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8.ざ・デート

廃墟寸前の建物、カレンさん曰くデパート。そんな建物の入り口に私とカレンさんは立っている。

 ボロボロで少し動くだけで黒板を引っ掻いたような音のする嫌な感じのドアを開け、それと同時に右左と首を動かし辺りを見渡した。

 雰囲気は思っていたよりも明るく、昔教科書で見た闇市みたいな感じだった。怪しそうな店だらけだが、買い物をしている人たちは意外と普通に見える人ばかりだ。

「とりあえず、私の行きつけの店行こうか」

「行きつけですか!」

 繋いだ手はそのままに、今度はカレンさんが私を引っ張る。

 まるでエスコート、まるで王子様。手を握られているだけなのに、心臓がバクバクしているのを感じる。

 それと同時に、私はカレンさんがする事なら割と何でも嬉しいんだなと思い、チョロすぎる自分にほんの少しだけ嫌悪感を抱いた。

 けれどそんな面倒くさい事を一々考えていてはせっかくのデートが楽しめない。もう考えるのはやめよう。

「着いたよ、ここ」

「おー……?」

 カレンさんが指で指したのはとても小さなお店。お店というよりも屋台という感じだ。扉には立ち入り禁止と書かれていて中には入れなさそうだし、外に置かれた棚に無数の何かが入った袋が陳列されている。

「こんにちはー」

(普通にドア開けた……)

 立ち入り禁止と書かれているのが見えないのか、常連が故の特別扱いなのか、カレンさんは一切躊躇せず扉を開け、中へ入って行った。

 私も彼女の後に続いてお店の中に入る。そこにはこれまたたくさんの袋が置かれており、奥の方にムキムキのおじさんが一人立っていた。

「こんにちはー、って言ってるよね」

 カレンさんは少し不満そうに言いながら、ムキムキおじさんの元へと向かう。

 彼女が彼の目の前に着いた瞬間、ムキおじは拳を強く握りしめ、カレンさん目掛け振るった。

「ふぇ!?」

 驚く私、避けるカレンさん、明らかにキレているムキおじ。とてつもなく嫌な雰囲気が漂い始めた。

「勝手に入ってくるなって言ってるよなカレン……!?」

「あんたが外にいないからでしょ筋肉ヒゲダルマ……」

「あぁん……?」

「はぁん……?」

(二人とも口悪……)

 キレながら、青筋立てながら、メンチを切りながら会話を続けるムキおじとカレンさん。

 正直もうここに居たくないし、なんか好きな人の嫌な部分見たみたいで色々嫌だ。

「いいからいつものカレンちゃんセットちょうだい。もう食べるものがないの」

「あっちに用意してあるから勝手に取っていけクソビッチ」

「はいはーい」

 ムキおじに言われた通り、カレンちゃんセットを手に取るカレンさん。何故か一度ため息をついた後、彼女は私の方を見て言った。

「じゃあ帰ろうか、アムルちゃん」

「……はい」

「何でそんな不満そうなの……?」



「肉、変な魚、アルコール度数高いだけの不味い酒、苦いお茶、よくわからない色をした米、名前忘れた野菜。うん、いつも通りの入ってる!」

「そうですか……」

 変なムキおじの店に行った後、私とカレンさんは寄り道を一切せずに、そのまま真っ直ぐお家へと帰ってきた。

 もう少し、何かあるかな、と思ったのだけれど。

 例えばまだ来たばかりで右も左も分からない私のために街案内とか、なんかお菓子とかあるお店とか、もうちょい年頃の女の子らしい会話とか。

 そんなのは一切なかった。何も言わなかった私もアレだけど、買い物に行くと行って本当に買い物だけで終わらせたカレンさんもちょっと酷いと思うのは私だけだろうか?

「じゃあ私眠いからもう寝るね。おやすみ」

「へ?」

 カレンちゃんセットの確認を終えると、カレンさんはこちらを見ずに寝る宣言。そのまま寝室へと一人で帰ってしまった。

 私よりも遅く起きて、私よりも早く寝た。

 昨日は遅くまで起きていたのに、今日はかなり早く寝た。

「……何だかなぁ」

 カレンさんが寝てしまって話し相手がいなくなり、この辺のことは何も知らないから遊びにも行けずやる事が無くなってしまった。

「……私も寝ようかな」

 魔法でパジャマを出し、私はそれに着替えながら寝室へと向かった。

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