿があまりにも痛々しくて胸を打ち、慰めてあげないといけない気持ちから気がつけば家まで追いかけていたのです。
すると、家から彼女の父親が出てきました。
私は緊張しました。まだ彼女のご両親に、結婚を前提で付き合っていると伝えていなかったからです。出遅れた分、ここでしっかり挨拶をしなくてはと意気込んでいると、お義父さんは、「娘は君に会いたくない。帰ってくれないか?」と言いました。
その時、私は全てを理解し、同時にドラマや映画を瞬時に思い浮かべました。
彼女は私が怒っていることを両親に話したのだ。
同世代の友達ではなく、同じ大人に私と仲直りをする方法を教えてもらおうと考えたに違いない。だけど、そこはやはり両親なのだから一回り近い男性との交際は大反対だ。
彼女に私と会うことを禁止しただろう。
ああ、可哀想なのは彼女だ。私と仲直りするどころか、話すことすら許されなくなるなんて。彼女は素直な良い子だから、泣く泣く両親に従ったわけだ。
「私はいつまでもここで待っています!」
そう、強く宣言しました。彼女との関係を許してもらえるまで、体を張ってアピールするしかない。物語の主人公になったつもりでした。誰もが自分という物語の主人公なのですから胸を張りました。こんな私を愛してくれた彼女に報いるのだと一歩も退きませんでした。
気がついたら殴られて尻もちをついていました。
私を殴ったお義父さんは、「娘は君を怖がっている。娘のためにも警察沙汰は避けたい」とものすごい剣幕で言いました。
確かに、ここで警察を呼ばれて騒ぎになったら彼女がさらに苦しむでしょう。
私は諦めてその場は引きました。
そうして深夜、彼女の部屋に忍び込みました。
彼女が私を待っていると信じて疑わなかったからです。なぜなら、二階の彼女の部屋の窓は開いていたからです。部屋に忍び込んで、待ちくたびれてベッドでスヤスヤと寝ている彼女を優しく起こしました。そして、叫び声とともにその日は本当に警察を呼ばれました。
警察の詰問を受けながら私は戸惑いを隠せませんでした。
こんなはずじゃなかった。久しぶりに会えたことを喜んでくれる彼女しか想像していなかったんです。ちょっと涙ぐみながら、照れたように微笑む彼女の顔を……実際は同じ涙でも引きつった顔だったのです。
私はようやく自分が彼女に嫌われているのだと呑み込めました。
留置所で一晩過ごした私は「二度と彼女に近づかない」ことを約束させられました。今回の騒動のせいで職場もクビになりました。大変不本意な結果です。
彼女の愛を失い、職を失った私は力なく崩れ落ちました。
全てのやる気を失って家から出ない日々を過ごすようになったのです。友人は一人も居なかったので、誰かに煩わされることはありませんでした。ただ、私には両親と妹がいて、彼らが残した言葉を反芻します。
「ロリコンなんて犯罪だ!」
「ただの勘違いだったのよ!」
「自分の立場を考えてみろよ! 振り向いてくれると思ってんのか?」
ロリコンだと言われても、私は純愛だと思っていたので動じません。
勘違いだとも思っていません。私と彼女は気持ちが通じていたハズなんです。
自分の立場……これだけは言い返せませんでした。
ええ。当時の私はしがない非常勤講師。対して、彼女は裕福な家庭の娘でした。
私自身は自分の職業や収入で彼女の気持ちは変わらないと思っては居ましたが、両親は大反対するだろうと納得はしました。そして、まだ未成年の彼女は両親の言うことを聞いたのでしょう。
彼女にはっきりと拒絶されたにもかかわらず、私は彼女が自分を本気で好きだとまだ思っていました。それと同時に、自分の年齢や職業で認めてくれなかった彼女の両親、両親の言うことを聞いた彼女に怒りを覚えるようになりました。
だけど、本気で愛した女性なのだから許すしかありません。愛が強い分、拒絶されると憎しみに変わると聞いたことがありました。
私は自分の怒りを憎しみにすることがないように、ひたすら感情をリセットするために寝ました。家から一歩でも出たら間違いを犯しかねないので引きこもりました。貯金がまだありましたし、最近はインターネットで何でも買えるから生活に困りません。
彼女を許すための祈りにも似た日々を送っていたそんなある日、、私のアパートに警察がやってきたんです。
彼女が行方不明だという話です。